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小美玉市:職員提案が実現した名刺の公費負担化―「モヤモヤ」解消とシティプロモーションを加速

小美玉市役所では、職員提案制度を活用し、統一デザインの無料名刺サービスを導入しました。
これにより、職員の金銭的・業務的負担を軽減しつつ、市のブランディングや魅力発信を効果的に推進しています。
今回は、導入に至るまでの経緯や、導入後の変化、そして今後の展望について、小美玉市役所 魅力発信課の代々城様にお話を伺いました。

※インタビュー内容は、取材当時のものです。

 

Interview

代々城 衣里さん
茨城県小美玉市 魅力発信課
シティプロモーション係

 

職員の「モヤモヤ」解消へ:無料名刺導入前の課題

導入前の名刺運用と課題について教えてください。

2025-09-12-16-21-16_pixta_10917556_M.jpg導入前は、他の多くの自治体と同様に、職員それぞれが自費で名刺を発注していました。発注先も地元の印刷業者、ネット印刷、あるいは自分でプリントアウトする職員まで様々でした。
市としてはテンプレートデザインを用意し、利用を推奨していましたが、編集ソフト(Illustrator)が使える環境の職員とそうでない職員がいるため、業者に依頼する際にデータ送付の手間が生じるなど、必ずしも統一された運用ではありませんでした。

また、テンプレートが用意されていても、職員がそれぞれ好みに合わせてロゴを追加したり、色違いを展開したりとカスタムしてしまうケースも多く、結果として統一感に欠けていました

最大の課題は、本来業務で使うべき名刺の印刷費が職員の自己負担であったことです。これは暗黙の了解となっていましたが、職員向けに行ったアンケートでは「名刺は個人負担ではなく市役所で負担すべきではないか」という声が半数近くを占めていました。また、一部の職員には、Illustratorが使えるがゆえに他の職員から名刺の注文を頼まれ、業務外の負担となるケースも発生していました。

職員提案が生んだ変革:無料名刺サービス導入の道のり

ー今回のオリジナルテンプレートサービスを導入されたきっかけは。

今回のサービス導入のきっかけは、当市独自の「職員提案制度」です。これは職員が個人またはグループ単位で政策や業務改善の提案をできる制度で、募集期間中に提出された提案は審査会で検討されます。
オリジナルテンプレートサービスの導入は、この職員提案制度を通じて職員有志のチームが提案しました。私自身も提案チームの一員だったのですが、ある職員が個人的に無料名刺サービスを利用しており、「こんな良いサービスがある」とチームに紹介してくれたのが始まりです。
提案内容が審査会で「ぜひやるべきだ」と評価され、導入が決定しました。特に、市長からも「名刺の個人負担は民間では考えにくい」との後押しがあり、スムーズな導入につながりました。


オリジナルテンプレートサービスで作成された名刺

ー導入の決め手やポイントは何でしたか。

導入の決め手は大きく2点あります。一つは、「市の発信力向上」「ブランドイメージ向上」です。市制20周年PRやふるさと納税の紹介を行うことで、名刺を市の広報ツールとして活用したいという希望がありました。
もう一つは、職員の経済的負担軽減です。市の財政は決して余裕があるわけではありませんが、市の財政負担を最小限に抑えつつ、職員の自己負担を解消できる点が決定打となりました。これにより、職員が業務で使う名刺を「もやもや」しながら自腹で用意する状況を解消できると判断しました。
 

ー実際の導入はどのように進められましたか。

職員提案制度で採用決定後、すぐに魅力発信課に実施に向けた検討指示が下り、私が担当として詳細を詰めていきました。具体的には、費用シミュレーション、導入までの準備期間と工程、そしてデザインの最終調整です。
今年の2月上旬にはジチタイワークスさんに連絡し、3月下旬の人事異動内示に合わせて新しい名刺が使用開始できるよう、約1カ月というタイトな準備期間で進めました。

新しいサービスの導入でハードルとなるのが、職員が各自で注文する際のやり方に対する不安です。この不安を解消するため、簡単な名刺注文の手順書を作成し、受付開始のアナウンスとともにイントラネットで共有しました。
幸い、この手順書のおかげで、やり方に関する問い合わせは特段ありませんでした
当初は「なぜ無料で名刺が作れるのか?」という疑問の声もありましたが、ジチタイワークスさんの会員登録が条件となっていることで無料提供が実現している旨を説明しました。

職員向けに代々城さんが作成した名刺注文の手順書

シティプロモーションを加速:無料名刺がもたらす効果と展望

ー導入後の変化や職員の反応はいかがでしたか。

導入後の変化として最も顕著なのは、利用者の多さです。元々、どのくらいの職員が名刺を持っていたか把握できていないため、導入後の増加数は不明ですが、現状で全職員の45%がこの無料名刺サービスを利用しています。
これは他の自治体の平均が約20%であることと比較しても非常に高い数字で、職員の潜在的なニーズに応えられたことと、庁内周知がしっかり行われた結果だと感じています。
職員からの反応はおおむね好意的です。

◎フォーマットに入力するだけなので、注文が簡単だった
◎以前は地元業者への受け取りに足を運んでいた職員からは「時間の節約になってありがたい」
◎統一された名刺になったことで、初対面の方との会話の糸口になる

 

裏面を活用している職員も多く、市制20周年ふるさと納税の話題をアイスブレイクとして使うことで、市のプロモーションにもつながっています

 

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「小美玉市を象徴する風景のひとつ、高崎コスモスロード」

ー導入にかかる予算はどのように確保されましたか。

今回の導入にかかる予算は、予備費を充当しました。初期導入費用が「委託料」、毎年の保守費用が「使用料」という形で計上されています。
この予算がスムーズに確保できたのは、導入の提案がボトムアップから来たものではありますが、市長が「職員の自己負担から公費負担へ」という本質的な部分を強く後押ししてくださったため、比較的調整がしやすかったです。市の発信力向上というブランディングの側面もありましたが、職員負担軽減という側面が大きかったため、人事課の予算での計上となりました。

ー他の自治体さんへのメッセージをお願いします。

どの自治体も、当市と同様に職員の名刺費用やデザインの統一に関する課題を抱えていることと思います。
この無料名刺サービスは、「仕事で使う名刺をなぜ自腹で払うのか」という職員のモヤモヤを解消できる、非常に良いサービスだと私自身も思っています。

さらに、この自治体オリジナルテンプレート機能でおそろいの名刺を持つことで、職員一人ひとりが名刺を配り、それをきっかけに会話をすることで、自治体のPRを効果的に行えるという大きなメリットがあります。
職員が自発的に市の魅力を発信してくれる「シティプロモーションの担い手」になってくれるのです。
職員提案制度での提案が採択され、他の職員にも喜ばれていることは、提案したメンバーにとっても非常にうれしいことです。多くの自治体で導入を検討する価値があると思います。

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お問い合わせ

株式会社ジチタイワークス

〒810-0022 福岡市中央区薬院1-14-5 MG薬院ビル7F
TEL:092-716-1480
担当:安藤・西村

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