ジチタイワークス

兵庫県,福岡県,沖縄県

【海外 憧れの職場】海外拠点で活躍する職員にインタビュー


ジチタイワークス「公務員ライフを楽しむためのバラエティ増刊号」とは?
社会の難題に立ち向かう公務員の皆さんに、ちょっとした安らぎの時間を提供したい。
そこで今回は、編集室に「公務員のためのバラエティ班」を臨時創設!
疲れたココロとアタマを休めながらも、公務員ライフを少し楽しく、豊かに感じられる……
そんな多彩なコンテンツをお届けします。


※下記はジチタイワークス バラエティ増刊号(2025年1月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

自治体の中には、海外を拠点に活躍する職員がいる。海を越え、地域の魅力発信に駆けまわる3人にインタビュー。異なる文化や海外生活の面白さも聞いた。

 



沖縄県産業振興公社
台北事務所 所長(沖縄県より出向)
上江洲 辰徳(うえず たつのり)さん
2007年、沖縄県へ入庁。宮古島赴任のほか、水産、福祉、商工などの部署を経験した後、2022年に台北事務所の所長として赴任。

外の世界へ飛び出して、沖縄県と台湾をつなぐかけ橋に

―まずは、台北事務所の所長に就任した経緯を教えてください。

沖縄県内の大学を卒業後、すぐに入庁したこともあって、外の世界で働いてみたいという思いがありました。当県の場合、人事異動の希望先として、本庁以外にも国や外部機関への出向という選択肢があります。その中に、台北事務所がありました。もともと海外に関心があり、いつか役立てられたら……と英語は少しだけ勉強していました。一方で、中国語は全く勉強したことがなかったのですが、これはチャンスだと考え、思い切って希望を出すことにしたのです。その後、2回の面接選考を経て、令和4年4月に赴任が決定。初めての台湾移住で、緊張しながら準備を進めていましたが、当時は新型コロナウイルス感染症拡大のピーク時期。そのため、渡航するのにも苦労した記憶があります。

同年10月頃に、ようやく台湾と那覇をつなぐ路線が復便し、行き来がだいぶラクになりましたね。

台北事務所では、4人の現地スタッフと一緒に業務を行っている。スタッフは全員日本語が話せるため、事務所内では日本語でコミュニケーションを取っている。

―台北事務所ではどのような業務を行っているのでしょうか?

平成2年に開設された台北事務所は、当初「物産の海外進出」を主な目的としていました。現在では、東アジアを中心とした海外活力の取り込みを目的に、様々な分野での活動に取り組んでいます。主には、沖縄県への観光誘客・県産品の販路拡大・ビジネスマッチング・国際文化交流などが挙げられます。観光分野では、旅行博などの展示会への出展や、沖縄観光をテーマにしたセミナーなどを開催。ほかにも、修学旅行先としての誘客で学校関係者に営業なども行っています。沖縄と台湾は距離が近く、飛行機で片道約1時間半なんです。県内における外国人観光客の中でも、台湾からの訪問者が最も多く、様々な交流が盛んです。物産に関しては、泡盛の消費拡大の活動に注力しており、テイスティング講座やカクテルイベントの開催などを行っています。

一方、ビジネスの観点では、台湾の企業は日本を有望な市場の一つと捉えています。業種はIT・製造・食品・バイオ関連など幅広くあります。台湾から最も近い沖縄でテストマーケティングを行い、その後、九州や東京へ展開を目指す企業も多い。私たちは、こうした企業を沖縄県側のコーディネーターにつなぐ役割を担っています。逆に、沖縄から台湾への進出を相談されることも。その際は、事務所の現地ネットワークを活かし、マッチング先を探してつないでいます。

台湾観光の定番として有名な夜市。夜になると様々な場所で屋台に明かりがともり、観光客をはじめ、地元の住民たちも集う活気ある空間に。雑貨やアクセサリー、伝統的な台湾料理からB級グルメまで多彩な店が並ぶ。※写真はイメージです

―分野も広ければ、対応している業務も多様ですね!

業務は実に幅広く、ベースとなるマニュアルはありますが、定型の業務があるわけではありません。案件ごとに臨機応変に動きながら業務に取り組んでいます。言葉については、台湾に赴任してから中国語の勉強を始めました。赴任して約3年が経ち、日常生活で困ることは少なくなりました。ただ、ビジネスの場面での対外的なコミュニケーションは、事務所で一緒に働くスタッフが中国語で対応しています。スタッフにはベテランが多く、現地の人脈やこれまで培われてきたノウハウは、仕事を進める上で大きな力になっており、感謝しきりです。

―働きながら日本と違うなと思うことってありますか?

特に違いを感じるのは、仕事を進めるスピードですね。台湾ではLINEの活用がビジネスシーンにも浸透しています。日本はメールが主流で、LINEはプライベートで使うものというイメージですよね。しかし、こちらでは仕事の関係者とはLINEを交換し、タスクごとにグループをつくって進めていきます。進捗確認や写真共有もすぐにでき、メールよりも断然早くて便利ですね。驚くことに、現地の大手航空会社の責任者や、団体の長などからも初対面で「LINEを交換しましょう」と声をかけられることがあります。日本の感覚だとあり得ないですよね。スピードが速すぎるゆえに、前日に急な仕事の依頼が来ることもあります(笑)。今では、このスタイルにも慣れました。

花蓮県(かれんけん)で開催されたマラソンに参加し、完走したとき。

―海外で働く中で、どんなことをやりがいに感じますか?

たくさんありますが、自分で仕事をつくりながら進めていけることですね。また、沖縄県と台湾のかけ橋の役割ということもあり、多岐にわたる分野の人たちと出会えることも魅力です。国際的な視野をもつ人との交流は、私にとって刺激になりますし、何より多くの学びになっています。これは海外赴任ならではの経験で、やりがいを感じています。赴任期間を終えて日本に帰っても、この経験を糧に仕事に邁進していきたいと考えています。


 



兵庫県
ワシントン州事務所 所長
池上 卓久(いけがみ たかひさ)さん
2001年、兵庫県へ入庁。用地買収や物品調達などの部署を経験し、その後、駐在員として、中国・シンガポール・韓国での業務も経験。2023年よりワシントン州事務所へ赴任。

 
世界的な企業が集まっている一方で、豊かな自然にも恵まれていて、暮らしやすいまちです。

アメリカ赴任に挑戦し、兵庫県との交流を育む

―所長として赴任が決まったのは、どのような経緯ですか?

学生時代に中国へ留学していました。入庁後に外務省への出向で中国に赴任した際は、その経験を活かして業務に取り組みました。さらに、別の団体への派遣でシンガポール・韓国でも駐在を経験。そんな中、令和4年に庁内で海外事務所のポストの公募があったんです。それまでの海外赴任は全てアジアの国々だったため、欧米での勤務に興味をもちました。公務員として海外へ挑戦できる機会は限られているので、当時、英語はあまり得意ではなかったのですが、これをチャンスと捉えて応募してみることに。面接の結果、選出されて令和5年からの赴任が決定しました。

事務所から徒歩約15分で行ける距離にある市場は、シアトルの観光スポットとして有名。ここの近くにはスターバックスの1号店もある。

―ワシントン州事務所設置の背景や業務について教えてください。

当県では、昭和38年にワシントン州と姉妹提携を結び、交流を続けてきた長い歴史があります。この縁から平成2年に、同州のシアトルへ海外事務所を設置。当初の主な目的は文化交流でしたが、近年は経済活動やインバウンドの誘致に力を入れています。私が赴任した頃からは、やはり2025年の大阪・関西万博に向けたPRが大きなミッションといえますね。具体的な業務としては、旅行博覧会などに参加して県のPR活動を行っています。また、「シアトル桜祭・日本文化祭」など、現地で行われる日本のイベントに出展することもよくあります。最近ではロサンゼルスで開催された、日本食のイベントに県として初参加。一緒に出展した日本の事業者の支援なども行いました。

ビルが建ち並ぶシアトルのまち。奥に見える山は、ワシントン州のシンボルである「マウント・レーニア」。

PR活動の一環で兵庫県のプレゼンを行っている様子。

―現地に行ってこそ感じる日本との違いはありますか?

仕事の進め方には違いを感じますね。日本では事前に計画を立てて事業を進めますが、こちらでは直前まで決まらないことがあります。もう慣れてはきましたが、重要なイベントのときは肝を冷やす場面も。生活面では、最初は現地の人との距離感に戸惑っていました。フレンドリーで親切な人が多いのですが、フランクなあいさつの返し方が分からず、固まってしまうこともよくありました。そうした文化の違いで大変な面はありますが、ほかの州に出張する機会もあり、刺激をもらいながら有意義に仕事ができていると感じます。シアトルはスタートアップ企業の活動も盛んで、人口は平成22年からの10年間で20%も増加しています。勢いがあるまちなので、ぜひ皆さんにも訪れてほしいですね。


 



福岡県
バンコク事務所 所長
西田 光孝(にしだ みつたか)さん
民間企業を経験した後、2010年、福岡県へ入庁。建築、税務、観光などの部署を経て、2022年3月にバンコクへ赴任。

 
国際色豊かなまちなので、日本では味わう機会が少ない国の料理も楽しめます。ぜひ来てみてください。

福岡県の魅力を伝える営業マンとして、タイへ渡る

―バンコク事務所設置の背景や業務について教えてください。

福岡県とバンコク都は、平成18年に友好提携を締結しました。これをきっかけに、ASEAN地域とのビジネスや観光面での連携強化を目指し、平成22年にバンコク事務所が設置されました。業務内容は、県内の中小企業のビジネス展開支援や、果物などの県産品の販路拡大支援、SNSでの観光情報発信や旅行展示会出展などのインバウンド誘客事業です。また、ベトナムのハノイ市やインドのデリー準州など、福岡県が友好提携を結ぶ都市との交流事業の現地支援などを行っています。事務所では私のほかに県職員の副所長と、現地スタッフ2人の計4人で業務を進めています。

通勤時に通るルート沿いにあるタイ料理店。暑い中、屋外で汗をかきながらタイ料理を楽しめる。

―所長として赴任が決まったのはどのような経緯ですか?

以前から海外生活への関心がありました。観光部局に在籍時、インバウンドの仕事内容に興味をもったことがきっかけです。その後、人事異動の希望を提出し、縁あって赴任が決まりました。タイに渡る前は、学生時代以来となる英語の勉強に必死に取り組む日々が続きました。今も英語とタイ語を日々勉強していますが、私たちの仕事で大切なのは現地の人たちとネットワークを築くこと。そのためには、可能な限り自分で話し、人間関係をつくっていく必要があります。自戒を込めて、語学を身に付けている方が公私ともに充実した生活を過ごせると痛感しています。

バンコク最大の中華街ヤワラートの様子。春節の期間中は、まちが祝賀カラーの赤一色に染まる。

―これまで印象に残っている業務はありますか?

当事務所での活動は多岐にわたりますが、その中でもインバウンド関係の業務ですね。事務所からの情報発信をきっかけに、タイの人が福岡を訪問したこと。また、在タイ旅行会社とのネットワークを通じて、旅行商品を販売してもらえたことが、特に印象的な記憶として残っています。

誘客施策の一つとして、福岡を自転車で周遊する旅行商品のPRを行っている。

―現地に行ってこそ感じることはありますか?

タイには、語学が堪能で優秀な人が多い印象です。空間デザインや店舗レイアウトなど様々なものの見せ方も非常に上手いと感じています。一方で、業務全体の計画やスケジューリング、仕事の進め方などは、日本と考え方が違うこともあります。また、「ほほ笑みの国」といわれる通り本当に優しい人が多いです。加えて、国際都市のバンコクだけでなく、チェンマイやプーケットなど魅力的なまちが多いので、機会があれば、来てほしいなと思います。

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