ジチタイワークス

愛媛県松山市

産官学民連携の全世代型防災教育で防災力強化&地方創生!

取組概要

地元愛媛大学と連携して、単位取得と防災士資格が取得できる講座を開講
●大学生防災士を養成(5年間で956人!)し、NPO団体を結成。
●市から防災関連事業を委託、大学生が地域防災を活性化
商工会議所と連携して、大学生と地元企業の出会いの場を創出し、地元就職率アップ
地域防災を長年、継続的に牽引する若い人材を確保
●産官学民が連携した防災教育で、小学生から高齢者まで切れ目のない防災リーダーを育成

取組期間

平成27年9月~(継続中)

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

 愛媛大学の新学部「社会共創学部」(学部理念:地域とともに学び、地域とともに未来へ)の設立を踏まえ、松山市と愛媛大学が協働して、防災の知識と実践力を兼ね備えた学生リーダーを育成し、地域とともに活動する「実践的学生防災リーダー育成プログラム」をスタートした。

【防災の知識】
●愛媛大学では環境防災学のほか、4年間を通して、防災マネジメント学、防災情報社会学、地域防災実践学のほか、多くの防災専門科目を履修し、防災の知識を幅広く高められる環境になっている。

【防災の実践力】
●松山市から大学生防災士の団体「防災リーダークラブ」に事業委託し、学生が住民や小中学生等に防災の指導をしながら、自らの実践力を高められるよう取り組んでいる。

【若者の確保、地方創生】
●人口減少、高齢化社会が進む中、大学も市も、大学生の地元就職率を上げることは重要な施策であり、特に大災害が頻発する現代において、即戦力となる学生防災リーダーの地元就職は、地域防災を継続的にけん引していくために貴重な人材である。

取組の具体的内容

【環境防災学の開講】
 平成27年度から大学生が夏期の集中講義で単位取得(2単位)できる講座で、防災士資格も取得可能な「環境防災学」を開講した。
 また、翌28年度からは、愛媛大学以外の市内3大学+2短大の学生も単位互換制度を活用して、履修できる環境を整備し、これまでの5年間で市内全ての大学・短大から計956名の学生が防災士資格を取得している。

【大学生団体への防災関連事業委託】
 大学生防災士で構成する団体「防災リーダークラブ」を、NPO団体として市に登録。松山市から防災関連事業を委託し、若い力が主体的に地域と関わりながら、防災力を高める取組を進めている。
例)●地区防災計画作成支援委託(地区の訓練の企画や会議参加で地区防災計画作成を支援)
  ●防災教育・防災キャンプ企画開催委託(小中学生を対象に防災教育や防災キャンプを開催)
  ●防災研修会企画開催委託(自主防災組織などを対象に防災スキルアップの講習会を開催)
  その他、お母さん世代対象の防災カフェ外国人対象の防災研修等、様々な事業を委託。
「防災リーダークラブ」の大学生

【地元就職支援による就職率向上】
 大学生が地域の歴史や特性を深く考えながら地域住民と関わることで、地域の良さや人の温かみに触れ、現代の若者に失われつつある郷土愛を育みながら、学生自身の防災のスキルも高めている
 こうした大学生は「地域の宝」として、末永く地域に関わってもらうため、商工会議所と連携して、大学生が地元企業を防災の目線で研究し、商品開発や販売促進などの提案をおこなう「企業研究」やインターンシップなどを通じて、大学生と地元企業との出会いの場を創出し、地元就職率の向上に努めている。

【全世代に進める防災教育】
 さらに、令和元年度からは、東京大学、愛媛大学と松山市の3者で結んだ防災教育に関する協定を軸に、大学生防災リーダークラブのほか、市内大学、高校、商工会議所、防災士会、教育委員会、消防局、防災・危機管理担当部など、産官学民の代表者で構成する「松山市防災教育推進協議会」を設立し、小学生から高齢者まで切れ目のない防災リーダーの育成を進めるための全世代型の防災教育プログラムを作成し、各現場での実践を進めている。
例)●小中学生プログラム:自分一人でも命を守れ、地域の一員としても命を守れる教育
  ●高校生プログラム:自分たちに何ができるか自発的に考えられる教育
  ●大学生プログラム:一人一人が知識と行動力を持って活動できるリーダーに
  ●外国人プログラム:松山市在住外国人が安全に身を守れる教育
  ●企業プログラム:企業の危機管理とBCPの作成につなげる教育
  ●地域防災士プログラム:組織の成長段階に合わせ、現場教育につながるリーダー育成
その他、教員、福祉など、対象に応じた教育プログラムを作成・研修しリーダー育成につなげている。
小学生への防災授業
高校生への防災授業
外国人への防災教育
防災士への防災研修

特徴(独自性・新規性・工夫した点)


【単位が取れる授業で受講しやすい環境】
●大学側と交渉を重ね、単位取得できる講義(夏期集中講義)にすることで学生が履修しやすくなった。

【多くの学生が防災に関心を持ってほしい!】
●愛媛大学以外の市内の大学・短大の学生も、大学連携(COCプラス)などの単位互換制度を活用することで、他大学の学生が受講可能になり、大幅に受講者が増加した。
市内4大学2短大から毎年200名以上が参加。女性も約半数!

【資格を取って「終わり」ではなく「スタート」に!】
●大学生が防災士資格を取って終わりではなく、そこからをスタートとするため、NPO団体「防災リーダークラブ」を結成し、松山市登録のNPO団体とすることで、学生が主体的に活動できる環境が整った。

【地域住民の防災力とともに、指導する学生のスキルもアップ!】
●大学生団体に市から防災関連事業を委託することで、地域住民の防災力を高めるとともに、指導する学生自身のスキルアップも図られる相乗効果の高い取組となった。

【せっかく育った貴重な若い力は地元で末永く活躍してもらおう!】
●商工会議所と連携し、大学生と地元企業との出会いの場を創出し、相互理解を深め地元就職につながる取組を進めた。
企業研究で大学生が防災の目線で地元企業を研究し提案をプレゼン

【他市に例を見ない産官学民連携の全世代型防災教育】
●さらなるステージアップのため、愛媛大学、東京大学などと連携し、他市にも例のない産官学民が連携した全世代への防災教育を進め、小学生から高齢者まで切れ目なく全世代に防災リーダーを育成するよう取り組んでいる。

取組の効果・費用


【大学生防災士は5年間で956名。千名近い学生が防災リーダーに】
●平成27年以降の5年間で956名が防災士資格を取得。防災の知識と実践力を備えた学生防災リーダーは、卒業生後、国、県、市職員のほか、教員、福祉、コンサルなど幅広い分野で活躍。

【「環境防災学」開催の市予算はゼロ。講師に市(消防)職員がなることで安価に資格取得が可能に】
●「環境防災学」開講の市予算はゼロ。大学が運営する講義であるため学生の受講料は必要ない。
外部講師を招かず、大学教員と市職員、消防職員等が直営で講師をすることで、学生が必要な費用は日本防災士機構への教本代、試験料、登録料の計11,500円(定価ベースだと6万円程度必要)となった

【委託による大学生の地域参画により市内全地区で地区防災計画完成!】
●防災リーダークラブに委託した、地区防災計画作成支援委託では、平成27年から29年までの3年間で、大学生が会議や訓練に参加し、作成支援に関わったことで、市内全41地区で地区防災計画が作成された。(市内全域での地区防災計画作成は全国でも希少

【防災リーダークラブ大学生の地元就職率は一般学生以上に!】
●平成30年度の防災リーダークラブの学生の就職率は、卒業し就職した58名のうち、県内就職者が32名(55.2%)松山市内の就職者が24名(41.4%)で、愛媛大学全体の卒業者県内就職者の40.4%と比較すると10ポイント以上高い数値である。
大学生が住民や企業と一緒に行動し、地域を知ることで地元志向や愛着が強まった結果であり、若い力が地域に残って活躍する地方創生に繋がっている。
愛媛大学卒業者進路状況                  防災リーダークラブ卒業者進路状況

【産官学民の連携が生んだ全世代の防災教育プログラム】
 産官学民連携の「松山市防災教育推進協議会」から愛媛大学に新たに設置した「松山防災リーダー育成センター」に防災教育プログラムの研究開発と実践を依頼し、様々な職域や世代に防災教育を進めるための指導者「防災エデュケーター制度」が新設され、大学生のほか、学校教員、地域防災士、大学や市の職員などから、数十名の防災エデュケーターが誕生している。

取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)


【大学と交渉。行政にはないノウハウや知見を活かして】
●愛媛大学には、防災を専門とする防災情報研究センターがあり、知見を有した教員が多くいた。
大学ができること市ができることを整理し、お互いの長所をつなぎ合わせることが、より受益制効果の高い取組になる。

【企業や住民を巻き込み、産官学民の強固な連携を】
●学生の知識を高める(大学)、地域との関わり(住民)、地元企業を知ってもらう(商工会所)、ゴール(目標)とプラン(施策)を考え、それぞれを繋ぐ(行政)、それぞれの役割を明確にし、産・官・学・民の連携があってこそ大きな成果が得られる

【将来の宝である若い力(大学生、高校生等)の育成に目を向ける】
●大学生や高校生などは、これから社会に出て、長年、社会の中心的役割を担っていく人材である。この世代を育成することは、地域を、まちを育成することと同じである。

【自分の人生の活躍の場所として地域(地元)を選ぶプランを立てる】
●高校生、大学生の時期は、地域との関わりが少なくなる時期でもある。行政が積極的に関与し、地域住民や地元企業との関わりの機会を増やしていくことで、学生自身、地元就職が選択肢のひとつになっていく。

今後の予定・構想

●防災エデュケーター制度をさらに国県を含めた、産官学民に広げ、数百人規模の防災リーダーを育成
●小中学生、高校生を対象に「ジュニア防災リーダークラブ」を結成し、年間を通して防災キャンプやボランティアなど様々な防災教育を実践し、若い世代のリーダー育成を進め、全世代で防災リーダーを育成
●コロナ禍の学校授業では、遠隔授業やオンライン学習など、新たな生活スタイルに対応することが必要であるため、学習サポート動画の作成やオンライン授業の実施など、ICTを活用した防災教育を進めていく

他団体へのアドバイス

●行政だけではできないことも、大学や企業、住民との協力があれば、実現可能になる。
●人口減少、高齢化社会が進む中で、若い力をだまって見逃す術はない。ぜひ活用できるアイデアを!
●防災の取組は、ひとづくり、まちづくり、コミュニティ醸成が一度に実現できるもの。連携とアイデアで実現を!

取組について記載したホームページ

http://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/bosai/bousai/bousaishi/index.html
http://matsuyama-bltc.com

 

問い合わせ先

愛媛県 松山市 防災・危機管理課
089-948-6795

 

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