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適切な肥満症対策の受診スキームを医療機関との連携で確立する。

令和6年11月にパイロット事業としてスタートした春日井市の肥満症対策の取り組み。その後、職員たちのチャレンジは成果を生みはじめているという。どのように事業を立ち上げ、住民にどんな変化をもたらしたのか。取り組みを進めてきた担当者に詳細を聞いた。
【地域で取り組むこれからの慢性疾患対策とは。】
(1)【Q&A】これからの慢性疾患対策について知っておきたい4つのポイント。
(2)【インタビュー】肥満症患者が一歩踏み出すために、自治体だからできること。
(3)適切な肥満症対策の受診スキームを医療機関との連携で確立する。←今回はココ
(4)地域の健康課題や体制に合わせた肥満症対策が各地でスタート。
(5)肝疾患リスクから住民を守るため約1年で実現させた静岡県の新事業。
(6)【インタビュー】慢性疾患対策を通じて、住民と地域社会の健康の向上に貢献したい。
※下記はジチタイワークス特別号(2025年11月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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健康福祉部
左:部長
神戸 洋史(かんべ ひろふみ)さん
中央:健康増進課 課長補佐
川口 良子(かわぐち よしこ)さん
右:健康増進課 課長
兒島 康万(こじま やすかず)さん

健康福祉部
左:部長
神戸 洋史(かんべ ひろふみ)さん
中央:健康増進課 課長補佐
川口 良子(かわぐち よしこ)さん
右:健康増進課 課長
兒島 康万(こじま やすかず)さん
地域の健康課題を克服するためまずは小規模で事業をスタート。
同市では、令和6年3月に住民の健康増進に向けた「心と体のかすがい健康計画2035」を策定するにあたり、過去5年間の評価を実施した。そこに課題を見つけたと川口さんは話す。「高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロームなどの重症化予防の項目が、設定した目標に届いていませんでした。そこで、この課題をクリアする施策の検討を始めたのです」。
解決策を模索する中、地域の医師から肥満症の周知・啓発事業に関する提案があった。その際に“肥満”と“肥満症”の違いを認識し、この事業は住民の健康増進に貢献するものであり、課題解決への糸口になるかもしれないと判断。庁内で合意形成を行い、医師会にも説明し理解を得た。こうした土台づくりの上、肥満症対策についての知見が豊富で、疾患啓発を推進しているノボ ノルディスク ファーマと令和6年10月に包括連携協定を締結。本格始動に向けて同年11月から翌年5月まで、パイロット事業を実施した。
内容は、まず市の健診施設である総合保健医療センターにおいて、人間ドックや脳ドックなどを受診した人の中からBMIが35以上の人をスクリーニング。保健指導を行った上で肥満症の専門医につなぐというものだ。「人を動かすのは難しいので“受診につながる人がゼロだったらどうしよう”という心配はありました」。しかし、対象者に実施したアンケートや現場の声から分かったのは、当事者が抱えていた切実な本音だった。
“このチャンスに賭けたい”と住民から期待の声が届いた。
パイロット事業で受診勧奨を行った対象者は27人。令和7年7月時点で、この中から6人が専門医療機関へ、1人が専門医以外を受診しているという。「対象者の分布としては、勤務先の定期健診受診者もいることから30~50代が多かったです」。また、保健指導に携わった職員に兒島さんが話を聞いたところ、対象者とのやりとりはスムーズに済んだという。「保健師や管理栄養士から高度肥満であると指摘を受けても嫌な顔をせず、素直に話を聞いてくれたということでした」。
さらに、専門医療機関の医師にヒアリングしたところ、受診者からは“減量したいと思っていたが、どうすればいいのか分からなかった”、“諦めかけていたが、これが最後のチャンスという気持ちで頑張りたい”などの声が寄せられていたそうだ。勧奨後の受診が確認できていない人には、3カ月を目安に再度勧奨しているという。
並行して、同市では肥満症の認知向上を図る啓発活動も実施。その一つが、3月4日の“世界肥満デー”に合わせたイベントだ。市内の商業施設で開催し、肥満症クイズや食事バランスチェック、栄養士からのアドバイス、オリジナル缶バッジづくりなどのコンテンツを用意。無関心層や受診に消極的な人への働きかけをねらい、あえて予約や申し込みは不要とした。最終的に136組が参加。当日のアンケートでは、就労世代に当たる20~59歳の声が多く集まり、回答者の96%が“肥満症に関心をもった”と答えたという。

全国共通の課題である肥満症の知見を共有し活動を広げたい。
パイロット事業に手応えを得て、今後は市内全域への拡大を目指し、本格始動の準備も進んでいると神戸さんは語る。「国民健康保険加入者の特定健診の結果から、BMIが35以上の対象者を抽出して受診勧奨レターを郵送する予定です。また、医師会にも働きかけ、かかりつけ医からも専門医療機関の受診を促してもらえるよう協力を依頼します。医師会から“紹介の判断基準が明確であれば対応がしやすい”と助言をもらい、基準の作成にも取り組みました」。そのほか、市が主催する健康づくりイベントなどでも周知・啓発を行っていくという。
自治体と地域の医療機関、知見を有する事業者がそれぞれの強みとアイデアで、住民の健康寿命の延伸を図ろうとする同市の取り組み。こうした動きが広がることで、長期的には地域の医療費の抑制につながる可能性もあるだろう。
神戸さんは、「肥満症対策は地道な取り組みですが、早期発見と治療で生活習慣病の予防ができます。だからこそ対象者へアプローチし、適切な医療につなげることが大切。多くの自治体で同じ悩みを抱えていると思うので、関心をもってもらい、同様の動きが広がってくれればと思います」と期待を語った。


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サービス提供元ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
東京都千代田区丸の内2-1-1
明治安田生命ビル
TEL:03-6266-1000(代表)











