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給食無償化はいつから全国一律で始まる?制度概要・自治体の対応ポイントを解説

給食無償化はいつから全国一律で始まる?制度概要・自治体の対応ポイントを解説

給食無償化は、令和8年4月から公立小学校を対象に、国が全国一律で進める方針として示されている制度である。物価高騰が続く中、子育て世帯の家計負担軽減策として注目される一方、制度の内容や自治体の負担については分かりにくい点も多い。本記事では、給食無償化の制度概要や開始時期、メリット・デメリット、自治体実務のポイント、先行事例を整理する。

※掲載情報は公開日時点のものです。

給食無償化はいつから全国一律で始まる?

給食費の無償化は、令和8年4月から、公立小学校に通う全ての児童を対象に、保護者の所得に関係なく全国一律で実施されることが決定している。

令和7年12月19日、国は自由民主党・日本維新の会・公明党の3党における議論を踏まえ、給食費無償化に向けた制度設計に関する方針を通達した。児童1人当たり月額5,200円程度を支援し、今後は具体的な運用や自治体の事務対応について整理が進められる。

出典:総務省「三党合意に基づくいわゆる教育無償化に向けた対応について」

給食無償化とは|国が進める制度の概要

給食無償化とは、公立小学校の児童を対象に、保護者が負担してきた給食費を国の支援によって軽減し、子育て世帯の経済的負担を和らげることを目的とした制度である。あわせて、自治体間で生じてきた給食費負担の差を是正し、どこに住んでいても一定の教育環境を確保することをねらいとしている。

なお、本制度は、学校給食費を全て公費で賄う「完全な無償化」を前提とするものではない。自治体の財政や給食の質に配慮しつつ、保護者負担の抜本的な軽減を図る取り組みである点が制度の前提となる。

出典:総務省「三党合意に基づくいわゆる教育無償化に向けた対応について」

無償化の対象と範囲

給食費無償化の支援対象は、給食を実施している公立小学校の児童であり、以下の学校種を含む。

  • 公立小学校
  • 義務教育学校(前期課程)
  • 特別支援学校(小学部)

対象となる児童は、保護者の所得にかかわらず一律で支援される。ただし、生活保護の教育扶助や要保護児童生徒、特別支援教育就学奨励費の対象となっている児童については、現行制度による支援が優先される。

支援額はいくら?国が示す給食費の基準

給食費無償化における支援額は、完全給食の場合、児童1人当たり月額5,200円が基準とされている。この金額は、令和5年の実態調査における平均給食費に、近年の物価動向を加味して設定されたものだ。

なお、給食費が支援の基準額を超える自治体については、差額を保護者が負担する場合もある。国は全国一律の基準額を示しつつ、今後も取り組みの実施状況や物価動向を踏まえ、適切な額を設定していく方針としている。

財源はどうなる?自治体の負担について

給食費無償化は、学校給食法を改正せず、国の予算補助によって実施される。自治体に対しては、「給食費負担軽減交付金(仮称)」が創設され、給食実施校の在籍児童数に基準額を乗じた食材費相当額が支援対象となる。

自治体負担の考え方は、次のとおり整理されている。

  • 国・都道府県:必要経費を折半
  • 市町村:地方交付税で手当てされ、実質的な負担は生じにくい

一方で、学校給食の運営に要する人件費(県費負担教職員を除く)や施設修繕費、献立作成・食材調達費は、引き続き市町村が負担する。

給食無償化によるメリット

国が示す給食費無償化は、保護者の経済的負担の軽減に加え、自治体運営の面でも多くのメリットがある。制度を検討・運用する立場としてだけでなく、子育て世帯の一員としても実感しやすい点を含め、自治体の視点を軸に主なメリットを整理する。

給食費徴収・滞納対応に関する事務負担の軽減

給食費無償化により、納付管理や督促、保護者対応といった給食費徴収に関する業務が削減され、教職員や自治体職員が本来注力すべき業務に時間を割きやすくなる点は大きなメリットだ。あわせて、給食費を巡る未納や負担感に起因するトラブルが減少し、保護者対応の心理的負担が軽減される点も、現場にとって見逃せない効果といえる。

物価高騰下における分かりやすい家計支援策

給食費無償化は、物価高騰が続く中で、子育て世帯の家計負担を直接的に軽減する施策である。月額の負担軽減額が明確なため、住民にとって支援の効果を実感しやすい点も特徴だ。

また、所得制限を設けない仕組みにより、支援対象の線引きに伴う事務負担や住民間の不公平感が生じにくい。給食費の確実な軽減は、特に経済的に余裕のない世帯の家計を下支えし、子どもの貧困対策としての効果も期待される。

全ての児童に給食を安定的に提供できる環境づくり

給食費無償化は、経済状況に左右されず、全ての児童が学校給食を通じた食育を受けられる環境を整える点でも意義がある。学校給食には、食事・運動・休養の調和のとれた生活習慣を身につけることを目的とした教育的役割があり、無償化はその機会を等しく確保する施策とも位置づけられる。

給食無償化で考えられるデメリットと課題

給食無償化には、保護者負担の軽減や事務負担の削減といったメリットがある一方で、制度運用にあたって留意すべき点もある。ここでは、自治体の実務において想定される主なデメリットや課題について整理する。

財源の持続性と将来的な制度変更への懸念

給食費無償化は、制度として財源措置が講じられており、現時点では多くの自治体で新たな実質負担が生じにくい設計となっている。一方で、制度が恒久的に維持されるかどうかや、将来的に支援水準や対象が見直される可能性については、引き続き注視が必要だ。

自治体としては、現行制度を前提に運用を進めつつも、国の方針変更や財政環境の変化があった場合の影響を想定しておくことが求められる。中長期的な視点で制度を捉える姿勢が欠かせない。

給食の質の低下につながる可能性

給食費無償化では、国が示す基準額を超える部分については支援対象外となる。そのため、物価上昇が続く中では、給食内容の工夫や、差額をどのように扱うかについて、自治体ごとの判断が求められる。

特に、地産地消の推進や栄養バランスに配慮した献立を維持するためには、食材選定や献立内容に工夫が求められる。無償化が「コスト削減」と受け取られ、給食の質が低下するとの懸念を招かないよう、自治体としては、給食の質を確保する姿勢を明確に示していくことが重要だ。

保護者負担が残るケースへの対応

給食費無償化といっても、全てのケースで保護者負担が完全になくなるとは限らない。実際の給食費が国の基準額を上まわる場合には、その差額を保護者が負担するケースも想定される。

そのため、「無償化=完全無料」という認識が広がると、制度内容とのギャップから問い合わせや不満が生じる可能性がある。自治体としては、制度の仕組みや負担が生じ得るケースについて、丁寧な情報提供が、住民理解を得るうえで欠かせない。

独自の制度で給食無償化を実施している自治体の事例

給食無償化は国が全国一律で進める制度であるが、これに先行、またはあわせて、独自の判断で給食費無償化や負担軽減に取り組んできた自治体も存在する。ここでは、国の制度とは別に、自治体独自の施策として給食無償化を実施している事例を紹介する。

福島県福島市|国の無償化方針と市独自施策を組み合わせた小・中学校給食費無償化

福島市では、市独自の施策として、令和2年4月から小・中学校の給食費のおよそ45%を助成し、給食費の負担軽減に向けた取り組みを進めてきた。食品価格が改定される中でも、保護者負担を増やさず、栄養バランスの取れた「福島型給食」の質と量を確保することを目的とした取り組みである。

これらの取り組みに加え、国が示す給食費無償化の方針とあわせて、 令和8年4月から市内の小・中学校の給食費を無償化する方針を示した。国の支援と市独自施策を組み合わせ、無償化と同時に給食の質を維持・向上させる姿勢を示している点が特徴だ。

出典:福島市「福島型給食推進事業(給食費負担軽減)」

青森県|都道府県主導で全小・中学校を対象に実現した全国初の給食費無償化

青森県では、令和6年10月から、県内全ての公立小・中学校において給食費の無償化が実施されている。都道府県単位で全小・中学校を対象に給食費無償化を行うのは全国で初めての取り組みとされる。

同県では、少子化対策・子育て支援の一環として「青森県学校給食費無償化等子育て支援市町村交付金」を創設し、県内40市町村に交付することで給食費無償化を実現した。 あわせて、0歳から15歳までの医療費無償化も全市町村で実施されており、給食費支援を単独の施策とせず、子育て支援全体として位置づけている点も特徴だ。

出典:青森県「『青森県学校給食費無償化等子育て支援市町村交付金』の活用等による子育て費用の無償化事業の実施状況について」

【FAQ】国が示す給食無償化に関する質問

Q. 給食無償化は国の制度なのか?

A. 令和8年4月から実施される給食無償化は、国が全国一律で進める方針として示している制度である。自治体は、この国の制度にもとづき実施主体として対応する。一方で、国の制度とは別に、自治体が独自の判断や財源により、対象範囲の拡大や上乗せ支援などを行うケースもある。

Q. 全国の自治体・学校の給食費は完全無料となる?

A. 給食費が国が示す支援の基準額を超える自治体では、差額を保護者が負担する場合もある。そのため、給食無償化は「完全に無料になる」ことを意味するものではない。

まとめ

本記事では、国が示す給食無償化の制度概要や開始時期、メリット・デメリット、自治体の実務に関わるポイントについて整理した。給食無償化は、令和8年4月から公立小学校を対象に全国一律で実施される方針であり、子育て世帯の家計負担軽減を目的とした施策である。

一方で、給食費が国の支援基準額を超える場合には差額負担が生じる可能性があるなど、完全な無償化ではない点には留意が必要だ。制度の趣旨や仕組みを正確に理解した上で、自治体としては給食の質を維持しつつ、住民への丁寧な説明と円滑な運用を進めることが求められる。