ジチタイワークス

岡山県倉敷市

ゲーム・絵本・ラップ⁉倉敷市消防局が仕かける“楽しみながら学ぶ”防火対策。【行革甲子園2024】

全国の市区町村の創意工夫あふれる取り組みを表彰する、愛媛県主催の「行革甲子園」。7回目の開催となった令和6年の「行革甲子園2024」には、35都道府県の78市区町村から97事例もの応募があったという。

今回はその中から、岡山県倉敷市の「SNSを活用した火災予防活動」を紹介する。

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2024」の応募事例から作成しており、内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

取り組み概要

倉敷市では、令和元年度11月1日より、SNSを活用した火災予防活動を行っている。具体的には、以下の取り組みを実施する。

・パソコンでもスマホでも遊べる「オリジナル脱出ゲーム」を制作し、楽しみながら火災予防について学んでもらう。
・防火絵本を作成して、正しい火の使い方を、大人と子供が一緒に話し合ってもらう。(倉敷市消防局公式YouTubeチャンネルで絵本の読み聞かせ動画を配信)
・地元警察と連携し「防火防犯ラップ」動画を作成後、デジタルサイネージを活用する。
・公式SNSを活用して「消防を身近に感じてもらえるよう」継続投稿する。

背景・目的

コロナ禍により、出前講座等など地域に出向いての防火対策が制限される中、特に若い世代の方に防災意識の向上を図るため、絵本・ゲーム・ラップ・SNSとそれぞれの世代で楽しみながら学べるコンテンツを用意した。

取り組みの具体的内容

●脱出ゲーム「マンション火災から避難せよ!」

令和4年度初頭、新型コロナウィルスの影響により、市民を対象とした対面での各種訓練指導や広報活動を含めた多くの消防業務が停滞していた。この状況を打開すべく、小学生以上を対象に脱出ゲームというコンテンツを利用し、能動的に学習できる環境を整備した。

取り組みは、同消防局ホームページ上の特設ページに公開、広報誌やSNSなどでの広報に加え、プレスリリース配信、二次元コード入りのポケットティッシュを作成し配布した。さらに市内小学校でゲーム体験授業を行った。
 

●防火絵本「さみしがりやのぴっぴ」

「脱出ゲーム」が非常に好評であった理由として、防火について、「目で見て学び、考え、実行する」というスキームが、特に子どもたちの理解や記憶に直結したのではと考えた。そこで、防火広報をより浸透させるために、電子端末での操作が困難な未就学児にも馴染みのある「絵本」を題材とし、オリジナル防火絵本「さみしがりやのぴっぴ」を作成した。

取り組みは、市内図書館、児童館に依頼し、誰でも貸出ができるようになった。また、保育園の園児や図書館の来館者に対して、消防職員による読み聞かせを行い、消防局公式ユーチューブに読み聞かせ動画を配信した。
 

●警察と連携「防火防犯ラップ」

脱出ゲームは小・中高生、絵本は園児、そしてラップは若者を対象とした。地元警察と連携しラップという一見不釣り合いに見える組み合わせで注目を集める作戦だ。

取り組みは、「安心・安全・治安安泰」を共通用語としてラップ動画を作成し、デジタルサイネージ、公式ユーチューブ配信、駅前で呼びかけ広報を行った。
 

●SNSの投稿

定期的に配信することで、フォロワー数の獲得をねらった。また、常に市民が知りたい情報を意識した投稿を行っている。SNS投稿委託をしていないため、職員全員が安心して広報活動できるように作業部会を定期的に開催している。

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

オリジナル脱出ゲームは、ゲームを進めるうちに、消火器の使い方や119番通報、避難方法など、楽しみながら火災予防について多くのことが学べるように工夫した。また、ゲームクリア後に習熟度を高めるためのリトライを促す効果を期待し、行動評価点数(階級)発表システムを組み込んだ。

防火絵本は、火は怖いものと教えるのではなく、生活に必要な火は目を離してしまうと火事になることがあるということを子ども達にも親しみをもって学んでもらえるように構成した。また、YouTubeの動画配信では、より親しみをもってもらえるように職員の子供(当時小学5年生)の声で収録した。

防火防犯ラップは、趣味でラップが得意な職員に依頼し、警察とラップで広報するという話題性をねたった。撮影は倉敷美観地区で行い、風景にもこだわった。

SNSの投稿については、様々な立場の人に届くよう、子ども向けシリーズや、専門職へ対する火災の危険性、リクルートとして消防局で働きたい人用の動画など、投稿種類の幅を広げている。また、消防をより身近に感じてもらうため、LINE用スタンプの消防局公式キャラクターを活用している。

取り組みの効果・費用

・脱出ゲーム公開後1カ月のアクセス数は、約4,000件であり、現在も順調に伸びている。月当たりの受講者数を単純比較するとコロナ禍の約2倍、自粛期間中の約10倍となった。
・脱出ゲーム、防火絵本、ラップ動画の構成・キャラクター・編集などは全て職員がつくったものなので、費用は0円で制作できた。
・取り組み効果としては、SNSフォロワーは合計14,000超えを達成し、市民の方からも「SNSを見てます」といった声をかけてもらっている。
・令和5年度採用試験の受験者から「SNSで雰囲気のよさが伝わり、倉敷市消防局を受験しました」といった声をかけてもらっている。
・令和4年度中の火災122件に対し、令和5年度中の110件と減少した。

取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

脱出ゲーム、防火絵本、防火防犯ラップどれも職員一人の思いでは成し遂げられない。構想があっても職員の協力、上司の理解が得られなければ進むことができない。課員を巻き込むため、通常業務を疎かにしないこと。日ごろから「脱出ゲーム作って、遊びながら学んでもらうことができたらいいな」のように、自分の夢や目標を話しているうちに、職員も自然と協力してくれるようになった。

SNS運用は、情報を一つ発信するにも労力が伴う。そこで、職員に全員が広報委員となり、タイムリーな情報を定期的に発信できる仕組みをつくった。

今後の予定・構想

今後もSNSなどを通じて優秀な人材の確保につばげたい。そのために、常に市民にとって有意義な情報を発信する。また、その成果としてLINE用スタンプで収益を獲得しているように、SNSでも収益を受け取れるような時代をつくりたい。そうすることにより、行政と市民がより一層身近となり、火災件数も低下すると考える。

他団体へのアドバイス

SNS運用を継続することは簡単ではないが、SNSを通して消防を身近に感じてもらい、防火意識を高めるだけでなく、採用面接時にも受験者から「SNSを見ています」の発言もあり、職員採用活動のツールにもなっている。

市民の声を直接聞ける唯一無二の媒体なので、ぜひチャレンジしてほしい。

 

【倉敷市消防局ホームページ】
https://www.city.kurashiki.okayama.jp/anzen/shobo/1006549/index.html

【行革甲子園】全国の自治体の創意工夫あふれる取り組みを紹介! 記事一覧

このページをシェアする
  1. TOP
  2. ゲーム・絵本・ラップ⁉倉敷市消防局が仕かける“楽しみながら学ぶ”防火対策。【行革甲子園2024】