
全国の市区町村の創意工夫あふれる取り組みを表彰する、愛媛県主催の「行革甲子園」。7回目の開催となった令和6年の「行革甲子園2024」には、35都道府県の78市区町村から97事例もの応募があったという。
今回はその中から、千葉県市原市の「公共施設等の有効活用と子育て支援の地域活性化(いちはら子ども未来館整備事業)」を紹介する。
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2024」の応募事例から作成しており、内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
取り組み概要
市原市は、令和3年度から令和5年度までの間に、勤労者の福祉を目的とした旧市原市勤労会館(以下、「旧youホール」)に、新たな価値を創出するため、本施設の在り方を見直すこととし、子ども・子育て支援の総合的な拠点施設である「いちはら子ども未来館(以下「未来館」)」を設置した。
背景・目的
同市では、子育て世代の転出超過が続いており、最重要課題の一つとなっている。この課題を解決し、子育て世代が安心して住み続けられるまちづくりを推進するためには、子育て世代を徹底的に支援することが重要である。平成8年に勤労者の福祉に寄与することを目的に開館した旧youホールは、設置目的の希薄化や利用者の減少、働き方の変化などにより、施設のあり方に課題を抱えていた。
一方で開館以後、総合公園等の公共施設や大規模商業施設の開業に伴い、子育て世代を集客するポテンシャルを有する立地環境となった。こうしたことから、旧youホールに新たな価値を創出するため、同施設の在り方を見直すこととし、子育て世代へのアンケートやインタビュー、旧youホール利活用に係るサウンディング型市場調査による民間アイデアなどを踏まえ、施設整備の在り唐と基本的な機能を整理した「youホール利活用方針」を策定した。市議会への説明やパブリックコメント等をふまえて、令和4年2月に確定し、同方針をもとに子ども・子育て支援の総合的な拠点施設としてリニューアルを実施した。
取り組みの具体的内容」
旧youホール利活用方針により、「(仮称)いちはら子ども未来館」へのリニューアル改修整備として5件の工事を実施した。
⑴外壁改修工事/令和4年7月~令和5年6月
⑵エレベーター改修工事/令和4年10月~令和5年10月
⑶内装改修工事(建築)/令和5年3月~令和6年2月
⑷内装改修工事(電気設備)/令和5年3月~令和6年2月
⑸内装改修工事(機械設備)/令和5年3月~令和6年2月
外壁改修工事においては、長寿命化のための塗装処理、従来のブルー調からモダンシックな色調への外観変更を実施した。エレベーター改修工事においては、省エネ化と耐震化および安全対策のための全面刷新を実施した。
内装改修工事においては、主にプレイルーム・子育てサロンへの改修、天井耐震化と館内のバリアフリー化(こどもトイレ設置等)を実施した。また、行政施設として子育てネウボラセンターを移設し、母子手帳交付等の母子保健事業専用ルームを設置するともに、発達支援センター地域支援室を新設し、療育相談室を設置した。
エントランス床は木材を使用し、館内においても木や自然を基調としたカラーリングとした。また、工事期間中においても1階に併設するハローワークの機関である市原ワークプラザの営業を継続し、切れ目のない就労支援を実施した。
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
未来館の運営において、市民ニーズに即した事業内容を策定するためのニーズ調査を実施し、市民等からの意見をふまえて指定管理事業の策定を行った。
・ワークショップ(計3回)
第1回 令和4年9月19日(月・祝)/子育て支援団体関係者28人
第2回 令和4年10月10日(月・祝)/子ども・保護者33人
第3回 令和4年11月5日(土/子育て支援団体関係者・子ども・保護者21人
・書面ワークショップ(アンケート調査) 全回答数695件
youホール利活用方針および令和4年度のニーズ調査結果を踏まえ、整備事業を実施した。子ども・子育て支援の総合的な拠点施設としての機能を確保するため、行政施設と公の施設を併設し、両者の相乗効果を図った。
未来館では、行政施設として、子育てネウボラセンターの母子保健機能と発達支援センターの療育相談機能を包含する「こども家庭センター」を設置することにより、母子の健康や発達の遅れなど多様な相談が一か所でできる施設となった。また、公の施設については、子育てサロンや託児スペースを設置して子どもや親の相互交流や親のリフレッシュができる場とするとともに、子どもにとってワクワクする場所となるように魅力的なソフト事業を充実させるため、民間の創意工夫を取り入れる必要があることから、指定管理者制度を導入した。
これら行政機能と公の施設機能が融合することにより、健診の受診から発達の遅れの相談や、子どもを遊ばせるついでに子育てサロンで相談するなど、安心して子育てができる体制を整えた。
また、整備事業は、国交省所管の都市構造再編集中支援事業費補助金を活用した。
令和4年度/100,000千円(令和5年度繰り越し)
令和5年度/189,200千円
未来館が、より親しみをもっていただける施設となるよう、施設名の愛称を令和5年9月1日から29日までの間、市内在住、在勤、在学者を対象に一般公募で募集した。その結果、114件の応募があり、選考会議委員(市職員12名)により114作品の中から6作品を選考した。
6作品について、一般投票を行ったところ、2,129票の投票があり、639票を獲得した「weほーる」(うぃーほーる)を未来館の愛称に決定し、市内小学校6年生代表78人(子ども議員40名、子ども傍聴人38人)が参加した令和5年12月20日開催のいちはら子ども議会で承認された。
1. 愛称名「weほーる」(うぃーほーる)について
愛称を考えた理由:
母親、父親、子ども達、「私達みんな(we)」の場所になって欲しい、そんな願いが込められた愛称。
2. 投票状況
(1)実施期間 11月1日から30日まで
(2)投票資格 市内在住、在勤、在学者
(3)投票方法 投票専用フォームによる投票、投票用紙による投票
(4)投票結果 投票数:2,129票
【内訳】
weほーる(うぃーほーる):639票
いち子未館(いちごみかん):544票
みらエール(みらえーる):512票
iりんく(あいりんく):175票
I’エール(あいえーる):135票
みらフーレ(みらふーれ):124票
取り組みの効果・費用
1. 来館者数及び延べ利用者数
令和6年4月末時点では来館者数11,604人、各事業等サービス延べ利用者数 13,848人を達成した。
《来館者の声》(4月の来館者アンケートより)
・ 登録もなく気軽に来られる。
・ 無料で質のよいおもちゃが沢山。
・ 土日もやっているのが本当にありがたい。
・ 子どもに慣れているスタッフの方が多くて安心。
・ 子ども用トイレもあり、利用しやすい。
2. 相談人数
子育てネウボラセンター、発達支援センター地域支援室への相談は400人を達成した。
3. 予算執行額
令和4年度
・施設改修工事費 40,040千円(外壁改修工事前払金)
令和5年度
・施設改修工事費 601,802千円
・備品等購入費 52,520千円
取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
子ども向け施設への既存公共施設のリニューアル工事および公共施設の再配置は、同市初の取り組みであり、また全国的にも事例が少なく、工事期間が決まっている中で、手探りの中実施した。コロナ禍の子育て環境が大きく変化していることを踏まえ、子育て世代の声を把握するニーズ調査を行い、可能な限り整備工事や指定管理事業の仕様に反映する調整作業が難航した。
今後の予定・構想
【エリアのポテンシャル】
上総更級公園や中央図書館等の公共施設や大規模商業施設と近接する立地を活かし、多様かつ効果の高いサービスを展開する。
【地域との連携】
地域団体との協力により指定管理事業を実施する事業の多様化を図る。また、未来館だけでなく児童館での出張教室等を実施することで地域との連携を強める。
他団体へのアドバイス
事業を進める上で、市民ニーズの丁寧な把握を行うことが望ましい。また、不測の事態を想定した十分な工期と工事費、技術系人材が確保されていると心強い。
【市原市公式ホームページ:新しくオープン!無料の屋内遊び場~いちはら子ども未来館(weほーる)~】
https://www.city.ichihara.chiba.jp/article?articleId=646c1791b0bc1e69456edad8