地域のために何かしたいと思っても、公務員は公平性の担保や上長の決裁、部署異動などがあり、やりたいことを長く続けるのは難しい。制約にとらわれずにまちの魅力を伝えるため、地域商社を立ち上げて3年目になる茂木町の爲永さんに話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.23(2022年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
栃木県 茂木町 建設課 都市計画係 主査
爲永 崇志 さん(入庁16年目)
地域資源をPRする商社の活動で町民が誇れるまちをつくる。
爲永さんが代表を務める、一般社団法人「Social Up Motegi(以下、SUM)」。“これからの茂木町の核となる、20年後の子どもたちのためにまちづくりをしたい” “まちを誇りに思ってくれる子どもたちを増やしたい”との思いで設立し、現在は公務員など10人で活動中。間伐材を活用した木製品の商品化・販売や、畜産農家と連携した和牛のブランディングなどに取り組んでいる。
働いて知った地元の良さ。
茂木町は豊かな自然が魅力で、小さなまちならではの良さがたくさんあります。ですが私自身、こう思えるようになったのは公務員として働き始めてからでした。茂木町で生まれ育ち、東京の大学へ進学。卒業後は地元に戻らなければならなかったことが、入庁のきっかけでした。しかし、仕事を通して様々な人と関わるうちに、まちに恩返ししたいという気持ちがどんどん膨らんでいきました。
転機は令和元年度に参加した、庁内の”地方創生に関する勉強会“。同年代の職員たちと、まちの現状や課題、進むべき方向性について話し合いました。その中で、子どもたちや若者に地元の魅力を伝えるため、木材や畜産業などの今ある地域資源を活用する商社を立ち上げようと意気投合。しかし、各メンバーの上司や町長から了承を得るのに半年ほどかかりました。
“本当にやれるのか” “本業に支障が出ないか”などが懸念される中、熱意を伝え続けると“好きなようにやりなさい”との承諾が。商社出身のメンバーから知恵を借りて法人登記などを進め、令和2年4月に非営利の一般社団法人としてSUMを設立しました。
活動の成果をまちに還元。
主な活動内容は、間伐材を使った木製品の商品化・販売、畜産農家と連携した地元産和牛のブランディング。大学生と一緒にイベントや製品開発も行います。純利益の半分は当町に寄附し、一般財源に充てます。
当町は面積の約65%が森林で、木材が豊富。一方で、間伐材が捨て置かれるなどの課題がありました。そこで積み木や椅子をつくり、道の駅やインターネットで販売したところ好評で、町内の子どもたちへのプレゼントとして保健福祉部局が採用。SUMの活動が職場でも役立ってうれしいです。ほかにもクラウドファンディングを活用し、”栃木産“として出荷していた町内産の和牛を「もてぎ放牧黒毛和牛」の名前で商品化しました。
活動は主に土日で、強制参加はありません。イベントなどが続くこともありますが、平均すると月に2回程度です。 やりがいは、同じ志をもつ仲間と自由な発想で話し合い、即実行できること。初めての試みも、思い切って一歩を踏み出し、軌道修正をしながら進めばいいと考えています。最近は町民や職場の同僚から応援の声をかけてもらえることが励みに。今後も長く活動できるよう、若手の新たな仲間も募集中です。