ジチタイワークス

福岡県福岡市

里親によるショートステイ受け入れで、地域の子育てを支える。

里親によるショートステイを活用した育児支援

保護者の育児疲れや病気などの事情で、一時的に養育ができない場合に、子どもを宿泊で預かる「子育て短期支援事業(子どもショートステイ)」。福岡市では児童養護施設のほか、里親による預かりで支援を広げている。

※下記はジチタイワークスVol.39(2025年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

福岡市
こども健やか部 こども家庭課
左:課長 桑野 裕史(くわの ひろし)さん
右:こども福祉係 係長
宗 健太郎(そう けんたろう)さん

民間と連携して里親を募集し、短期養育の受け入れを強化。

子どもショートステイは、養育が難しい状況の保護者から子どもを最長7日間預かる支援制度。出張や病気などの一時的なケースから虐待リスクの高い家庭まで、サポートする対象は幅広い。自治体が乳児院や児童養護施設に委託する場合が多いが、同市では市内複数のNPO法人と連携して、里親を活用したショートステイに積極的に取り組んでいる。「市内の施設だけでは受け入れ先が足りず、断らざるを得ないことがありました。また、施設が遠い人もいるため、身近な地域で預かることのできる人がいれば、もっと支援ができると考え、取り組みを始めたのです」と桑野さん。

まずは同市西区とNPO法人が協働して、平成26年度に「みんなで里親プロジェクト」を立ち上げた。市民が里親として協力する機会を広げ、なり手を増やすことを目的とした取り組みである。そこから令和元年度には、同区をモデル地区に「里親ショートステイ」を開始。需要も増加していったことから、令和4年度に全市展開となった。

里親の募集はNPO法人が担い、チラシ配布や研修会・交流会などを実施している。養育里親の登録は直近5年間で約100世帯増加。令和6年度末時点で182世帯がショートステイ対応可能で、同年度延べ利用日数の約43%を占めている。「市民の中には、“短期間ならできそう” “社会に貢献したい”という人もみられ、受け皿が広がっています」。


 

里親ショートステイでは、同じ地域の家庭的な環境で子どもたちが過ごせる。

育児を支える社会資源として、頼りになる温かい存在に。

子どもショートステイを利用する際は、各区の窓口で保護者の申し込みが必要だ。日程や、施設・里親のどちらに預けたいかなど、希望を伝える。対象は全ての子育て世帯であり、生活保護世帯、ひとり親世帯、市県民税非課税世帯は利用が無料だという。里親を利用する場合は、空き状況や年齢、地域、相性などを踏まえて、NPO法人が受け入れ先を選定。子どもの送迎も担っている。「NPO法人は里親のことをよく知っているので、細やかなマッチングができます。送迎対応も喜ばれており、運営において民間の力は大きいと感じます」と宗さん。

最初は個人の家庭へ預けることに抵抗があった人でも、実際に利用すると「子どもが楽しんで帰ってきたので、またお願いしたい」という感想を寄せることが多いそうだ。「里親という言葉のイメージが、“養子縁組”から“子育てを支えてくれる存在”に変化していると感じます。近所の親戚の家に泊まりに行くような感覚で利用している人もみられ、里親が家庭を支える社会資源になってきていることを実感しますね」。同じ地域であれば、いつも通りに学校や幼稚園、保育所に通える点も好評だという。
 

多様なサービスを組み合わせて、必要な支援を家庭に届ける。

令和元年度の開始以来、里親による受け入れは増えつづけ、令和6年度の延べ受け入れ日数は4,172日にのぼる。短期で何度か受け入れた家庭が、長期の委託を受けるケースも出てくるなど、支援の形も広がっているようだ。

子どもを預ける理由で最も多いのは育児疲れで、全体の約6割を占める。子どもから離れて疲労回復の時間をつくり、育児放棄や虐待を未然に防ぐことは本事業の大事な役割だという。「ショートステイは、各家庭が何に困っているかを知る機会にもなります。月に何度も利用する保護者は、それだけでは解決できない問題があるのかもしれません。子育て支援制度の中でも、各家庭にどのような支えが必要なのかを職員が見立て、保健師や助産師の訪問など様々な在宅支援サービスを組み合わせていくことが大切です」。一時的な支援から真のニーズを捉え、各家庭に合わせた総合的なサポートをしていくことが重要だと語る。

さらに桑野さんは「支援に関わる人たちが同じ方向を見て連携し、しっかり中身のある取り組みにしていきたいと思っています。ただ預かるのではなく、どんな状態か把握しつつ、子どもたちが心身ともに健やかに過ごせる環境をつくりたいですね」と笑顔を見せる。保護者と子どもがよりよい関係で暮らしていくために、地域ぐるみで支えていく考えだそうだ。

 

 

このページをシェアする
  1. TOP
  2. 里親によるショートステイ受け入れで、地域の子育てを支える。