新潟県佐渡市

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観光の一歩先へ!佐渡市が「JRE Workation Pass」活用で関係人口の創出へ。

観光・商工
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観光の一歩先へ!佐渡市が「JRE Workation Pass」活用で関係人口の創出へ。

全国の自治体が直面している“人口減少”という課題。関係人口の創出が対策の一つとされているが、実際に施策を打つとなると「何から始めたらいいのか」と悩んでしまうのが実情ではないだろうか。この問題に対し、佐渡市では「JR東日本」が提供する「JRE Workation Pass」を活用し、地域への誘客を後押しするユニークな支援策を導入。着実に成果を積み重ねているという。同市の担当者に詳細を聞いた。
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。

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新潟県 佐渡市 移住交流推進課
係長 仲川 公二郎(なかがわ こうじろう)さん

厳しい人口減に向けた対策と、そこに立ちはだかった“壁”。

佐渡市には名所旧跡や景勝地が多く、食や体験なども含め観光資源が豊富にある。令和6年7月には「佐渡島(さど)の金山」が世界文化遺産に登録され、観光客も多く訪れる同市だが、その反面、深刻な人口減に悩まされていると仲川さんは語る。 

史跡 佐渡金山
史跡 佐渡金山

「当市の人口は、令和7年11月時点で約4万7,000人でした。25年前の平成12年は約7万2,000人だったので、年間1,000人が減っている計算になります。厳しい状況です」。

人口減の理由の一つが、大学がないという点だ。大学進学を望む若い世代は島外に出ていき、その多くは卒業しても戻ってこない。そこで島内での仕事を増やし、企業の動きも活性化させ、新しい挑戦を行える環境があれば故郷に帰って働こうというモチベーションも高まるという仮説のもと、様々な取り組みを始めた。その一つがワーケーション誘致の推進だった。

島外からの民間企業の来訪が増えることで関係人口の増加につながり、将来的には移住にむすびつく可能性もある。産業の活性化は若者のUターンを促すきっかけにもなるはず。そうした展望のもと、“社会減をゼロにする”という目標を掲げ、コワーキングスペースの整備や企業への声かけを実施。しかし、ある時点で手詰まりになってきたことを感じたという。「企業から興味をもってもらえても、実際の来訪に結びつかないというケースが目立ち、そこに課題があると感じていました。また、来訪してくれた方々のリサーチも難しく、統計やアンケート調査ができないため、今後の改善につなげることも困難だったのです」。

こうした課題を克服する方法を模索していた中で出会ったのが、JR東日本が提供している「JRE Workation Pass(ジェイアールイーワーケーションパス)以下、ワーケーションパス」だった。

誘客の効果を最大化するため、他自治体との連携を決めた。

ワーケーションパスは、最大20%お得に利用できる列車と宿泊に加え、ワークスペース利用券がセットになったサービスだ。商品名には“ワーケーション”とあるが、実際には自治体が実施する様々な施策の中で活用できる。

例えば、移住や二拠点居住のお試し体験、スタートアップ企業の誘致、地域課題解決に向けた企業との連携など、活用シーンは幅広い

このサービスに着目した理由を、仲川さんは以下のように語る。

「コスト面のメリットはもちろん、窓口を一本化することで来訪者のデータを回収できると考えました。また、全国的に見ても新しい取り組みだったため、当市がワーケーションや企業誘致に力を入れていることを広く認知してもらえるのではというねらいもありました。それらに加え、JRが提供しているサービスである、という安心感もあったので、導入に向けてコマを進めたのです」。

同サービスでは、購入金額に応じて12%~20%のプレミアムが付与される3つのプランが用意されている。例えば、100万円のプランを購入すればプラス20%上乗せされた120万円分のクーポンが発行され、購入金額以上の施策展開が可能になる。自治体はこのクーポンを対象者に配布し、移動や宿泊のコスト負担を支援するという仕組みだ。

さらに、クーポンは購入から最大1年間有効であるため、特定のイベントやキャンペーンだけでなく、年間を通じた誘客や、再訪問を促す継続的な施策にも活用することができる

実際、観光目的での一時的な来訪を、関係人口の創出につなげるのは難しい。それに対し同パスは、地域と人との継続的な関係構築を後押しすることが目的。そのため、列車や宿泊も使える地域を限定できる仕様となっている。さらに、ユーザーが列車や宿泊を予約するシステムは既存の「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を使っているため、自治体で新たにシステム環境を準備する必要はなく、ユーザー対応窓口を用意すれば導入することが可能だ。

これらのメリットも踏まえ、導入効果を最大化するため、同市は新潟県の妙高市に声をかけた。もとよりワーケーションに力を入れていたこともあって、妙高市もこの提案を快諾。両市が連携してワーケーションパスを導入することが決まったという。「広域での相乗効果を目指しました。その上で利用者アンケートなどを実施して生の声を拾いつつ、施策のPDCAにつなげていこうと考えたのです」。

こうした経緯を経て、令和6年度に「佐渡妙高ワーケーションパス」の運用が開始された。

サービスを導入するだけでなく、独自の工夫も重ねる。

佐渡妙高ワーケーションパスでは、利用者が両市で宿泊する場合は1人当たり最大2万円、いずれかの市で連泊する場合は最大1万円の割引クーポンが発行される。また、単にワーケーションパスを活用するだけではなく、独自の工夫も施されている。

例えば、申し込みの対象を“2人以上の企業・社員同士・起業家同士によるワーケーションや企業研修で使う”場合のみとし、個人や家族での利用は対象外としている。「これは観光目的での来訪者と住み分けを行うためです。宿泊も2泊以上としており、それによってグループで長く佐渡・妙高を楽しんでいただき、チームビルディングやリトリートなどに役立ててもらった上で、地域との継続的な関係性を構築できるのではないかという期待を込めています」。

また、こうした新しい取り組みを始める際に気になるのが、庁内における業務負担の増加だが、同市ではDMOである一般社団法人 佐渡観光交流機構に委託することでその課題も解消している。「クーポンの管理や、利用者からの問い合わせ対応などの事務作業をDMOが担うことで、市職員は企画や広報活動、イベント展開などに注力できるようになります。導入前の仕組みづくりはわれわれが進めたので、その際に色々と知恵を絞りましたが、それ以降は大きな負担もなく、本取り組みのPRなどに集中できている状況です」。

※日常生活から一時的に離れ、心身を癒やし、自分と向き合うための時間や体験のこと

こうした体制のもと、初年度の運用は順調に進み、クーポンの利用も着実に広がった。来訪者の中からはリピーターも生まれているそうだ。「個人は対象外といった厳しめの条件を設定しましたが、当初の目的はクリアできたと自負しています」。

また、同市を訪れた企業と地場の事業者との交流をきっかけに、婚活イベントの実施など新たな事業も生まれているという。そうした企業からは「佐渡妙高ワーケーションパスのサポートがあって有り難かった」という声が届いているそうだ。

これらの手応えをもとに、両市は令和7年度も佐渡妙高ワーケーションパスの継続を決定。初年度は広報の面で課題を感じた部分もあったため、それを改善するとともに、“繁閑差の補完”と“集客力の底上げ”を図るという方針を定めた。「佐渡市は夏や秋の誘客力に強みがあり、妙高市は複数のスキー場があるので冬に強いという特徴があります。そうした点を互いに補完し合うことで、年間を通じた来訪者の平準化を図ろうというのがねらいです」。実際に、このねらいは奏功し、2年目の利用者も順調に増えているとのことだ。

来訪者の満足度も高めつつ、社会減ゼロのまちへ。

来訪者をコスト面でサポートし、より地域に来やすくしようとする佐渡市の取り組み。その新しい挑戦は順調に進んでいるが、仲川さんは「ワーケーションパスの利用を増やすことがゴールではない」と強調する。

まずは関係人口を増やすことが目標です。単に『佐渡に来てください』と働きかけても、すぐに来てくれる企業がそうそうある訳ではありません。そうした中、気軽に足を運んでもらえるようサポートするのがワーケーションパスいわば入口の役目を果たすものであり、そこから関係人口の増加を経て、最終的に二拠点居住や移住を検討する人が増えてくれればと考えています」。

また、現状では企業が主な対象だが、対象を広げて他分野でも活用できる可能性も感じているという。「多くの人に来訪してもらうには、様々な切り口があると思います。例えば、佐渡市で農業を主軸に据えたワーケーション事業を展開している事業者もいるので、そうした民間の力と組んでいけば、さらに大きな効果が期待できます。当市も含め、自治体の施策には、誘客コンテンツがあっても現地までの交通手段が含まれていないというケースが多いです。その点をワーケーションパスで穴埋めできるはずです」。こうした考え方は、地域に観光資源が少ないため関係人口の創出が難しいと感じている自治体にとっては参考になるものだろう。

“社会減をゼロにする”という目標を目指して走りだした同市の取り組み。仲川さんは「PR不足など、まだまだ改善すべき点は残っている」としつつも、今後の展望について次のように語ってくれた。「域外の企業・人との関係が深まるきっかけは、何よりも民×民、つまり地域の人々と来訪者が出会うことにある。そこから新しい挑戦も始まります。この流れを実現するには、泥臭く地道にやっていくことが大切です。今後も現状に満足することなく、JR東日本とも意見交換を重ね、域外と地域の架け橋となるような取り組みを進めていきたいと考えています」。

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