山口県宇部市

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空き地の再生を起点として、学生と協働でまちを育む。

住民生活
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空き地の再生を起点として、学生と協働でまちを育む。

中心市街地の空き地活用によるにぎわい創出事業

まちなかの空き地活用が進まず、にぎわい創出が課題だった宇部市は、空き地を使って、多世代が集まれる交流スペースの整備を続けてきた。学生が主体となり、地域と協働することで日常的な交流が育まれている。

※下記はジチタイワークスVol.42(2026年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。


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宇部市
都市政策部 中心市街地活性化推進課
係長 落合 有(おちあい たもつ)さん

人口減少でまちの空洞化が進み商店街もシャッター通りに。

石炭産業で栄え、企業城下町として発展した同市。ところが、時代の変化とともに産業構造が変わり、人口減少が進んだという。「まちの中心地にある中央町エリアは、飲食街の裏通り周辺に位置します。商店が次々と閉店し、夜は敬遠される場所だと言われていました」と落合さんは振り返る。近隣には大学のキャンパスがあるものの、同エリアに学生の姿はほとんど見られなかったという。

古い建物が密集し、安全面や防災面の課題もあった。そこで同市は国の補助金を活用し、老朽化したアーケードの撤去を進めたという。「民間企業が参入し、新しい建物や事業が生まれることを期待していましたが、再建築は思うように進みませんでした。空き地の多くは青空駐車場などの限られた用途にとどまり、にぎわいが戻らなかったのです」。

転機となったのは、他市の事例との出合いだった。先進的な取り組みを調べる中で、遊休地を芝生広場として再生した佐賀県佐賀市(さがし)の事例を知り、当時の担当者が視察したという。「芝生なら子どもがはだしで遊べますし、若い世代が集まりやすい雰囲気もあり、自由に使える点がいいと感じたようです」。

▲交流スペースの芝生は約530㎡。大学生主体のまちづくり団体が、地域を巻き込んだイベントを企画している。
▲交流スペースの芝生は約530㎡。大学生主体のまちづくり団体が、地域を巻き込んだイベントを企画している。

大学に委託した研究の一環で学生がスペースの運営を行う。

検討を重ねた末、平成28年に始めたのが、空き地を活用した「多世代交流スペース整備事業」だ。「しばふ広場」を整備して市民が集える場とするとともに、複数のコンテナを設置し、大学と連携したまちづくりの研究拠点とした。コンテナには大学生主体のまちづくり団体(以下、YCCU)が拠点を置き、市民も交流スペースとして利用できる。また、コンテナを使ったカフェも設けた。「移動可能なコンテナの特性を活かし、状況に応じて動かしながら、周辺エリアの活用を進めていけたらと考えました」。

同事業では、土地の借り上げや備品管理を市が担当。カフェは商工会議所と市などが出資するまちづくり会社が事業者を誘致し、運営を担っている。また、交流スペースの管理運営やイベント企画は、YCCUが担う仕組みだ。「もともと、大学とは包括連携協定を結んでいました。当事業では研究委託料を支払い、コンテナを拠点にフィールドワークを行ってもらうことで、学生が継続的にまちづくりに関われる形にしたのです」。

学生との協働で大切にしているのは、しっかり意見交換をすることだという。「イベントは市がオブザーバーとして関わっています。ただし学生に任せきりにするのではなく、イベント前後には必ずミーティングを開き、月に1回は先生や学生と顔を合わせて話すようにしています。毎回気づきや学びがたくさんありますね」。地域の有志で構成される実行委員会と協働し、近隣の飲食事業者も巻き込みながら、ビアガーデンやスイカ割り、芝生張りワークショップなど多彩なイベント開催を重ねているそうだ。

幅広い世代が日常的に足を運び写真撮影に訪れる学生の姿も。

明るい雰囲気に様変わりしたという同エリア。「かつては近寄りがたい印象もありましたが、今ではベンチで読書する人や、高齢者が散歩する姿も見られるようになり、日常的に立ち寄る人が増えました。コンテナをリゾート風に改装したカフェも好評で、いわゆる“映えスポット”として写真を撮りに訪れる高校生もいるようです」。イベントの際には周辺の飲食事業者も参加し、地域全体で盛り上げていけるエリアへと変わってきたそうだ。さらに、学生の発案で若者を呼び込もうと企画した「しば学祭」には、近隣の複数の大学から学生が参加。学校や地域の垣根を越えた交流も広がっている。

同事業を通じて落合さんが実感したのが、若者とのつながりの大切さだという。「観光資源は少ないのですが、若者と一緒にまちづくりができるのは、当市にとって何よりの宝だと感じています。学生がふらっと市役所に来て、イベントの相談やたわいない話をしてくれるのもうれしいですね」と笑顔を見せる。

同市では現在、「日本一学生が活躍するまちづくり事業」が進行中だ。市役所周辺のまちづくりを推進するプロジェクトでも、学生らが参加する検討部会を設けているという。「若い人たちが率直に意見を出してくれるおかげで、硬くなりがちな議論も和やかに進み、話し合いが深まります。これまでも一緒に挑戦する中で、時には思ったようにいかないこともありましたが、“次も頑張ろう”と声をかけ合ってきました。今後のまちづくりでも、このつながりが力になりそうです」。