農業の担い手不足と高齢化が全国的な課題となっている。米原市(まいばらし)では、農業に興味をもつ人に基本的なノウハウを学んでもらおうと、令和5年度に「まいばら農業塾」を立ち上げた。
同塾を発案し、地元農家と協働しながら運営に携わっている福井さんに話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.33(2024年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
滋賀県米原市
まち整備部
農政課 福井 敏さん(入庁10年目)
野菜づくりを経験してみて、農業者へのありがたみを感じたという福井さん。都会から参加した塾生が“普段はビルに囲まれているので癒やされる”と話すのを聞き、当たり前だった農村風景の価値に気づいたそうだ。
農業の間口を広げる。
地元である米原市に入庁し、農政課は3カ所目の配属。今年で7年目になります。主な業務は水田における転作の交付金支払いに関する事務で、日頃から農家と接してきました。農業塾を立ち上げたきっかけは、市内の直売所を調査した際に、"地元の野菜で棚を埋められていない“と気づいたことでした。当市でも農業の担い手不足と高齢化が顕著です。様々な世代の人に小さく、無理なく農業に関わってもらい、生産基盤を広げたいという思いで企画しました。
農業塾は8月から翌年1月まで全10回のプログラムです。1人当たり約20㎡の農地を使って、土づくりから種まき、収穫、販売まで一連の工程を体験します。昨年度は白菜と大根、キャベツ、カブ、ブロッコリーを育てました。事業を始めるにあたっては塾生用の農地や講師の確保が必要でしたが、日頃から付き合いのある生産者と私の思いが一致。スムーズに協力を得ることができました。
当初は10人程度で募集をかけましたが、想像を超える40人の応募があったので、急きょ枠を増やして17人を受け入れました。40〜50代が中心で、中には20代の参加者も。「農地を所有しているので、いつか自分でやってみたい」など、本業の傍ら農業を始めてみたいという思いをもった人が集まりました。
自然体の自分で関わる。
講義がないときでも農地はこまめな手入れが必要で、この作業が大変です。遠方からの参加者や働いている人も多いので、途中で脱落者が出ないように欠席者のフォローに気を配りました。私も塾生と同様に1区画を借りて野菜づくりに参加。塾生同士のLINEグループに入り、事務局というよりも同じ仲間の一員としてフランクにやりとりをしました。その中で見えたのが、塾生同士の連携です。農地の手入れに来られない人がいたら、ほかの人がフォローしており、事務局の期待していた関係性が自然とできあがっていました。結果的に全員揃って修了式を迎えることができたので大きな達成感がありましたね。今でもLINEグループは継続しており、修了後も農業を続けて、直売所で自分の野菜が売れたという、うれしい知らせが届いたこともあります。
農業塾は私が何気なく生産者に相談したことから実現しました。私は普段からやってみたいことを素直に口に出してみて相手の感想を聞いています。こうした会話の積み重ねがチャンスにつながったのかもしれません。ゼロから始めた事業なので大変でしたが、この盛り上がりを絶やさずに、さらに農業の裾野を広げていきたいです。今年度も多くの人の声を聞きながら自分らしく取り組みます。
▲農場からは琵琶湖が近く、景色も楽しめる。
★あなたのまちのG-people、教えてください。
info@jichitai.works 件名「G-people 情報提供」