
企業版ふるさと納税活用のススメ
地域の課題解決や事業推進のために、自治体が企業から寄附を募る「企業版ふるさと納税」。企業版に取り組む自治体を支援する「ジチタイリンク」の松本さんと、創業当時から個人版ふるさと納税支援で自治体に関わってきた「トラストバンク」の宗形さんが、その現状や寄附を集めるヒントについて、本音で語り合った。
※下記はジチタイワークスVol.39(2025年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]株式会社ジチタイリンク
ジチタイリンク
代表取締役社長
松本 銀士朗(まつもと ぎんじろう)さん
●会社概要:令和3年のサービス開始以来、全国の自治体や企業に向けて企業版ふるさと納税支援事業を展開。令和7年7月に株式会社ジチタイアドから新設分割により設立。自治体の寄附募集活動を支援し、企業との縁づくりを通じた地方創生を目指している。
トラストバンク
執行役員
コーポレートコミュニケーション部
宗形 深(むなかた しん)さん
●会社概要:個人版ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」を運営。そのほか自治体専用デジタルツール「LoGoチャット」「LoGoフォーム」などを提供し、多方面で支援している。
制度は広がっているものの積極的な活用はまだ一部。
―企業版ふるさと納税制度の現状を、お二人はどう見ていますか?
松本:令和5年度の寄附額は前年比約1.4倍、件数は約1.7倍と年々増加しています。制度開始から令和5年度までに寄附を受けた自治体は1,500※1を超えました。ただ、社長の出身地に一度きりの寄附をするケースも多く、自治体が制度を積極活用している例は少数だと感じます。担当者は多忙ですし、ノウハウがないという声もよく聞きます。
宗形:一方で寄附をする企業側も、制度やルールを十分に理解していないケースが多いようです。どの自治体に、どんなプロジェクトがあるか分からず、探すのも難しいのではないでしょうか。
松本:まず各自治体は、内閣府に地域再生計画を提出し、認定を受ける必要があります。しかし多くの計画は抽象的で、具体化せず大きいテーマのまま寄附を募っている例が多いのが現状です。
宗形:自治体としては、寄附が集まるかも分からない中でプロジェクトを企画し、議会の承認を得るのはハードルが高い実情もある。難しいですよね。
※1 内閣官房・内閣府「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の令和5年度寄附実績について」より
企業視点での情報発信と現場の熱意が心を動かす。
―それでも寄附が集まっている自治体はあります。ポイントは何でしょうか。
松本:自治体の皆さんから相談を受ける中で、重要なのに忘れられがちだと感じるのが、“企業側の視点に立つ”ことです。企業は税金が9割控除になるメリットがあっても、1割の自己負担が必要です。株主などへの説明責任もあり、簡単には寄附できません。自治体が、ただ「こんなにいいことをやっています、共感してください」というスタンスでは厳しい。企業は、この寄附でどんな地域課題が解消されるかだけではなく、自社のミッションや未来とどうつながるのか、そこに共感できるかがポイントですから。
宗形:そのためにも“具体的なプロジェクトにする”こと、そしてHPに掲載して終わりではなく、“積極的に発信する”ことが大切です。具体性のない抽象的な計画だけで、「お問い合わせを」と書かれていても、問い合わせる企業はなかなかありません。私たちは「ガバメントクラウドファンディング」として、自治体のプロジェクトに個人版で寄附を募る支援をしています。地域課題を具体的なプロジェクトに落とし込めば、個人版と企業版の両方で寄附を募ることができるのだから、活用しない手はないですよね。
松本:あと欠かせないのは、自治体側の“担当者が情熱をもつ”こと。今、寄附が集まっている自治体は、職員はもちろん首長も自ら汗をかいてPRを行い、相手の心を動かしているように思います。
制度の追い風を活かし、動く自治体が増えはじめた。
―法人関係税の税額控除の特例措置※2が3年間延長されました。この影響は?
宗形:自治体は中長期的な計画を立てやすくなりましたよね。これから始めるとしても、十分な時間があると思います。
松本:延長が決まり、今年は4月だけで当社には自治体から数百件の問い合わせが寄せられました。様子見だった自治体が、一斉に動きはじめています。
宗形:すごいですね。自治体にノウハウや人手が足りないなら、御社のような民間企業の支援を活用して、一歩を踏み出すことが大事だと思います。
松本:はい、自治体と企業をつなぐのが私たちの仕事です。自治体ではなかなか手がまわらない企業のリストアップからパンフレットの制作、制度の説明、プロジェクトのPRまで、幅広く代行・サポートしています。将来的には、企業版ふるさと納税に関する情報を一元化して、自治体も企業も使いやすいプラットフォームをつくりたいですね。
※2 企業が寄附をした際の法人関係税の税額控除の割合を最大9割とする特例措置
特別な内容でなくても“伝える力”が共感を生む。
―企業版ふるさと納税担当の職員さんにぜひメッセージをお願いします!
宗形:“他自治体と同じようなプロジェクトになるのでは”と不安視する声も少なくないようです。しかし大切なのは差別化より、伝えるべき相手を定めて、情報を届けること。自分たちだけで抱え込まず、外部とつながり、地域の未来をともにつくっていく意識が大切だと思います。
松本:“うちには何もない”という諦めのような声も聞きますが、どんな自治体でも課題はあり、それを寄附でどう解決したいのかを具体化することは可能です。私たちはその具体化や発信の支援をしています。丁寧に情報を届ければ、共感し行動してくれる企業や人は必ずいます。まずは一緒に動き出しませんか。
お問い合わせ
株式会社ジチタイリンク
福岡県福岡市中央区薬院1-14-5
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TEL:092-716-5577
Email:kigyou_furusato@zaigenkakuho.com
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