まちの魅力をPRしたくても、独自の強みを見つけ、地域内外の人を引き付けることは簡単ではないだろう。亀岡市(かめおかし)では、若手職員のワーキンググループが”まちと犬の関係“に着目し、ユニークなシティプロモーションに取り組んでいる。担当の乾さんに話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.34(2024年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
京都府亀岡市
環境先進都市推進部
環境政策課 環境政策係
乾 芽衣(いぬい めい)さん(入庁11年目)
「実は犬を飼ったことがなく、最初はどのような情報にニーズがあるのか手探り状態でした」という乾さん。「冊子の制作にあたってはグループメンバーをはじめ、ペット事業者や獣医師など多くの関係者に協力してもらいました」。
“犬”から独自性を見出す。
まちおこしを考える若手職員のワーキンググループの中で、”歴史資源の活用“をテーマとするチームに、令和4年度から参加しています。当市は明智光秀や石田梅岩などの偉人とゆかりがあるものの、偉業を伝えるだけでは市民の共感を得られないと感じていました。そこで、私が美術好きということもあり、市出身で江戸時代の絵師・円山応挙の代表作である子犬の絵に着目。犬にまつわる情報をメンバーと集めていると、「日本書紀」に当市で犬が飼われていた最古と考えられる記録が残っていることや、府内唯一の盲導犬育成施設があることなど、数々の発見がありました。市民アンケートで情報のニーズを把握し、ペット業界の盛り上がりも鑑みて、犬を軸に構想を考えることにしたのです。ビジョンは”犬と暮らしやすいまち、そして人も暮らしやすいまち“です。構想を練るのに1年間かかりました。
取り組みの第一歩として、令和5年10月にPR冊子「犬と亀」を発行。冊子形式にしたのは幅広い年代に読んでもらうとともに、市内だけでしか手に入らないローカル感を大切にしたかったからです。内容には市と犬の歴史的なつながり、犬と過ごせる市内のスポットのほか、マナーを啓発するページも盛り込みました。これは、行政として、犬も人も暮らしやすいまちを目指すためです。
幅広い施策へつなげる。
冊子のプロモーションの一環として、市内で撮影した愛犬の写真をインスタグラムで募ったところ、600件以上の投稿が。市民がSNSで拡散してくれたことが追い風になりました。市長も犬に関する情報があればすぐに共有してくれたり、庁内で犬関連の提案を募集するとたくさんのアイデアが寄せられたり。多くの人に応援してもらっています。また、この取り組みがきっかけの移住者がいると聞いたときはうれしかったですね。
今年度は市民アンケートでニーズの高かった”飼い主のマナーアップ施策“として、犬の散歩とまちの清掃を連携させることを模索中。また、ウェブサイトや音声コンテンツなど、ほかのメディア展開を視野に入れ、観光にもつなげたいと思っています。さらに、財源を確保すべく、クラウドファンディングにも挑戦するつもりです。
京都市出身の私は、緑豊かな亀岡市が好きで職員になりました。地元の人は”観光都市のベッドタウンで強みに欠ける“と感じているようですが、自然が多く、犬が飼いやすいほどゆったりとした土地柄こそが魅力だと思うんです。マイナスに思える部分でも逆の視点をもちつつ、まちの歴史をひも解いていくと、そこにしかない地域資源が見つかると思います。楽しく掘り起こしてみてはいかがでしょう。
▲冊子では愛犬と巡るスポットも紹介。
「犬と亀」WEBブックの詳細はこちら
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