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【令和7年度】重点支援地方交付金の活用事例|自治体の物価高対策と給付事業の実務ポイント

重点支援地方交付金は、物価高騰の影響を受ける住民生活や地域経済を支えるため、自治体が実施する国の物価高対策である。令和7年度においても、現金給付に限らず、商品券やお米券、光熱費支援など多様な手法が活用されている。一方で、短期間での執行や事務負担への配慮など、実務上の判断が事業の成果を左右する。
本記事では、重点支援地方交付金の制度概要を整理したうえで、自治体の活用事例や給付方法選定のポイントを実務者向けに解説する。
※掲載情報は公開日時点のものです。
重点支援地方交付金とは?|令和7年度の制度概要と位置づけ
重点支援地方交付金とは、正式には「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を指し、エネルギーや食料品価格の高騰による影響を受ける生活者や事業者を支援するため、国が創設した交付金制度である。自治体が地域の実情に応じて支援内容を設計できる点が特徴であり、現金給付やお米券、光熱費支援など多様な施策に活用されている。
令和7年度においても、物価高への対応策として本交付金の活用が想定されており、制度理解だけでなく、実務設計までを見据えた対応が求められている。
重点支援地方交付金の対象事業と推奨事業メニュー一覧(令和7年度補正)
令和7年11月の閣議決定および経済対策を受け、物価高への対応策として、重点支援地方交付金は令和7年度補正においても活用が続けられている。住民税非課税世帯への給付対応をはじめ、地域の実情に応じた生活支援が想定されており、自治体には国が示す「推奨事業メニュー」を踏まえた事業設計が求められる。
推奨事業メニューに該当する事業では、比較的自由度の高い制度設計が可能とされている。令和7年度補正では、低所得世帯や子育て世帯、中小企業等への支援を中心に、以下の10分野が推奨対象として整理されている。
生活者支援(5分野)
生活者支援では、物価高騰の影響を受ける世帯の負担軽減を目的に、家計への直接支援や消費下支え、省エネ行動の促進などが推奨事業メニューとして示されている。
事業者支援(5分野)
事業者支援では、物価高騰への対応に加え、賃上げや生産性向上につながる取り組みを後押しする施策が推奨されている。
実務においては、国が示すこれらの推奨事業メニューをベースに、各自治体が地域の課題や産業構造に応じて具体的な事業へと落とし込んでいる。
自治体による重点支援地方交付金の活用事例【分野別・実例】

重点支援地方交付金の活用方法は自治体ごとに異なるが、分野別に整理することで、他自治体の設計思想や実務上の工夫が読み取りやすくなる。以下では、重点支援地方交付金を活用した事例を分野別に紹介する。
食料品の物価高対策に関する事例
食料品価格の上昇は幅広い住民に影響するため、特定の世帯に限定せず、広く支援が行き渡る施策が多く見られる。また、地域内での消費を促す観点から、現金給付ではなく、地元店舗で利用できる商品券やクーポンを活用するケースも多い。
▼主な取り組み
- お米券の支給
- プレミアム商品券の発行
- 電子クーポンの配布
- 地域ポイントの付与
- 食料品の現物給付 など
東京都足立区|全区民を対象とした現金給付による食料品支援
足立区では、食料品をはじめとする物価高騰の影響が区民生活全体に及んでいることを踏まえ、重点支援地方交付金を活用し、区民全員を対象とした現金給付を実施した。給付額は1人あたり1万円とし、所得制限は設けていない。
商品券と比べた迅速性や使い勝手のよさといった住民ニーズを踏まえ、現金給付が選択された。また、食料品価格の上昇が幅広い層に影響している実態を踏まえ、公平性と分かりやすさを重視した対象設定としている。
出典:足立区「全区民を対象に1人あたり1万円の現金を給付します≪あだち食料品等物価高支援給付金≫」
物価高対策としての子育て世帯支援の事例
物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯に対しては、将来世代への投資や現役世代の負担軽減の観点から、継続的な支援が重視されている。特に、学校給食費の無償化や、食材費高騰分を公費で負担することで値上げを回避する取り組みは、多くの自治体で実施されている。
▼主な取り組み例
- 小中学校給食費の無償化、または食材費高騰分の公費負担による値上げ抑制
- 子育て世帯を対象とした臨時特別給付金
- 学用品費やおむつ代等への補助
三重県名張市|国の給食費無償化施策を補完する学校給食費無償化
名張市では、物価高騰による保護者負担の軽減を目的に、重点支援地方交付金を活用した学校給食費無償化事業を実施する。国の小学校給食費無償化施策に加え、実際の給食費との差額を市が補填することで、保護者負担を生じさせない仕組みとしている。
同市では、令和7年4月から9月までの5カ月分に加え、令和8年4月から12月まで(8月を除く)の8カ月分についても給食費を無償化する。既存の給食提供体制を維持したまま公費で対応することで、制度変更に伴う事務負担を抑えつつ、物価高の影響を直接的に緩和する設計といえる。
出典:名張市「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金について」
光熱費・エネルギー価格高騰への対応事例
エネルギー価格の高騰を受け、都市ガスに比べて国の支援が届きにくいLPガス利用者への支援や、寒冷地における灯油購入費の助成など、地域の利用実態に応じた施策が実施されている。また、省エネ家電への買い替え支援を行う事例も見られる。
▼主な取り組み例
- LPガス料金の利用者負担軽減
- 灯油・重油等の購入費助成
- 省エネ家電への買い替え補助
神奈川県厚木市|光熱費と買い物レシートを合算して申請できる家計支援事業
厚木市では、市内店舗での買い物レシートに加え、電気・ガス・上下水道料金もまとめて扱い、補助金の申請ができる「あつぎ暮らし応援事業」を実施する。
対象期間内に、市内店舗での買い物や光熱費等の支払いに関するレシート等を、1人あたり合計1万円分以上集めて申請すると、6,000円の補助金が交付される仕組みだ。申請は電子または郵送に対応し、同居家族分をまとめて申請できるなど、手続きの負担軽減にも配慮している。
重点支援地方交付金の給付事業を円滑に進めるための実務上のポイント
重点支援地方交付金を活用した給付事業では、支給スピード、事務負担、対象者把握が大きな実務課題となりやすい。特に物価高騰など緊急性の高い施策では、スピードと正確性の両立が求められる一方、現場の事務負担が急増しやすい。
ここでは、給付事業で多くの自治体が直面している課題と、それに対する実務上の対応策を整理する。
給付事業で顕在化しやすい主な課題
重点支援地方交付金を活用した給付事業では、制度設計段階では見えにくい実務上の課題が、運用開始後に表面化しやすい。多くの自治体で共通して挙がるのは、支給までのスピード確保、手続きの煩雑さ、事務負担の増大である。
物価高騰対策のように緊急性の高い施策では、迅速な支給が求められる一方、申請内容の確認や不備対応に時間を要し、結果として支給が遅れるケースも少なくない。特に、紙と電子の申請が混在する場合、管理が複雑化し、現場負担が増す傾向がある。
実務上の対応策と考え方(給付手法の選択肢)
こうした課題に対しては、制度を複雑にするのではなく、実務負担を前提に事業設計を見直すという考え方が重要になる。給付方法についても、従来のやり方に限らず、事務負担やスケジュールに応じて選択肢を広げる動きが見られる。
具体的には、次のような対応が検討されている。
- 銀行口座不要なATM受取での現金給付サービスやデジタル給付の活用
- マイナンバー連携や公金受取口座の活用により、本人確認・口座確認を簡素化
- 申請受付、入力、不備確認、問い合わせ対応などはBPO活用を検討 など
いずれも、給付をよりスムーズに進めるための工夫として整理できる。重要なのは、「どこで人手を使い、どこを仕組み化するか」を事前に決めておくことであり、自庁の体制や事業規模に応じて、現実的な選択肢を組み合わせていく視点が求められる。
まとめ
重点支援地方交付金は、物価高騰の影響を受ける住民や事業者を支えるため、自治体が柔軟に活用できる実務性の高い制度である。令和7年度においても多様な支援が想定される中、こうした取り組みは令和8年度においても継続が見込まれており、重要なのは制度理解にとどまらず、事務負担やスケジュールを踏まえた現実的な事業設計である。先行事例や実務上のポイントを参考に、自庁に合った形で活用を検討したい。


















