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【セミナーレポート】はじめる・深める!地域社会DXセミナー ~AI活用のポイントと実践事例を紹介!

デジタル技術の進化は速く、地域社会を取り巻く課題も年々複雑化している。「何から始めればいいのか」「予算や人材をどう確保するか」……そんな悩みを抱える自治体職員や地域企業に向け、総務省主催の「はじめる・深める!地域社会DXセミナー」が開催された。本記事では、生成AIの最新トレンド、現場担当者が語るリアルな体験談、そして令和8年度に向けた新たな支援策についてレポートする。
[主催] 総務省
[PR]ボストン コンサルティング グループ
※掲載情報は公開日時点のものです。
概要
■タイトル:はじめる・深める!地域社会DXセミナー
■実施日:2026年1月22日(木)
■開催形式:オンライン(Zoom)
■プログラム:
▼デジタル技術の最前線
▼地域社会DX推進パッケージ事業の説明
▼本事業の体験談 (1)福岡県田川市
(2)高岡ケーブルネットワーク
▼次年度事業の概要
デジタル技術の最前線
<ナビゲーター>
ボストン コンサルティング グループ プロジェクトリーダー 伊藤 玲(いとう れい)氏
AIは「チャット」から「エージェント」へ

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セミナーの冒頭では、ボストン コンサルティング グループ(BCG)の伊藤氏がデジタル技術の現在地と未来について解説。これまで話題の中心だった対話型AI(チャットボットなど)は、あくまで人間が指示を出して答えを得るものだったが、伊藤氏は「2026年のフォーカスはAIエージェントになる」と予測。これは、AIが自ら考え、ツールを使いこなし、人間に代わって自律的に業務を遂行するレベルの技術であるという。
また、「AIは専門家のものではない」として、人口減少やインフラ老朽化など、課題が山積する地域社会こそがAI活用でチャンスをつかめると強調した。技術ありきの発想ではなく、地域の切実な「困りごと」を起点にすることが、DX成功の第一歩であると説明した。
地域社会DX推進パッケージ事業の説明

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続いて伊藤氏は、令和7年度の地域社会DX推進パッケージ事業について説明。DXのフェーズに合わせて「計画策定」「実証事業」「補助事業」の支援メニューを用意しており、各フェーズで発生しがちなつまずき(ニーズの読み違え、費用対効果の不透明さなど)を回避できるよう、一気通貫で伴走する点が特徴だと解説した。
本事業の体験談(1)福岡県田川市
<登壇者>
福岡県田川市 総務部 経営企画課 DX推進室 室長 河村 美和(かわむら みわ)氏

福岡県田川市は「月が出た出た」で知られる「炭坑節」発祥の地。コロナ禍で広がった閉塞感を打破するため、デジタル技術の活用を模索していた。総務省の支援事業を活用し、知識ゼロ・予算ゼロの状態からいかにして「世界とつながる体育館」を実現したのか、河村氏がその舞台裏を解説する。
知識ゼロ、予算ゼロ。まず「動いてみる」ことで壁を突破。

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実は当初、大きな勘違いをしていました。総務省の支援事業に採択されれば、計画作りからシステムの実装まで、国が全部やってくれると思い込んでいたのです。しかし、支援はあくまで「計画策定」まででした。専門家の助けを借りて立派な計画書は完成しましたが、それを実現する予算は市にはありませんでした。
印刷した大量の計画書を紙袋に詰め込んで、東京の企業へ相談に歩きまわる日々でした。市長の後押しもあり、諦めずに相談を続けた結果、パラリンピックのホストタウン活動で縁のあった企業に協力を仰ぎ、「ローカル5Gを活用した障害者スポーツのリモートコーチング」の実施体制を構築することに成功。費用の全額が出る国の実証事業に採択され、なんとか壁を突破しました。
苦労の末に完成したシステムで、遠隔地にいるコーチからリアルタイムで指導を受けられるようになりました。南アフリカのコーチからの遠隔指導も実現し、この成功体験は「田川市でも最先端のことができる」という自信を職員に与え、今では「うちの業務でもAIを使えないか」と、組織全体が前向きに動き出しています。
本事業の体験談(2)高岡ケーブルネットワーク
<登壇者>
高岡ケーブルネットワーク株式会社 事業統括本部 プラットフォーム事業部 技術課 エンジニア 表野 篤雄(おもての あつお)氏

富山県高岡市のケーブルテレビ局である同社は、人口減少や「テレビ離れ」により、従来の「放送収入」に頼るビジネスモデルに限界を感じていた。地域課題を解決するプラットフォーム企業に生まれ変わらなければならないという強い危機感から、地域課題解決型企業への転換を図った。
プロダクトアウトの提案をやめたら、真の課題が見えた。

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最初は失敗の連続でした。「Wi-Fi HaLowという新しい無線技術がすごいんです」と市役所に提案に行っても、反応は芳しくありません。私たちは相手の困りごとを考えず、技術を売り込んでいただけだったのです。
そこで、専門家の助言を受けてアプローチを変えました。「現場で本当に困っていることは何ですか?」と、徹底的にヒアリングしてまわったのです。
そこで土木維持課から出てきたのが、「大雨のたびにアンダーパス(立体交差)の冠水を見に行くのが危険」という切実な悲鳴でした。その言葉を聞いた瞬間、私たちの技術と現場のニーズが合致しました。自社回線を使えば低コストで遠隔監視ができ、職員の方を危険から守れます。
大切なのは、単なる業者ではなく「地元のインフラ企業として永続的に保守に携わる」という覚悟を示すことでした。それが信頼につながり、今では予算も含めて相談しあえる共創関係を築けています。
次年度事業の概要
<登壇者>
総務省 情報流通行政局 地域通信振興課 デジタル経済推進室 係長 福田 敬(ふくだ けい)氏

続いて福田氏が登壇し、令和8年度の総務省「地域社会DX推進パッケージ事業」について発表した。
先進的通信システムの実証が可能に。

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本事業は、デジタル技術を活用して、人口減少や少子高齢化、産業空洞化といった地域の様々な課題解決に向けたデジタル変革を総合的に支援するものです。
支援内容は「(1)デジタル人材・体制の確保支援」「(2)先進的ソリューションの実用化支援(実証)」「(3)地域のデジタル基盤の整備支援(補助)」の3つのフェーズで構成され、自治体が迷うことなくステップアップできるトータルなサポート体制を提供しています。
令和8年度の特徴として、先進無線実証事業が「先進的通信システム活用タイプ」として対象となる通信技術が拡充される点が挙げられます。これにより、衛星通信、光電融合技術といった新しい通信技術を活用した実証が可能となり、これまで通信困難だった地域での課題解決が期待されます。
総務省は本事業を通じて、自治体等が地域特有の課題に対応しやすくなるよう支援体制を強化しており、地域社会DXに取り組みたいと思ったときに、真っ先に思い出して活用をご検討いただきたいと考えています。公募は令和8年2月下旬頃から開始する予定ですので、詳細は総務省HPをご参照ください。















