
失われつつある生態系において、それらを保全する担い手の不足が課題となっているという。その上、昨今では子どもの頃から自然の中で過ごす機会が減り、環境を守る意識が育まれにくいのが現状だ。亀山市(かめやまし)の上野さんは、地域住民が自然に触れ、それを大切に思う意識を醸成する取り組みを行っている。
※下記はジチタイワークスVol.38(2025年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
三重県亀山市
産業環境部
生物多様性・獣害対策室
上野 篤史(うえの あつし)さん(入庁14年目)
かめやま生物多様性共生区域認定制度を新設した背景には、自治体として、地域住民や企業に環境保全への取り組みを促したいという思いがあったそうだ。「他の自治体にも広まり、全国で自然を守る動きが進んでほしいです」と熱く語る。
自然を守りたくて市職員に。
小学生の頃から、友人とよく川へ釣りに出かけていました。その川が河川改修でなくなったことをきっかけに、自然を守りたいという思いが芽生えたのです。地元を離れて三重県の大学院で淡水魚の研究に取り組み、調査で何度も訪れて愛着を抱いていた亀山市の職員になりました。
担当業務は地域の自然保護に関するもので、保全、活用、周知・啓発に取り組んでいます。身近な自然は人間が管理し、利用することで守られ、生物多様性が保全されるのです。そこで、令和5年度に「かめやま生物多様性共生区域認定制度」を創設しました。これは市内の自然豊かな場所を認定し、そこで行われている活動を支援する制度です。また、企業の建築開発に関する指導も行っています。自然を活用した取り組みとしては、エコツアーや小学校への出前講座を実施。周知・啓発のため、ユーチューブや広報紙で情報を発信し、イベント出展も行いました。そのほか、市民団体と連携し、環境保全にも取り組んでいますよ。
生き物に触れて関心をもつ。
出前講座の主な内容は、子ども向けの自然観察会です。遠足に同行するほか、施設に出向いてその周辺で行うこともありますよ。実施にあたり大切にしているのは、自然に親しみ、五感で楽しんでもらうことです。身近な場所にも生き物がいることを知り、観察の楽しさを実感してもらえるように努めています。子どもに生き物の名前を聞かれたとき、私も知らない場合は素直に伝える。そうすると、子どもが自分で調べるきっかけになるのです。観察会を通じて、子どもの生き物を探す目が養われたり、自主的にゴミを拾うようになったりと、その変化にうれしくなりますね。
生物多様性を守るためには、次の時代を担う人たちに、その重要性を知ってもらうことが大事です。同時に、地域住民の理解も欠かせません。一人ひとりが生き物との触れ合いを通じて、理屈抜きで自然を大切に思えるようになることが何より重要です。
自身のステップアップとして、令和5年度に環境省の審査を経て、「環境カウンセラー」に登録しました。企業に環境保全の取り組みを働きかける際、専門的な知見をもとに伝えたいと考え、挑戦しました。
今後、開発などで自然を壊しかねない行政という立場にいることを自覚しつつ、自分が何をすべきか思考しながら働いていきたいです。また、教育や観光・広報関連の部署など、庁内での連携を強化していきたいと考えています。さらに、企業や市民を巻き込んで、地域内外への情報発信や連携の促進にも積極的に取り組んでいくことが目標です。
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▲観察会は保育園でも実施。先生たち自ら自然保育の研修を実施するなど、大人にも影響が広がっているという。
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