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学童保育の費用はいくら?公立・民間の料金相場と選び方のコツを紹介

共働き家庭にとって、子どもが小学校に上がった後の放課後の過ごし方は大きな課題である。保育園とは環境が大きく変わり、「小1の壁」と呼ばれるように、働き方の見直しを迫られるケースも少なくない。こうした課題への対応策として注目されているのが、学童保育である。本記事では、学童保育の基本的な役割を整理した上で、種類や料金、選び方のポイントを分かりやすく解説する。
※掲載情報は公開日時点のものです。
学童保育とは?基本的な役割を解説

学童保育とは、保護者が仕事などの理由で日中に家庭にいない小学生に対し、放課後や夏休みなどの長期休暇中に、遊びや生活の場を提供する事業である。子どもが安全に、安心して過ごせる居場所を確保し、健全な育成を支援することを目的としている。
「放課後児童クラブ」が正式名称
一般に「学童保育」や「学童」と呼ばれているが、児童福祉法にもとづく正式名称は「放課後児童健全育成事業」であり、現場では「放課後児童クラブ」という名称が用いられることが多い。自治体によっては「留守家庭児童会」や「児童育成クラブ」など、異なる呼称が使われている場合もある。
学童保育の目的と役割
学童保育の最も重要な役割は、子どもに安全で安心な生活の場を提供することである。保護者の迎えまでの時間、指導員の見守りのもとで宿題に取り組んだり、友だちと遊んだりして過ごす。異年齢の子ども同士が関わることで、社会性や自主性を育む効果も期待されている。あわせて、共働き家庭やひとり親家庭にとって、仕事と子育ての両立を支える社会的インフラとしての役割も担っている。
「放課後子ども教室」との違い
学童保育と混同されやすい取り組みに「放課後子ども教室」がある。学童保育が、保護者の就労などを理由に保育が必要な児童を対象とした「生活の場」であるのに対し、放課後子ども教室は、全ての小学生を対象とした「活動の場」である点が大きな違いである。地域住民の協力を得ながら、学習支援やスポーツ、文化活動などの体験機会を提供することを目的としている。
学童保育にはどんな種類がある?
学童保育は、運営主体によって大きく「公立学童」と「民間学童」の2つに分けられる。それぞれの特徴を理解したうえで、家庭のニーズに合った施設を選ぶことが重要である。
自治体が運営する「公立学童」
公立学童は、市区町村などの自治体が運営する学童保育である。学校の空き教室や児童館、公民館などを活用して開設されるケースが多く、利用料金が比較的安い点が特徴だ。主に、保護者の就労などにより家庭での保育が困難な児童を対象としている。
企業などが運営する「民間学童」
民間学童は、株式会社やNPO法人、社会福祉法人などが運営する学童保育である。公立学童と比べると利用料金は高めだが、夜遅くまでの延長保育や送迎サービス、学習塾や習い事など、付加価値の高いサービスを提供している施設が多い。保護者の就労状況に関わらず利用できる場合がある点も特徴の一つである。
公立と民間の違いを比較
公立学童と民間学童では、運営主体や料金、サービス内容などに違いがある。主な違いを、以下の表にまとめた。
項目 | 公立学童 | 民間学童 |
運営主体 | 市区町村など | 株式会社、NPO法人など |
対象児童 | 主に保護者の就労などにより保育が必要な児童 | 小学生なら誰でも利用可能な場合が多い |
料金 | 安価(月額3,000円~1万円程度) | 高価(月額3万円~5万円以上の場合も) ※利用日数により異なる |
サービス | 基本的な預かりが中心 | 延長保育、送迎、学習支援、習い事など多様 |
場所 | 学校内、児童館、公民館など | 独自の施設、駅の近くなど様々 |
出典:こども家庭庁「令和6年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」
学童保育の料金はいくら?

学童保育を利用するうえで、気になるのが料金である。公立と民間では料金体系に大きな違いがあるため、事前に確認しておくことが重要だ。
公立学童の料金相場
公立学童の月額利用料は、4,000円以上6,000円未満の価格帯が最も多い。自治体によって差はあるものの、比較的低額に設定されているケースが一般的である。なお、利用料とは別に、おやつ代や教材費などが必要になる場合もある。料金が抑えられている分、希望者が多く、待機児童が発生しやすい傾向にある。
民間学童の料金相場
民間学童の料金は施設ごとに幅があるが、月額3万円から5万円以上かかるケースが一般的である。基本料金に加え、延長保育料や送迎サービス料、各種プログラムの参加費などが別途発生することも多い。料金は高めである一方、サービス内容が充実している点が特徴だ。
料金以外にかかる費用
学童保育では、月額利用料のほかに、次のような費用が発生する場合がある。
- おやつ代
- 教材費
- イベント参加費
- 延長保育料
- 送迎サービス料
これらは施設ごとに取り扱いが異なるため、事前に確認しておくことが望ましい。
利用料の減免制度について
自治体によっては、所得状況に応じて学童保育の利用料が減額または免除される制度を設けている場合がある。生活保護世帯や住民税非課税世帯などが対象となるケースが多い。制度の有無や条件は自治体ごとに異なるため、居住する市区町村の公式サイトなどで確認するとよいだろう。
出典:こども家庭庁「令和6年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」
学童保育のメリット
学童保育を利用することには、保護者と子どもの双方にとって多くのメリットがある。
保護者が安心して働ける環境が整う
子どもが安全な場所で過ごしているという安心感は、保護者が仕事に集中するための大きな支えとなる。保育園と同様に、預け先が確保されることで働き方の選択肢が広がり、キャリアを継続しやすくなる。
子どもの安全な居場所が確保できる
放課後を一人で過ごす、いわゆる「カギっ子」の状態には、事故や犯罪に巻き込まれるリスクが伴う。学童保育では、指導員の見守りのもとで過ごせるため、こうしたリスクを抑えることができる。
異年齢の子どもたちとの交流で社会性が育つ
学童保育では、同学年だけでなく、年上や年下の子どもと関わる機会が多い。様々な年齢の子どもと遊んだり協力したりする中で、自然と社会性や協調性が育まれる。
規則正しい生活習慣が身につく
学童保育では、宿題やおやつ、自由遊びなど、一定の生活リズムが設けられている。集団生活の中でルールを守り、規則正しく過ごす習慣が身につく点もメリットの一つである。
学童保育のデメリット
多くのメリットがある一方で、学童保育にはいくつかのデメリットも存在する。
待機児童問題で希望の施設に入れない場合がある
とくに都市部では、学童保育の需要に対して施設数が十分でなく、待機児童が発生している。希望する学童保育を利用できない場合、ほかの預け先を探したり、働き方を調整したりする必要が生じることもある。
子どもが施設に馴染めない可能性がある
集団生活が苦手な子どもや、特定の友だちと過ごすことを好む子どもにとっては、学童保育の環境が負担になる場合がある。施設の雰囲気や指導員との相性が合わず、通所を嫌がってしまうケースも見られる。
費用負担が発生する
公立学童であっても、利用料やおやつ代などの費用は発生する。民間学童を利用する場合は、さらに高額になることも少なくない。家計への負担を踏まえ、無理のない範囲で利用できる施設を選ぶことが重要である。
後悔しない学童保育の選び方

数ある学童保育の中から、子どもと家庭に合った施設を選ぶためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切である。
施設の場所と安全性を確認する
自宅や学校からの距離、通所ルートの安全性は必ず確認したいポイントである。とくに低学年のうちは、一人で通うことへの配慮が欠かせない。あわせて、施設の防災対策や防犯対策がどのように整えられているかも確認しておくと安心である。
開所時間と延長保育の有無を調べる
保護者の勤務時間に対応した開所時間であるかを確認する必要がある。残業などで帰宅が遅くなる可能性がある場合は、延長保育の有無や利用可能な時間、追加料金の有無を事前に把握しておくとよい。
施設の雰囲気や指導員の方針を確かめる
子どもたちがどのように過ごしているか、指導員がどのように関わっているかといった施設の雰囲気は、利用後の満足度に大きく影響する。見学などを活用し、実際の様子を自分の目で確かめることが重要である。
費用が予算に合っているか検討する
月額利用料だけでなく、延長保育料やおやつ代なども含め、年間でどの程度の費用がかかるのかを把握しておきたい。家計への負担を考慮し、無理のない範囲で利用できるかを検討することが大切である。
見学や体験会に参加する
可能であれば、親子で見学や体験会に参加することをオススメする。子ども自身が施設の雰囲気を感じ、「ここなら通えそうだ」と思えるかどうかは、施設選びにおいて非常に重要な判断材料となる。
学童保育の申し込み方法と手続きの流れ
学童保育の利用を希望する場合は、定められた期間内に申し込み手続きを行う必要がある。自治体や施設によって詳細は異なるが、ここでは一般的な流れを紹介する。
申し込み時期とスケジュール
新年度(4月)からの入所を希望する場合、前年の秋から冬にかけて、具体的には10月〜1月頃に申し込み受付が行われるのが一般的である。募集要項は自治体の広報紙や公式サイトなどで告知されるため、早めに確認しておきたい。
必要書類と提出先
申し込み時には、入所申込書のほか、保護者の就労証明書や家庭状況を確認するための書類などが必要となる。提出先は、公立学童の場合は市区町村の担当窓口、民間学童の場合は各施設が窓口となるケースが多い。
入所選考の基準
希望者が定員を上まわる場合は、入所にあたって選考が行われる。選考基準は自治体や施設ごとに異なるが、一般的には保護者の就労時間や家庭の状況(ひとり親家庭など)、子どもの学年などが考慮される。多くの自治体では、低学年の児童が優先される傾向にある。
まとめ
学童保育は、共働き家庭などが安心して子育てと仕事を両立するために重要な役割を担っている。公立学童と民間学童では、料金やサービス内容などに違いがあるため、家庭のライフスタイルや子どもの性格に合った施設を選ぶことが大切である。今回紹介したポイントを参考に情報収集と比較検討を進め、家庭にとって無理のない学童保育を見つけてほしい。












