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全国の市区町村の創意工夫あふれる取り組みを表彰する、愛媛県主催の「行革甲子園」。7回目の開催となった令和6年の「行革甲子園2024」には、35都道府県の78市区町村から97事例もの応募があったという。今回はその中から、福岡県宗像市の「『ばってん少女隊』とまちおこし! ~アイドル×自治体~」を紹介する。
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2024」の応募事例から作成しており、内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
取り組み概要
アイドル「ばってん少女隊」を市の観光大使として起用し、様々な分野でPRに活用した。
これまで行ってきた「ばってん少女隊」とのまちおこしの具体的な取り組みは以下の通り。
(1)210名即完売!バスガイド「ばってん少女隊」と一緒に巡る、世界遺産バスツアー
(2)コロナ禍でも負けない!「ドライブイン方式のラジオ公開収録イベント」
メンバーの推し商品はこれ!「ばってん少女隊セレクトボックス」販売
(3)アナゴから島までPR!ポスターや音声ガイドでコラボ
(4)宗像のふるさと納税を知ってほしい!限定グッズがもらえる促進キャンペーン
(5)若い世代にも来てほしい!選挙PRでも大活躍
背景・目的
アイドルを用いることで観光PR等にさまざまな効果が期待できると考え、平成28年にアイドルグループ「ばってん少女隊」を市の観光大使に任命し、現在まで様々な分野で一緒に取り組んでいる。
「ばってん少女隊」を起用した具体的な理由は以下の通り。
(1)「ばってん少女隊」所属のスターダストプロモーションには、多くの俳優、タレント、グループが所属しており、全国的なPRが期待できる
(2)アイドルファンを中心として、若い世代への訴求効果が期待できる
(3)メンバーの一人が宗像市の出身者である
(4)「ばってん少女隊」の初ステージは市の宗像ユリックスで行われたため、宗像市が「ばってん少女隊」の聖地として有名になることが期待できる
【ばってん少女隊】
スターダストプロモーション内スターダストプラネット所属の5人組アイドルグループ。
取り組みの具体的内容
(1)210名即完売!バスガイド「ばってん少女隊」と一緒に巡る、世界遺産バスツアー
令和4 年10月、世界文化遺産登録5 周年を記念して、宗像市が西鉄旅行株式会社と連携し、「ばってん少女隊と行く世界遺産バスツアー」を開催した。大型バスを6 台用意し、「ばってん少女隊」のメンバー6名(開催当時)が各バスのバスガイドを務めながら、道の駅むなかたや、世界文化遺産群の一つである宗像大社など、宗像市の観光名所を周る。バス車内ではメンバーと一緒に世界遺産学習をし、クイズ大会を実施。ツアー後半には、宗像ユリックスで「ばってん少女隊」のミニライブ付きのラジオ公開収録も開催した。内容は宗像特別回として企画し、観客や後日ラジオを聴く全国の視聴者に向けて、宗像の世界遺産やグルメに関する情報などを盛り込み発信した。ツアー参加費は大人一人9,900円、定員は210名に設定した。ツアーの募集開始後、天神での公開ラジオイベントの実施や市内の広報紙への掲載を行い、テレビ番組や新聞等のメディアに多く取り上げられたこともあり、全国各地から申込が寄せられ、早々に定員の210名が集まった。熱心なファンや若い世代だけでなく、幅広い世代の方々が参加した。「ばってん少女隊」だけではなく、宗像市の観光名所や特産品、おもてなしについても高い評価が寄せられ、SNSでも大きな反響があった。
▼市の広報誌に掲載した募集
▼参加者アンケート結果〈参加者の属性と満足度調査〉
年代 ツアー全体の満足度
(2)コロナ禍でも負けない!「ドライブイン方式のラジオ公開収録イベント」
メンバーの推し商品はこれ!「ばってん少女隊セレクトボックス」販売
道の駅むなかたでは、「ばってん少女隊」の新曲発表イベントやライブイベントを年に数回行っている。このライブイベントに合わせて、道の駅むなかたの中から「ばってん少女隊」の“推し商品”PRも行った。
令和2 年度にはコロナ禍だったこともあり、車に乗ったまま楽しむことができる「ドライブイン方式」で、「ばってん少女隊」の公開収録イベント等も開催された。その際にも、市の特産品からメンバー推しの商品を集めた「ばってん少女隊セレクトボックス」を販売した。この公開収録イベントのスペースには41台もの車が集まるなど、コロナ禍においては大盛況のイベントとなり、「ばってん少女隊」や市の特産品のPRにつながった。
▼ドライブイン方式ラジオ公開収録
▼ばってん少女隊セレクトボックス
(3)アナゴから島までPR!ポスターや音声ガイドでコラボ
市では、玄界灘で捕れるアナゴのブランド化に取り組んでおり、「ばってん少女隊」がアナゴをPRするポスターを作成した。また、市が有する「大島」では、恵まれた自然環境を活かした観光・レジャースポットを楽しむことができるが、その大島のPRとして、島の観光案内の音声ガイドを「ばってん少女隊」が務めたこともあった。
(4)宗像のふるさと寄附を知ってほしい!限定グッズがもらえる促進キャンペーン
市では、ふるさと寄附の更なるPRへつなげるため、ふるさと寄附をしてくれた方の中で、指定のキーワードを専用サイトに入力すると、「ばってん少女隊」のポストカードや名刺が返礼品と合わせてもらえるキャンペーンを実施した。このキャンペーン関連の寄附は以下のとおり。
R4年:116件/寄附金額2,554,000円 R3年:198件/寄附金額4,158,500円
(5)若い世代にも来てほしい!選挙PRでも活躍
観光客や市外へのPRだけではなく、市民への情報発信においても「ばってん少女隊」と連携している。その一つが、選挙への投票を呼びかけるものだ。特に若い世代に行政や議会に関心をもってもらおうと、令和2 年度の市議会議員選挙では、「ばってん少女隊」が投票を呼びかけるポスターを市の選挙管理委員会で制作したほか、有権者への案内はがきにも「ばってん少女隊」を登場させたり、メンバーが動画で投票を呼びかけたりした。その結果、メディアにも多く取り上げられ、10代の投票率は前回の35%から45%に上昇するなど、若い世代へのPR効果がみられた。宗像市では、特に若い世代を中心に行政や議会に関心をもってもらうため、市民への情報発信においても「ばってん少女隊」との連携を継続していく方針だ。
特徴
(1)バスガイド「ばってん少女隊」と一緒に巡る、世界遺産バスツアー
宗像市だからこそ、ばってん少女隊だからこそできるオリジナルバスツアーになるように、以下の点にこだわって企画・調整・運営を行った。
・公開ラジオ収録をバスツアーに組み込み、宗像特別回を企画して収録をすることで、当日のツアー参加者にだけでなく、全国のファン・ラジオリスナーにも宗像の魅力を広く発信できる仕組みとした。(内容はむなかた観光クイズ、グルメ紹介、世界遺産の勉強など)
・県内だけでなく全国から宗像に来てほしいという思いから、福岡でのライブイベントの翌日に設定することで、ライブに合わせて関西・関東等、全国から参加しやすいように企画した。
・宗像について学んでもらう工夫として、ばってん少女隊がバス車内で行った世界遺産案内の内容からクイズを出題し、全問正解した方へのグッズプレゼントイベントを実施した。
・メンバーそれぞれの、宗像観光や特産品のおすすめを案内する時間をつくることで、道の駅むなかたのお買い物タイムでの観光消費額の拡大や、今後のリピート訪問へのきっかけづくりになるよう工夫した。
・ばってん少女隊の楽曲「虹ノ湊」のMV撮影地ともなった「神湊」やデビューライブを行った「宗像ユリックス」など、聖地巡礼要素を入れることによってツアーの独自性を出すとともに、ツアー参加者の満足度向上を目指した。
(2)コロナ禍でも負けない!「ドライブイン方式のラジオ公開収録イベント」&「ばってん少女隊セレクトボックス」販売@道の駅むなかた
・「ばってん少女隊」が、新型コロナウイルスの影響で困っている市の生産者を応援するイベントを企画し、ドライブイン方式で実施した点
・メンバーそれぞれの推し商品のボックスで、ファンに宗像特産品に興味をもってもらう仕組みにした点
(3)アナゴから島までPR!ポスターや音声ガイドでコラボ
・紙媒体から音声まで、それぞれに適したPR方法を検討しコラボしている点
(4)宗像のふるさと寄附を知ってほしい!限定グッズがもらえる促進キャンペーン
・オリジナルのグッズ(メンバーの宗像市観光大使オリジナル名刺やカードなど)を作成することで特別感を出し、宗像市のふるさと寄附に興味を持ってもらえるようにした点
(5)若い世代にも来てほしい!選挙PRでも活躍
・観光分野だけでなく、市民向けのPRにも活用した点
取り組みの効果・費用
・バスツアーや道の駅でのライブ、聖地巡礼のための全国からのファン来客(20代~50代中心に幅広い層)
※ドライブイン方式公開ラジオ収録の集客(イベントスペース):車41台
・全国からのふるさと寄附
※ふるさと寄附の経済効果:R4年:116件/寄附金額2,554,000円 R3年:198件/寄附金額4,158,500円
・ばってん少女隊公式やファンのSNSによる幅広い情報発信効果
・選挙PRポスターへの「ばってん少女隊」起用による若者の市政関心アップ
※10代の投票率は前回の35%から45%に上昇
取り組みを進めていく中での課題・問題点
アイドルグループとの連携にあたっては、写真の使用許可や出演依頼等、事務所との調整は細かく行っていく必要がある。観光大使として「ばってん少女隊」に市のPRの役割を果たしてもらうだけではなくお互いにメリットがあることを念頭に各種の企画を立て、調整を行うことで、良好な関係を築き、円滑に進行ができるようになったと考える。
今後の予定・構想
「ばってん少女隊」と、今後も幅広い分野で連携していくためにも、お互いにwin-winの企画となるようなアイデアを練り、一緒に宗像を盛り上げていきたいと考える。
他団体へのアドバイス
連携の際に大事にしているのは、お互いにメリットがあることであり、市のPRに力を貸してもらうだけではなく、市側も「ばってん少女隊」を応援していくという姿勢だ。市の事業で起用するだけではなく、市職員も自らライブステージに足を運んだり、曲を聞いたりするなど、「ばってん少女隊」の一“隊員”(「ばってん少女隊」のファンの愛称)として彼女たちを応援している。お互いにwin-winの関係を築きながら、市の観光PR・情報発信に取り組んでいく姿勢が必要だと考える。