取組概要
・閉校となった小学校の校舎を、地元の要望を踏まえ、公文書書庫及び教育相談室として再利用する。
書庫の移転にあたり、文書の保管場所の最適化を図る。
公文書書庫:過年度に発生した公文書を保管する書庫
教育相談室:教育問題に関わる電話相談や、不登校の小中学生などの適応指導を行う機関
取組期間
平成30年11月から、現在も継続中。
【取組の流れ】
平成26年3月 宍塚小学校 閉校
平成30年11月 旧宍塚小学校校舎の転用決定
平成31年3月 地元説明会の実施(休日と平日の計2回実施)
令和元年5月~9月 旧校舎の改修工事の実施
9月 教育相談室の移転、供用開始。
12月~翌2月 公文書書庫の移転作業の実施
令和2年2月 公文書書庫の供用開始
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
背景・目的
① 廃校となった校舎についての地元からの要望
旧土浦市立宍塚小学校は、平成25年度末の廃校時に地域住民から、売却せずに人の流れのある公的施設としての利用を要望されていた(体育館及びグラウンドは、市民に開放していた。)。
② 公文書書庫の管理上の問題
本市の公文書書庫は、これまで市内3か所に分散して保管していたが、書類の探索が困難な場合があり、また、長期保存文書の累積により書庫容量がひっ迫しつつあった。
③ 教育相談室の施設老朽化の問題
教育相談室の入居する建物は、建築後50年近く経過し、老朽化が進んでいた。
これらの問題を解消するため、旧宍塚小学校校舎への公文書書庫及び教育相談室の移転を実施した。
取組の具体的内容
◎改修工事の内容
・書庫用内装改修
・教育相談室用内装改修
・管理用両開きドア設置(3箇所)、2階トイレ改修
・空調移設及び撤去、書庫用照明移設、非常用照明新設、受変電設備改修
・給排水設備の改修及び撤去
・駐車場改修
◎旧宍塚小校舎内を区域分けし、2つの用途で供用
① 公文書書庫の区画(約980㎡):1階部分及び2階部分の約1/3廊下部分に扉を新設し、普段は施錠している。
一日に数名程度の市役所職員が、公文書を閲覧したり使用するために訪れる。
② 教育相談室の区画(約500㎡):2階部分の約2/3学習室、プレイルーム、相談室、職員室等が設けられている。
平日の日中は、児童、生徒及び教職員(計 約20人)が利用している。
③ 共用部分(約250㎡)
昇降口、トイレ、給湯室、階段室等。
廊下部分
2階教室部分
棚の運搬時の様子
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
・移転を機に、公文書の保管場所の最適化を実施
これまでの書庫は、長年の使用により公文書の保管場所が細分化され、保存文書の検索に困難が生じていたため、今回の移転を機に、書庫の最適化を行った。
具体的には、公文書の保存年限の種別ごとに保管場所をまとめ、それぞれの保管場所内において発生年度、箱番号順に並び替えを行った(①)。また各保管場所ごとに約1.5年度相当分の保管容量の余裕を持たせることで、各保管場所内で同じ保存年限の公文書を循環して保管するようにした(②)。これにより、保存文書の検索や、毎年定期的に実施する書庫の整理に係る業務が容易となった。
【① 保存年限ごとの保管場所のイメージ】
公文書の保存年限(永年保存から3年保存まで数種類)の種別ごとに保管場所をまとめる。
【② 同じ保存年限の公文書の循環のイメージ:5年保存文書を例とする】
公文書書庫で4年間保管する(1年目(発生年度の翌年度)は、自課で保存する。)。
保存年限ごとの保管場所の箱の容量は、文書量の急増時を想定し、必要年度分+1.5年度分程度を確保する。
・人の流れを望む地元の要望を実現
教育相談室を利用する児童や生徒及びその保護者、教職員、公文書書庫を利用する市職員、体育館やグラウンドの利用者など、平日は常に人がいる状態となり、地元住民の要望に応えることができた。
取組の効果・費用
旧校舎に公文書書庫及び教育相談室を移転し、併用することにより、「背景・目的」において挙げた諸問題を、必要最低限の費用で解消できたと考えている。
また運搬業務委託に関しては、公文書書庫の移転実施時期を、運搬委託業者の閑散時期である12月から翌2月に行うことにより、当初予定の4割程度の費用で実施することができた。
更に、公文書書庫で問題が発生した際に、教育相談室の職員が速やかな対応をすることにより、書庫の管理体制が強化された。
これまで市街地にあった教育相談室についても、自然豊かな環境で、のびのびと利用できるようになった。
取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
・移転実施時期の調整本事業の実施時期中、4回の選挙業務等、他の業務の繁忙期と重なったため、公文書書庫の移転実施時期の調整に苦慮した。
→移転実施時期を、選挙業務が全て終了した令和元年11月以降に設定した。期間、予算、人員に余裕が無かったため、移転計画の策定を綿密に行い、想定外を少なくするよう心掛けた。
・公文書書庫の移転計画の策定
移転中も旧公文書書庫の機能を維持する必要があったこと、また予算上の理由により既存の文書保存棚を再利用する必要があったことから、文書保存棚と文書保存箱は、それぞれ数回に分けて搬出入を行う必要があった。棚の運搬・棚の固定・文書保存箱の運搬の順番、教室への搬入経路、各部屋の耐荷重要件、「特徴」で記載した公文書の保存年限の種別ごとの保管場所の設定等、課題が多く、解答の無いパズルを解こうとする気分であった。
→遠回りかもしれないと思いつつ、すべての箱(約8,300箱)の把握を行い、管理番号を振った。作業工程別に、旧書庫と新書庫のそれぞれにおける棚と箱の設置状況図を作成し、入札前に概ね全行程の内容を想定することにした。
・施設の利用再開に伴う不具合の発生と、その対応
廃校して数年経っていたので、施設の再生に苦慮した。供用開始後、漏水や壁からの雨漏りが発生し、修繕が必要となった。
今後の予定・構想
特に無し。
適切に書庫の機能を維持していきたいと考えている。
他団体へのアドバイス
一番辛かったのは、本市において前例のない事業であり、予算、人員、期間が限られているにもかかわらず、適切な工程が見えないことであった。文書保存棚を全て新規に購入し、文書保存箱のみを移設した方が、効率は良いかもしれない。しかし、計画をきちんと立てて工夫することにより、最初は大変でも費用を掛けずに実現できると思う。
また、施設の再利用を行うのであれば、休止期間は短い方が良いのではないだろうか。施設は使用していない期間が長引くと痛みが進み、修繕が必要になると思われる。
私は入庁当時、学校の施設管理を担当する部署に配属になり、当時の宍塚小学校にも、よく訪れていた。里山と田園に囲まれ、小さい学校ならではの教育の行き届いた、暖かい雰囲気のある学校だった。数年前に廃校となると聞いた際に、一抹の寂しさを感じた。地元の方や、在校生、卒業生の方達にとっては、それ以上の思いがあったことと思う。
今回、たまたま旧宍塚小学校校舎の利活用計画の一端に関わることとなり、用途は異なるとはいえ、かつて小学校として愛された施設を今後も長く適切に利用できるようにするために、何をすれば良いかを念頭に置き、事業を進めた。
同様の事業の担当となった方に、本市の例が参考となれば幸いである。
問い合わせ先
茨城県 土浦市 総務課
029-826-1111