
全国の市区町村の創意工夫あふれる取り組みを表彰する、愛媛県主催の「行革甲子園」。7回目の開催となった令和6年の「行革甲子園2024」には、35都道府県の78市区町村から97事例もの応募があったという。
今回はその中から、愛媛県伊予市の「エコバックの制作・販売および謎解きスタンプラリーの実施」を紹介する。
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2024」の応募事例から作成しており、内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
取り組み概要
伊予市では、令和6年3月から5月にかけて、エコバックの制作・販売および謎解きスタンプラリーを実施した。
【取り組み期間】
・エコバック販売:令和6年3月1日~令和6年5月6日
・スタンプラリー開催:令和6年3月1日~令和6年5月12日
背景・目的
近年、地球温暖化が原因とみられる気候変動の影響により、世界各地で記録的な高温、大雨、大規模な干ばつなどの異常気象が多発している。また、日本各地においても、過去に経験したことのないような猛暑や集中豪雨などが多発しており、今後さらに大規模災害等のリスクが高まることが予測される。
令和3年8月に公表された「IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)」の第6次評価報告書では、向こう数十年間の温室効果ガス等の排出が大幅に減少しない限り、21世紀中には地球温暖化は、1.5℃ないし2℃を超えるとしている。さらに、イギリスで開催された「COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)」では、地球温暖化を1.5℃に抑える目標に向かって世界が努力することが正式に合意された。
日本においては、令和2年10月に政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、令和3年4月には地球温暖化対策本部にて2030年までの温室効果ガス排出削減目標を平成25年度比で46%削減することが発表された。このような中、SDGsの理念にもとづき、持続可能なまちづくりを目指す同市においても、「3万人が住み続けられる伊予市」の実現に向け、市民・事業者・行政が一体となって、本市における2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロとする「ゼロカーボンシティ」を目指すことを宣言した。
今回の企画は、その具体的な取組の一つであり、エコバックの制作・販売を行うことで、1. 市民のSDGs達成に向けた機運の醸成、2. ゼロカーボンシティの実現への寄与、3. 市民購入のエコバッグ活用による使い捨てプラごみの削減・CO2の削減に係るアクションの促進、を図ることを目的としている。併せて、謎解きスタンプラリーを実施することになり、市内での消費活動増加もねらいとしている。
取り組みの具体的内容
以下内容を企画の上で実施した。市民への周知は、広報紙、伊予市公式ホームページ、公式LINEなどの各種SNS、チラシの掲示・配布などを通じ行った。
【企画内容】
1. 希望者は、まず、ウェルピア伊予およびIYO夢みらい館へ設置された自販機(300個限定)より、
1回500円で、市作成のエコバックおよびスタンプラリーカード(以下探偵証)が同梱されている
カプセルトイを購入する。
2. カプセルトイ購入者は、協賛店舗にてエコバックを使用の上、各店舗の条件(1,000円以上お買い上げなど)を
満たす買い物を行うと、100円割引などのサービスが受けられるとともに、探偵証にスタンプが押印され、
謎解きのヒントカードを受け取ることができる。※
3. 謎解きのヒントカードは協賛店舗毎に記載内容が異なり、多くの店舗をまわることでより情報が集まり、
正解に近づくようになっている。最終的に、スタンプを10個以上集め、謎解きに成功すると名探偵コースとして、
伊予市オリジナルSDGsグッズ(1,000円相当)プレゼント。
スタンプを6個集めると探偵見習いコースとして、伊予市オリジナルSDGsグッズ(500円相当)プレゼントとなる。
※購入者の購買促進と利便性向上を図るため、地域活性化アプリ「Streets」とも連携しており、同アプリ利用者は、現在地より近隣対象店舗情報の受け取りと探偵証への電子スタンプでの押印が可能となっている(押印はカード、アプリいずれでも可)。
チラシ
スタンプラリーカード
地域活性化アプリ「Streets」紹介チラシ
ウェルピア伊予カプセルトイ設置状況
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
エコバックの活用と消費喚起活動のコラボレーションに加え、スタンプラリー企画を実施することで、参加者へ、自然な消費活動の中で、楽しくエコの実現と経済効果向上に寄与できる仕組みとしている。
費用についても、エコバックは、官民共創の取り組みの一環として、民間事業者の半額補助により作成しており、また、カプセルトイや資材は、既存の所有物を中心に使用するなど、可能な限りお金をかけないようにした。(協賛店舗についても各店舗のご厚意で任意参加いただいており、費用等はお支払いしていない)
取り組みの効果・費用
スタンプラリー総利用人数140人以上、対象全店舗のスタンプラリー実施分総売上高13万円以上だった。
取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
企画実施には、周知素材の作成・設置、カプセルトイの作成・設置、協賛店舗への説明・了承、終了後の資材の回収等、実施事項が多岐に渡ることから、部門を越えて有志の職員6人に参加してもらい、横のつながりの情勢を図りつつ、通常業務とは異なるところで、企画の仕方、進め方、運営の経験を積んでもらった。
さらに、利用者の利便性と伊予市全体の消費喚起、地域別の人口規模を考慮し、協賛店舗数が3地区(伊予、中山、双海)でバランスがよくなるようにした。
※伊予地区8店舗 中山地区3店舗 双海地区3店舗
また、当初はカプセルトイの設置をウェルピア伊予のみとしていたが、一時期より販売数の鈍化が見られはじめたことから、新たにIYO夢みらい館へもトイBOXを配置し、より身近に購入可能となるよう販路を広げた。
今後の予定・構想
終了間もないこともあり、今後の展開については確定していないが、参加された市民や協賛店舗の方の声を踏まえ、好評が多く得られた場合は、第2弾の実施を検討したいと考えている。
他団体へのアドバイス
企画→提案→実行までのプロセスとその後の検証についても重要なことではあるが、職員およびその上長たる管理職の方のマインドが、それ以上に大切なことと考える。行政職員は、公金を使用する事もあり、どうしても前例踏襲や各種無難な選択をしがちだが(適切な表現ではないかもしれないが)、収入が一定確保されているからこそ、失敗もやり直しも可能であり、市民の幸福につながり利益に資すると思われることについては、積極的にチャレンジするべきと考えている。
全ての挑戦が成功するわけではないが、挑戦なくして成功はなく、また現状維持は後退であると強く認識すべき。特に現代は、時代の変化が激しいこともあり、任された仕事をこなすだけではなく、自ら課題を捉え、解決策を考え、実行に移せる人材が求められている。職員においては、現状に甘んじず改善に向けた企画提案(=挑戦)を積極的に行うこと、管理職の方においては、結果が出ずとも挑戦する職員を評価してあげることができる行政であってほしいと切に願う。