ジチタイワークス

大分県臼杵市

うすき石仏ねっと~安心・安全なまちづくり~

取組概要

うすき石仏ねっと(以下「石仏ねっと」といいます。)とは、市内のケーブルテレビのネット網を用いて各施設と閉域で接続したICTネットワークで、病院、診療所、歯科診療所、訪問看護ステーション、調剤薬局、介護施設、居宅介護支援事業所、消防署などの参加施設の間で病気、薬、検査結果などの情報を共有するシステムである。

<沿革>
石仏ねっとは、高齢化が進み医療・介護を支える人材が不足しつつあることを危惧した臼杵市医師会が平成15年3月に市内の5つの医療機関において検査データを閲覧する実証実験から始め、平成20年3月からは画像データを閲覧できるように整備し運営していた。
平成24年度、厚生労働省のモデル事業「在宅医療連携拠点事業」を受け、「プロジェクトZ」(Zは在宅の頭文字)というチームが設置され、市内の医療・介護関係者が集う機会が増えたことから起因し、平成25年3月には訪問看護事業所、平成26年10月には調剤薬局などともつながるようになり、平成27年4月から臼杵市医師会、臼杵市などを構成員とする「うすき石仏ねっと運営協議会」(以下「運営協議会」という)が発足し、運営協議会が石仏ねっとを運営していくことになった。
また、平成27年7月には歯科医院、同年10月には消防署、平成28年1月には居宅介護支援事業所ともつながるようになった。さらに、平成29年度には総務省クラウド型EHR高度化事業によりクラウド型サーバーを整備し、大分市、津久見市や豊後高田市の医療機関とも連携を開始し、また、妊娠期から子育て期の母子の情報とも連携がとれるよう子育て支援アプリとの連携も可能となった。

取組期間

平成14年度~(継続中)

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

(1)背景
高齢化が進み医療・介護を支える人材が不足しつつあることを危惧した臼杵市医師会が中心となり、臼杵市の医療・介護を守るために構築した。

(2)目的
無駄の少ない、安心・安全な医療・介護サービスにつなげることを目的にしている。

取組の具体的内容

(1)日頃の活用
石仏ねっとは病気、薬、検査結果などを取扱うシステムであるため、加入する際には本人の同意を申請書により得て、加入後には石仏カードを交付している。
石仏カードは交通系ICカードと同じFeliCa方式を採用しており、参加施設の読み取り機にかざすと、瞬時に本人の検査結果、服薬履歴などが時系列で表示される仕組みとなっている。


「石仏カード」
「検査結果 画面」
「検査結果 画面」

(2)緊急時の活用
119番通報の緊急時には、傷病者が石仏ねっとに加入していれば、石仏カードがなくても消防署の通信指令室で氏名、生年月日などにより検索し、専用の画面で閲覧できる仕組みとなっている。専用の画面では低血糖、出血傾向などの緊急性が高い情報は強調され、既往歴、かかりつけ医療機関などを短時間で確認できる構成となっている。このため、救急隊員は現場に到着する前に処置の準備、搬送先の選定などを行うことが出来るため適切かつ迅速な初期対応に役立っている。

「消防通信指令室 画面」

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

(1)安心・安全なシステム
石仏カードには保有者個別のIDが、参加施設(読み取り側)には施設個別のIDが割り振られており、それらが関連付けられることで、情報の確認や更新・蓄積が可能となっている。なお、石仏カードには保有者ID以外の情報は登録されていないため、万一紛失してもそれだけで医療情報が漏えいすることはない。
また、石仏ねっとはサーバーを自施設内に設置し、参加施設間は基本的に「臼杵ケーブルテレビのネット網」でつながっている。このケーブルテレビのネット網はインターネットに直接接続していないため、安全に情報をやり取りできる(インターネットに接続する場合は、ファイアウォールなどを設置し、セキュリー対策をしている。)。
さらに、石仏ねっとには各施設の職員しかアクセスできず、職種ごとにアクセス制限も設定されており、参加施設の職員でも業務に無関係な情報を見ることができない仕組みとなっている。

<ネット網のポイント>
ケーブルテレビのネット網は石仏ねっとの構築前に整備しており、当市は有効な活用方法を検討していた。この時期に臼杵市医師会から石仏ねっとのために活用したい旨の相談があり、WIN-WINの関係で石仏ねっとのネットワーク網を構築することができた。

(2)加入率と参加率の高さ
令和2年4月1日時点で石仏ねっとの加入者数は21,935人、医療や介護関係の参加施設数は93か所(参加率:約97%)となり、市民の加入率、施設の参加率の高さは他に類をみないまでに発展している。

(3)クラウド型サーバーの整備
平成29年度に「総務省クラウド型EHR高度化事業」によりクラウド型サーバーを整備し、異なる地域における医療情報の連携が可能になった。
また、子育て支援アプリ(一般的に配信されているものを当市版に改良したもの)とも連携し、医療機関、当市が管理する予防接種、乳幼児健診結果を保護者のスマートフォンで閲覧できるようになった。なお、保護者がスマートフォンに入力した予防接種情報は、石仏ねっとに提供される。

取組の効果・費用

(1)取組の効果
ア 日頃の活用例(早期発見・重症化予防)
複数の医療機関を受診し、薬も複数の調剤薬局から出されていた方の実例。
石仏ねっとにより血液検査の結果や他の病院での処方薬も確認できるため、主治医が血液検査の変化から低カリウム症に早い段階で気付き、処方薬からカリウムを体外に放出する漢方薬が影響していることを疑った。本人からの聞き取りにより、足のつりが気になり、その漢方薬には足のつりに対して効果があったため自身の判断で指示された量より多く服用していたことがわかった。
これらの結果を薬剤師と共有し、本人に対し服薬指導(適切な服薬方法)した結果、血液検査の結果が正常値に改善された。

イ 緊急時の活用例(現場滞在時間の短縮)
高齢男性が意識を失って倒れたとの通報があった実例。
救急車の出動と同時に、石仏ねっとにより病名などを確認すると、糖尿病の治療中であることがわかり、低血糖による意識障害(糖尿病の治療中は血糖値が下がり、意識を失う場合がある。)が疑われた。そのため、現場に到着する前に血糖値の測定と低血糖の処置としてブドウ糖の投与を準備した。現場に到着し、意識を失った高齢男性の血糖値を測定すると、低血糖の状態であったため準備していたブドウ糖の投与を行い、迅速に病院に搬送することができた。
病院の医師からは、「低血糖の状態が続くと脳に損傷を与えるため、1秒でも早いブドウ糖の投与が必要であり、現場に到着する前に準備でき、適切かつ迅速な初期対応ができたことは患者さんにとって大変良いことだ。」と評価された。

ウ 臼杵市糖尿病等生活習慣病対策ネットワーク(重症化予防)
平成22年度から大分県中部保健所、当市、臼杵市医師会、臼杵市医師会立病院コスモス病院(中核病院)、協会けんぽ大分県支部などが連携し、「臼杵市糖尿病等生活習慣病対策ネットワーク」を構築している。この取組みは、市民に対して講演会などを通じて糖尿病についての普及啓発を図ることに加えて、保健指導の中でHbA1cの指標を捉えて、早期に専門医につなげて早期診断とその後の介入を行っていくことで透析などの重症化を防ぐことを目的としている。
石仏ねっとの糖尿病連携手帳(複数の医療機関で受ける血液検査などの検査結果を時系列でみることができる機能)の活用で継続的な観察ができ、介入の効果を適切に確認できることに加えて、この取組みに関連する医療費分析を毎年度重ねており、実施後5年を経て重症化を防ぐことができている傾向が顕著に現れ始めている。この取組みにより、透析患者を減らすことができれば、1人当たり年間500万円の医療費軽減効果となる。

<取組みのポイント>
〇当市の課題(糖尿病の重症化)に対する施策(保険事業 地域包括ケアシステムの一事業)のツ
ールとしても活用していること。



エ 安心・安全なまちづくり
安心・安全な医療・介護サービスには、他科・他職種などとの連携が求められる。例えば、腎機能の低下した患者に対し、造影剤を使って肝臓がんの検査をする場合、肝臓担当の先生は造影剤による腎機能の影響も留意する必要があり、腎臓担当の先生との連携が生じる。万が一、この連携がない場合は、患者の有する能力を低下させてしまうため安全な医療サービスとは言えず、患者・家族にとっては安心とは言えない医療サービスだ。「安心・安全」は、それぞれの専門家が必要な情報を確認し、連携することにより生まれるものである。
石仏ねっとは必要な情報を提供し、連携するきっかけを与えている。加入者及び参加施設が増えることは、「安心・安全」となる医療・介護サービスの連携体制の強化につながり、ひいては安心・安全なまちづくりにつながっている。

(2)費用
ア 構築費用


イ 予算
令和2年度予算:27,030,100円
<主な収入>
 当市の負担金    :10,300,000円
 臼杵市医師会の負担金: 9,000,000円
 会費収入      : 3,400,000円

取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

(1)石仏ねっとの危機
平成20年に画像データの閲覧ができるようになり、参加施設は20まで増えましたが、その後しばらくの間は財源もないため進展がなく、停滞していました。

(2)石仏ねっとの転機
「人のために良いものをつくり、広げていきたい」という強い思いから臼杵市医師会立コスモス病院 副院長と情報管理センター長が事態を打開すべく自ら関係各所を回る中で、さまざまな人たちが2人の思いに共感し、輪が広がっていった。
平成24年度に共同の勉強会が開催されるなど、臼杵市医師会と当市の連携が始まった。また、同年度に厚生労働省の「在宅医療連携拠点事業」の受託が決まり、市内の医療・介護関係者が集う機会が増え、訪問看護や調剤薬局、介護施設が石仏ねっとに参加するようになった。
そして、平成27年4月には「うすき石仏ねっと運営協議会」(以下「協議会」という。)が発足し、臼杵市医師会と臼杵市が正式に合同で石仏ねっとを運営していくことになった。
これ以降、歯科医院や消防署、居宅介護事業所(ケアマネジャー)の石仏ねっとへの加入が決まり、健康診断データの共有が始まるなど、石仏ねっとはその規模を順調に拡大させることができた。

<転機のポイント>
〇情熱を持ったキーパーソンがいたこと。
〇医療・介護関係者が顔を合わせる機会が増えたこと。
〇医師会と行政が連携していること。

(3)相乗効果
2人の思いに共感した施設は、利用者に石仏ねっとの加入を勧め、毎年約2,000人ずつ加入者が増えていくことにつながった。


<相乗効果のポイント>
〇参加施設の協力があったこと。
〇健康づくりに対する市民の意識(理解)があったこと。
当市は、市民を対象に健康意識の向上を図るために定期的に「糖尿病講演会」などを開催しています。

今後の予定・構想

(1)市外医療機関との連携
現在、連携している市外の医療機関は一部だが、これを拡げていく。

(2)学校健診との連携
学校健診結果とも連携し、生涯の健診結果を時系列で管理・活用していく。

(3)スマートフォンでの閲覧
検査結果、処方薬などを加入者のスマートフォンで閲覧できるようにする。

(4)大規模災害時における活用
大規模災害時においても有効に活用できる環境を整備する。

他団体へのアドバイス

石仏ねっとは、5つの医療機関内で検査結果を閲覧する実証実験から始まったが、市民の加入率や施設の参加率は他に類をみないまでに発展し、その役割は安心・安全なまちづくりまでに拡がった。
拡がったポイントは、
情熱を持ったキーパーソンがいたこと。
〇医療・介護関係者が顔を合わせる機会が増えたこと。
医師会行政連携していること。
参加施設協力があったこと。
〇健康づくりに対する市民意識(理解)があったこと。
地域包括ケアシステムツールとしても活用していること。

取組について記載したホームページ

うすき石仏ねっとホームページ
http://usukisekibutsu.projectz12.sky.linkclub.com/

問い合わせ先

大分県 臼杵市 保険健康課
電話番号 0972-63-1111
 

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