ジチタイワークス

愛媛県四国中央市

未来のために今を支える-子ども若者発達支援センターの取り組み-

取組概要

児童福祉法に基づく児童発達支援センター※1と、子ども・若者育成支援推進法に基づく子ども・若者総合相談センター※2の複合施設である「四国中央市子ども若者発達支援センター」を設置し、子どもから若者、その家族等からの相談に応え、専門的な関わりが必要な子どもに療育※3を提供し、そしてそれらから得られた知識や経験を地域全体に還元するための地域支援を行うことで、日常生活・社会生活を送る上で困難を有する子ども若者への一貫した総合的な支援を行っている。
施設は市の直営で、利用者や地域からは愛称の「Palette(パレット)」で呼ばれている。

※1 施設に通う障がい児への療育やその家族に対する支援を行うとともに、その有する専門機能を活かし、地域の障がい児やその家族、障がい児を預かる施設への援助・助言を行う施設。
※2 子ども・若者に関する相談に応じ、関係機関の紹介その他の必要な情報の提供などを行うための拠点。
※3 日常生活の基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練など、障がいのある子どもの発達を支援する各種の取り組みのこと。

取組期間

平成29年度~(継続中)

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

特別な配慮や支援を必要とする児童生徒や不登校やひきこもりなど、発達障がいを含む本人が有する特性により、日常生活や社会生活を送るうえで困難を有する子ども・若者が、年々増加している。



全ての子ども・若者が、周囲はもちろん自分自身からも認められ、そして自分らしく参加できるような地域・社会をつくることを目的に、Paletteを設置、運営している。

取組の具体的内容

相談


本人、家族、園や学校などからの相談に応えるもので、電話相談、来所相談、心理療法(カウンセリング)に分かれる。
来所相談では、相談者(保護者)から話を聴き、必要に応じて、園や学校における子ども本人の様子や環境を観察する「パレット訪問相談」や、本人の物事の捉え方や得意・不得意を客観的に把握するための「発達検査」といったアセスメントを行う。そしてこれらをもとに相談者や場合によっては園や学校と一緒に、今後のかかわり方を話し合っている。

療育

児童福祉法に基づく障害児通所支援事業者の指定を受け、未就学児を対象とした「児童発達支援」、学齢児を対象とした「放課後等デイサービス」を提供している。
療育は、複数の子どもたちによる小集団(クラス)療育と、子どもと指導員がマンツーマンでする個別療育の2種類を、本人・家族のニーズに合わせて提供している。いずれにおいても、子どもたちが日常・社会生活が送りやすくなるための手段を考え、その練習を行っている。

地域支援


支援が必要な子どもへのかかわり方について、Paletteと園や学校が共に考える「巡回相談」や、アンケートによる保護者の気づきの機会の提供と、そのフォローとしての個別相談を行う「5歳児相談」、困難を有する子ども・若者のことについて、市民と一緒に考える「出前講座」など、Paletteが地域に出向いていき、全ての子どもたちが園や学校などの集団や地域に参加しやすくなるように、各種の事業を行っている。

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

独自性・新規性

1.幼児期から若者までの相談、障害児通所支援による療育、そして地域支援による環境整備までの一貫した総合的な支援を、一つの施設で行うことができる。

2.保育を担当する部署からも教育を担当する部署からも独立した、「発達支援」を専門とする部署を設置したことで、中立的な立場で本人、保護者、園や学校への支援を行うことができる。

3.障害児通所支援事業者の指定を受けることで、利用者自己負担金及び公費(障害児通所給付費※4)を歳入として計上している。

※4 サービス利用1回あたりの報酬単価が定められており、そのうち1割を利用者(保護者)が、9割を公費(国保連経由で国・県・市)が負担する。

工夫した点

Paletteでは、経歴も有する資格も雇用形態も異なる50名近い職員を、5つの部署に分けて配置している。個人の考え方はもちろん、担当する業務の性質による部署ごとの考え方の違いがある中で、それぞれが「子ども若者発達支援センター」の看板を背負いながら、Team Palette として発達支援という「正解のない」業務にあたるために、次の工夫をしている。

①PDCAサイクル
Paletteの開設に合わせて「四国中央市子ども若者未来応援計画パレット・プラン」を策定し、この計画に基づき各種の事業を展開している。事業は随時及び定期の内部会議(後述)や、3か月毎の外部委員会議による評価を受けて見直しを図るなど、常にPDCAを回している。

②内部の協力体制
関係する職員による「作戦会議」を随時開催しチームで案件にあたるほか、各部署の管理職により月に1度開催される「Palette会議」では、それぞれの業務について部署を越えて意見を出し合い、Paletteの総意として方針を定めている。

③柔軟な組織運営による人財の活用
Palette内の異なる部署に配置された保育士、保健師、公認心理士、作業療法士、言語聴覚士といった専門職が、それぞれの業務を担当しながらも必要に応じてチームとして動けるように、柔軟な組織運営をしている。
R1年度には、部署を横断した「Palette Outreach Team(通称:ポット)」を組織し、前述の専門職がスムーズに他部署の業務に協力できるようにした。そしてR2年度は、ポットをベースとした「発達支援係」を設置し、他部署や関係機関との連携を担当業務の一つとするなど、限られた人材を有効に活用できるようにしている。

④職員研修
教育委員会学校教育課との合同で、外部講師を招いた職員研修を年間を通して実施している。この研修により、職員それぞれが自己研鑽をするとともに、教育と福祉の連携を図り、さらにはPaletteの業務自体を見直す機会にしている。

取組の効果・費用

効果

発達障がいや特性はその人の個性であり、治ったり無くなったりするものではなく、また子どもたちは皆成長・発達の途中であるため、支援をする前後の比較が難しいなど、事業としての効果が表に出にくい。
しかし、障がいや特性が周囲から理解されず集団・社会参加が困難となり、不登校やひきこもりといったいわゆる「二次障がい」になれば、彼らの生活は家族または公的機関からの援助により賄われることになる。最悪の場合は自ら命を絶つことも有り得る。
子どもたちが自分の中の苦手な部分とつきあいながら、得意なことを活かして社会に参加し、さらには活躍できるように「今」を支援することは、未来に対する投資であると考えている。
こういったPaletteの取組に興味を持っていただける方は多く、R1年度は21団体185人の視察を受け入れた。

費用

施設整備費 約10億円(合併特例債を活用)
施設及び事業運営経費 年間約2.5億円(うち一般財源1.8億円)

取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

巡回相談の整理

「発達支援に関する専門家」という認識が広がるにつれ、本来保育や教育の中で対応すべき、担われるべき部分についても、Paletteに期待されるようになってきた。
特に「巡回相談」については、昨年度までは保護者又は園や学校からの要望があれば、その都度実施する方法を取っていたことから、園や学校内で十分な協議や対応策が講じられないままPaletteに巡回相談を依頼するケースが増えた結果、他の業務を圧迫するほどの業務量になった。
この状況を改善すべくR2年度からは、保護者の希望によるものを来所相談の一環である「パレット訪問相談」に、それ以外を園や学校との合同の職員研修として実施する「巡回相談」に分けた。そして巡回相談については、保育を所管するこども課及び教育を所管する教育委員会学校教育課と合同で実施することで、「福祉と教育の連携」のツールとしての役割を持たせた。

人財の確保

「福祉は人なり」と言われるほど人(スタッフ)の果たす役割は大きく、その確保や育成は常に課題となっている。優秀な人財を確保することが、子どもたちの支援にとって有効であることは間違いないが、個人の資質や経験などに頼りすぎると、それありきのサービスになってしまい、個人の負担が多くなるだけでなく、組織として維持することが難しくなる。
さらにPaletteは、その整備費用を市債により調達しており、返済は将来にわたり市民が負担することになる。将来の市民にも「あってよかった」と思ってもらえるような施設や組織であり続けなければならない。
そのためには「人(個人)に頼りすぎない、人を育てる」組織を作り、サービスの質を保ちながら継続していく必要がある。

今後の予定・構想

障がいや特性が個性として認められ、すべての子どもたちが地域の中で一緒に育ち、そして活躍できるような地域・社会を作っていくために、Paletteの有する機能、特に地域支援機能を強化していきたい。
将来的には、Paletteのような特別な施設を利用せずとも、子どもたちが普段過ごしている場所・地域で必要な支援を受けながら、その子なりの発達ができそして活躍できるような地域をつくりたい。

他団体へのアドバイス

平成29年に厚生労働省から出された指針において、平成32年度(R2年度)末までに、各自治体に児童発達支援センターを少なくとも1ヶ所以上設置することが求められた。
発達支援は、行政内でも保健、福祉、教育といった他部署にまたがる上に、民間事業所が障害児通所支援事業者の指定を受けてサービスを提供していることが多い。これらのことから、児童発達支援センターをどこが設置するか、そしてどこが所管するかが決まらずセンターの整備が進まないという、他自治体からの相談を受けることがある。
特に教育と福祉との間にある壁は厚く、文部科学省と厚生労働省が連名で連携に関する通知を出しているところである。
発達支援は、関係機関との連携がなければ進めることはできない。Paletteの経験上、連携はそれぞれが自身の業務の範囲を、目的のために柔軟に広げることで成り立つものであり、どこかが他よりも少し広げることが、連携をスムーズに進めるためのポイントだと思っている。
子どもたちは日々成長・発達し、その過程で周囲からの支援を必要としている。そして周りの人たちは皆、何かできることはないかと考えている。どこでも誰でも構わない。動けばおのずと連携・協力が進んでいく。どこかの誰かを待っている時間は、子どもたちを待たせている時間である。

取組について記載したホームページ

発達支援課HP https://www.city.shikokuchuo.ehime.jp/soshikikara/fukushibu/has/index.html
Paletteフェイスブック https://ja-jp.facebook.com/palette.shikokuchuo/

問い合わせ先

愛媛県 四国中央市 発達支援課
電話番号 0896-28-6029

 

【行革甲子園】全国の自治体の創意工夫あふれる取り組みを紹介! 記事一覧

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