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【2026年3月】自治体システム標準化の移行期限と進捗状況|事例から見る進め方のポイント

情報政策
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【2026年3月】自治体システム標準化の移行期限と進捗状況|事例から見る進め方のポイント

自治体システム標準化とは、住民記録や税、福祉などの基幹業務システムを国が定める標準仕様へ統一し、ガバメントクラウド上で共通化する取り組みである。原則として令和7年度末(2026年3月)が移行期限とされてきた。

期限を迎えるいま、移行が完了した団体がある一方で、特定移行支援システムとして令和8年度以降へ移行が見込まれる団体も少なくない。本記事では、最新の進捗状況を整理するとともに、先行事例から、自治体システム標準化を進めるヒントを読み解く。

※掲載情報は公開日時点のものです。

令和7年度末(2026年3月)移行期限|直前時点の最新進捗

令和7年度末を原則期限とする自治体システム標準化(正式名称:自治体情報システム標準化)は、期限直前まで移行作業が続いている。

デジタル庁が令和8年2月に公表した資料によれば、標準化対象34,592システムのうち、令和7年12月末時点で8,956システム(25.9%)が「特定移行支援システム」に該当する見込みとされている。これを1つでも有する団体は、1,788団体中935団体(52.3%)にのぼる。

一方、令和8年1月末時点で標準準拠システムへの移行を完了したのは13,283システム(38.4%)である(総務省標準化PMOツールより)。

移行作業の本格化に伴い、想定以上のSEリソースが必要となったことなどから、事業者によるスケジュールの大幅な見直しが行われたとされる。

出典:デジタル庁「特定移行支援システムの該当見込み(概要)(令和7年(2025年)12月末時点)」

例外措置「特定移行支援システム」の概要と対象要件

原則は令和7年度末までの移行完了であるが、やむを得ず令和8年度(2026年度)以降への移行となるシステムについては、「特定移行支援システム」として取り扱う仕組みが設けられている。

対象となるのは、たとえば次のようなケースである。

  • 現行システムがメインフレームで運用されている場。
  • 現行システムがパッケージシステムではない個別開発システムで運用されている場合。
  • 現行事業者が標準準拠システムを開発しないとしており、かつ代替調達の見込みが立たない場合。
  • 事業者のリソースひっ迫により開発または移行作業などが遅延している場合。

該当する場合、デジタル庁、総務省および制度所管省庁が、自治体から把握した状況や移行スケジュールを踏まえ、標準化基準を定める主務省令により移行完了期限を設定する。おおむね5年以内の移行を想定し、必要な支援措置が講じられる。

実務上は、自団体の現行システムがこれらの要件に該当するかを整理し、移行スケジュールの見直しを含めた工程の再構築を検討することが求められている。

出典:デジタル庁「標準準拠システムへの移行が令和8年度(2026年度)以降とならざるを得ないことが具体化した場合の措置」

一部機能に関する経過措置の整理

標準準拠システムへの移行を完了させることを前提に、一部機能のみ段階的な対応を認める経過措置も設けられている。

出典:デジタル庁「地方公共団体情報システム標準化基本方針における一部機能の経過措置の概要」

これは、システム全体の移行期限を延長する「特定移行支援システム」とは異なり、機能単位での猶予である。対象は、標準化基準のデータ要件などに適合し、制度所管省庁が必要と認めた機能に限られ、遅くとも令和10年度末までに基準へ適合する必要がある。

両者の違いは次のとおりである。

項目
特定移行支援システム
一部機能の経過措置
対象範囲
システム全体
システム内の一部
前提条件
期限内移行が困難
標準準拠システムへの移行は完了している
最終期限
主務省令により個別設定(おおむね5年以内を想定)
遅くとも令和10年度末までに機能標準化基準へ適合
想定ケース
メインフレーム、個別開発、事業者リソース不足など
一部機能のみ標準仕様への対応が未完了
制度の性質
移行期限の延長
機能単位での段階的適合

成功事例に学ぶ|自治体システム標準化を進めた自治体のヒント

先行して標準化とガバメントクラウド移行を完了した自治体では、どのような体制づくりや工夫があったのか。具体的な事例から、自治体システム標準化の進め方のポイントを見ていく。

埼玉県美里町|共同利用型モデルによる先行着手

出典:株式会社TKC「お客様の声 埼玉県美里町様」

美里町は、「埼玉県町村情報システム共同化推進協議会」に参加し、共同利用の枠組みの中で、標準化およびガバメントクラウド移行に先行して取り組んだ。令和3年にはデジタル庁の「ガバメントクラウド先行事業」に採択され、埼玉県川島町とともに移行検証を実施。令和4年10月に現行17業務をガバメントクラウドへ移行し、その後、標準準拠システムへの切り替えを完了している。

【推進プロセス】

美里町の事例から学べるポイント

  • 専任組織を設けなくても推進できるケースがある。ただし“推進役”は明確にする。
  • 技術面の対応と並行して、職員理解の醸成が重要になる。
  • 差異分析では“なくなる機能”から確認する。
  • 早期着手は課題の早期発見や円滑な解決につながる。

 出典:株式会社TKC「お客様の声 埼玉県美里町様」
※インタビュー内容をもとに編集室で整理

栃木県真岡市|主体性を重視した全庁横断型プロジェクト

出典:株式会社TKC「お客様の声 栃木県真岡市様」

真岡市は、デジタル戦略課を統括部門とし、全庁横断型のプロジェクト体制で標準化およびガバメントクラウド移行に取り組んだ団体である。令和4年12月23日、ガバメントクラウド上で標準仕様に対応した18業務システムが稼働した。移行期間は約2年間に及ぶ。

先行移行にあたっては、石坂 真一元市長の判断のもと、幹部職員による全庁合意を経て推進が決定された。対象業務が広範に及ぶことから、各課が主体性をもって取り組む体制を重視したという。

【推進プロセス】

真岡市の事例から学べるポイント

  • 市長の決断と幹部職員による合意形成を経て推進した。
  • デジタル戦略課が各課と同じ目線で取り組み、主体性を引き出す。
  • 検証専用環境を整備し、職員が事前に操作確認できる機会を確保する。
  • デジタル改革共創プラットフォームを活用し、国や他団体と情報共有する。
  • 移行後も職員の声を積極的に吸い上げる必要がある。

出典:株式会社TKC「お客様の声 栃木県真岡市様」
※インタビュー内容をもとに編集室で整理

東京都墨田区|期限を迎える年度内に移行を完了

墨田区は令和7年9月に標準準拠システムを本稼働させ、標準化対象20業務のうち14業務を移行している。令和3年から庁内プロジェクトを発足し、業務担当課も参加する形で準備を進めてきたと公表されている。

期限を迎える年度内に移行を完了した団体の一例である。

  【推進プロセス】

墨田区の事例から学べるポイント

  • 早期に庁内プロジェクトを立ち上げ、標準化を前提に準備を進めている。
  • 統括部門が中心となり、進捗管理を行っている。
  • 業務担当課を巻き込んだ体制を構築している。

出典:株式会社ジーシーシー「東京都墨田区様の自治体システム標準化移行達成のお知らせ」
※インタビュー内容をもとに編集室で整理

自治体システム標準化の期限内移行が「間に合わない」と言われる理由

標準化によりコスト構造の適正化や相互運用性の向上が期待されている一方で、期限内の移行が難しいと見込まれる自治体も少なくない。背景には、制度改正や標準仕様の改版への対応、事業者側のリソース逼迫、自治体内部の体制不足など、複数の要因が重なっている。

ベンダー側のリソース逼迫

移行の遅れの要因として挙げられているのが、ベンダー側のリソース不足である。全国約1,700の自治体が20業務を同時期に標準仕様へ移行するという大規模プロジェクトとなっており、対応可能な事業者やエンジニアに案件が集中しているとの指摘がある。

その結果、要件定義・開発・テストを並行して進める体制となり、工程管理やテスト期間の確保が課題となっている。報道では、一部事業者が令和7年度末までの移行完了が困難である旨を自治体に通知した事例も伝えられている。

標準仕様改版・制度改正への対応

標準仕様書の改版も、移行スケジュールに影響を与え得る要素である。デジタル庁や各省庁が策定する標準仕様書は、制度改正に応じて改変が行われる。直近では、子ども・子育て支援政策などもその一つだ。

標準仕様書が改版されるたびに、ベンダー側では設計やプログラムの見直しが必要となり、自治体側でも要件整理の再確認が求められる。特に、先行して開発に着手していた自治体ほど、後からの改版による手戻りの影響を受けやすく、工程計画の見直しにつながるケースもある。

自治体側の要員不足とプロジェクトマネジメント体制

自治体側の体制も、移行の進み具合に少なからず影響している。中小規模の自治体では、情報システム部門の人員が限られ、いわゆる「ひとり情シス」に近い体制で運用しているケースも珍しくない。

標準化対応に加え、ガバメントクラウドへの移行、そのほかのDX推進、日常のシステム運用保守を同時に担う必要があり、担当部門の負担は大きい。

一方、大規模自治体であっても、20業務に及ぶシステム刷新を横断的に管理するPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)機能の整備が十分とはいえない場合がある。業務主管課との調整や意思決定に時間を要すれば、結果として工程全体に影響が出る。

現行システムの複雑さ・ローカル要件

長年の運用で積み重ねてきた独自のカスタマイズや、「外字」などのローカル要件は、標準仕様への移行を進める上で無視できないポイントとなる。現行データを標準仕様のフォーマットへ変換する作業では、データクレンジングやマッピングに想定以上の時間と労力を要することもある。

また、標準仕様では整理できない地域独自の施策や広域連携の仕組みをどのように扱うかも検討が必要となる。代替手段の検討や業務運用の見直しが発生すれば、その分だけ工程に余裕が求められる。

調達・ベンダー選定プロセスの制約

移行期限が迫る中、入札を実施しても応札者が限られる、あるいは不調となる事例も見られる。背景には、対応可能なベンダーのリソースが限られていることがある。

想定どおりに契約を締結できなければ、その後の開発・テスト工程に影響が及ぶ。調達手続や契約交渉の段階から、実行可能なスケジュールを慎重に見極める必要がある。

自治体システム標準化とは?制度の全体像と対象20業務

自治体システム標準化とは、住民記録・税・福祉など20の基幹業務システムを、国が定める標準仕様へ統一し、ガバメントクラウド上で共通化する政策である。根拠となるのは「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」であり、原則として令和7年度末までの移行が求められている。

その特徴は、ガバメントクラウドの活用を前提に、自治体間で共通化された標準準拠システムへ移行する点にある。

出典:e-Gov「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」

背景と目的(なぜ標準化が進められているのか)

これまで自治体は、地域事情や業務フローに応じて個別に情報システムを整備してきた。その結果、仕様の複雑化やベンダーロックインが生じ、システムの維持管理費の増大や改修時の負担が課題となっている。

また、自治体ごとに仕様やデータ形式が異なることで、災害時や転出入時のデータ連携に支障が生じる場面もあった。こうした状況を踏まえ、国はガバメントクラウドを前提とした標準準拠システムへの移行を進めている。

標準化により、コスト構造の適正化やベンダーロックインの緩和、自治体間の相互運用性向上が期待されている。制度の狙いは、システムの効率化だけでなく、全国で共通基盤を整備することで持続可能な自治体運営を実現を目指す点にある。

標準化の対象となる20業務一覧

標準化の対象は、次の20業務である。これらは「地方公共団体情報システム標準化基本方針」にもとづき指定されている。

  • 児童手当
  • 子ども・子育て支援
  • 住民基本台帳
  • 戸籍の附票
  • 印鑑登録
  • 選挙人名簿管理
  • 固定資産税
  • 個人住民税
  • 法人住民税
  • 軽自動車税
  • 戸籍
  • 就学
  • 健康管理
  • 児童扶養手当
  • 生活保護
  • 障害者福祉
  • 介護保険
  • 国民健康保険
  • 後期高齢者医療
  • 国民年金

これらは住民系、税系、福祉系などに大別される。特に税・保険関連業務では、既存システムとの整合が実務上の論点となりやすい。

出典:デジタル庁「標準化対象事務と標準仕様策定」

移行期限直前のいま、改めて整理しておきたい進め方のポイント

令和7年度末の期限を迎えるなか、特定移行支援システムとして移行が令和8年度以降となる団体も一定数見込まれている。猶予期間は設けられるものの、移行対応そのものが不要になるわけではない。

先行事例を整理すると、移行を完了した団体では、技術対応以前に、体制と役割分担を明確にしている点が共通している。

具体的には、次のような取り組みが確認できる。

  • 推進主体を明確にし、統括部門が進捗管理を担っている
  • 標準仕様との差異分析を行い、「なくなる機能」の確認を重視している
  • 業務主管課との認識共有を丁寧に行う
  • 早い段階から庁内プロジェクトを立ち上げ、標準化を前提に準備を進めている

現在の体制や差異分析の状況を改めて整理することが、その後の工程を考える上での一つの手がかりになりそうだ。

まとめ

自治体システム標準化は、行政基盤を再構築する大規模な取り組みである。令和7年度末の移行期限を迎えるなか、対応に課題を抱える団体も多い。

先行事例から見えてくるのは、合意形成や推進体制の明確化、庁内理解の醸成といった実務的な基盤づくりの重要性だ。