取組概要
明日香村は歴史遺産と周囲の豊かな自然環境を有する観光名所だ。一方で、良好な景観維持のための建築規制が厳しく、宿泊施設不足、放置空き家問題を抱えている。
本村では、企業と連携し、省力化野菜の生産強化・商品化による稼げる農業のモデル化、村の農業施設等の中心拠点として、本村の西側に整備する農業振興施設に設置する農機具等を購入する農業担い手支援を進めるほか、古民家を改修した宿泊施設をはじめ飛鳥駅西側の歴史文化の滞在スポットとして牽牛子塚古墳等の整備を進め、本村の産業・地域活性化に取り組んでいる。
取組期間
平成30年度~(継続中)
背景・目的
平成27年より、(株)長谷工コーポレーションが管理するマンションで村内産野菜を販売する場を提供していただいた縁で、平成29年9月に明日香村、明日香村地域振興公社と官民連携に関する包括協定の締結に至った。
取組の具体的内容
明日香村、(株)長谷工コーポレーション、一般財団法人明日香村地域振興公社は、それぞれが有する資源や特徴を生かし、飛鳥の歴史的風土保全や、産業及び地域の活性を図るためのプロジェクトを相互に連携協力し、推進することを目的に、2017年9月28日に連携包括協定を締結している。
包括協定に基づく主な事業は以下の3つの基本プロジェクトで構成されている。
1 「明日香村を堪能する」プロジェクト
明日香を知り、明日香を感じ、明日香を味わうプロジェクトとして、また、(株)長谷工コーポレーションが管理するマンション居住者向けのサービス向上として、明日香村の情報発信や農林商工産物の販売を行うことで、販路拡大による地域振興を目指す。
2 「明日香村を経験する」プロジェクト
明日香村をもっと深く楽しんでいただいて、(株)長谷工コーポレーション顧客向けの観光サービス、体験メニューの提供を行い、都市住民との交流促進を図る。
3 「明日香村に居住する」プロジェクト
明日香村における短期型の新たな滞在方法を提案するとともに、新たな居住空間を創出することで、
将来的な定住につなげる。
同社の組織として、平成30年4月に、明日香村の地域活性化に取り組む「明日香村プロジェクト推進室」
を設置し、CSV(Creating Shared Value)の考え方に基づき以下をはじめとした様々な取組を実施。
○斉明天皇陵としての可能性が高く、国の史跡として指定されている「牽牛子塚古墳」等の復元整備を行っている。古墳をその場で体感、体験できるよう復元し、多くの国民にとって「ほんものの力を体感できる」歴史体験の場を提供する。
⇒新たな歴史文化の滞在スポットとして、2022年開業予定である。
○村内の有休農地を活用した「長谷工明日香コミュニティファーム」による明日香村で誰でも野菜づくりが楽しめる受け入れ体制を整備。
大阪の近郊にありながら、自然とともにくらす農村風景の中、多くの遺跡や古墳が点在する明日香村で、「長谷工グループ」と「明日香村地域振興公社」がコラボレーションし、コミュニティファームを運営している。
農業を経験したことのない若者と農業知識豊富な明日香村民のふれあいの場となり、関係人口の増加に寄与している。※農業体験イベントに延べ470名参加。
○村内宿泊施設の不足の解消を目的として、(株)長谷工が古民家を買い取り・買い上げ、改修し、宿泊施設事業を行う。外国人観光客にも喜ばれる明日香村らしい宿泊施設の増加に向けて取り組んでいる。
○新たな明日香村ファンを増やしていくため、スポーツを通して多くの方が滞在し、明日香村を体感できる取組とすることを目的として、数多くの遺跡(世界遺産構成資産候補)を通過するコースを設定した「飛鳥ハーフマラソン」を(株)長谷工コーポレーションと共に、企画している。
参加人数は3,000人を目標としており、2021年3月実施予定。スタート地点は壁画が重要文化財に指定されたキトラ古墳であり、コースからは聖徳太子の生誕の地である橘寺や、棚田100選にも選ばれた稲渕の棚田を見渡すことができる。
歴史に興味関心のある層のみならず、若者や家族層の明日香村の認知度を上昇させることを目標とする。
⇒今後さらに新たな明日香ファンを増加させる取組を行いたい。
○長谷工コーポレーションが関係各所に配布する2020年のカレンダーに、明日香村の風景写真を採用していただいている。
その他 同社が管理する情報発信ツール(マンション住民への広報誌等)における明日香村の情報発信及び啓発。同社の顧客に対し明日香村の特産品の啓発及び販売。
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
当初の契機は協定の締結及び企業版ふるさと納税であり、寄附金による農機具購入や文化財の整備により、明日香村の魅力強化に努めた。その後、企業版ふるさと納税制度の活用とは別に新たにコミュニティファームの開設、空き家活用、特産品の訴求・販売等様々な分野で波及的な効果が望まれる事業を展開し、幅広く地域と共に活動に取り組み、本村の抱える課題解決に向けて模範となる実績をあげている。
取組の効果・費用
・総事業費 269,390千円
・事業時間 平成30年4月~令和2年3月
(うち寄付額 平成30年度 30,000千円 令和元年度30,000千円)
・長谷工明日香コミュニティファームにおける農業体験イベントに延べ470名参加
取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
住民への説明(なぜ、その企業と連携するか等)について、協定を締結した初期段階に特に求められた。住民と企業担当者、村役場が直接対話していくなかで、企業側の思いを伝えることができ、住民の協力を得やすくなった。
今後の予定・構想
牽牛子塚古墳は令和4年に一般公開する予定である。今後、さらに外国人観光客にも喜ばれる明日香村らしい宿泊施設の増加に向けて取り組むとともに、特産品の訴求・販売など様々な分野での波及効果を見込んでいる。
他団体へのアドバイス
・制度上の制約は存在するが、企業がメリットを享受できるよう工夫する
・企業からいただいた提案をスピード感を持って対応する
・行政としてサポートできる内容を明確化する(地元との調整、許認可関係等)
取組について記載したホームページ
https://asukamura.jp/topics/hurusatonouzei_kigyo/index.html
問い合わせ先
奈良県 明日香村 総合政策課
電話番号 0744-54-2001