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対話のスペシャリストが市民の意見を引き出してまちづくりにつなげる。

ファシリテーター専門職による対話力養成の取り組み
これまで多様な分野で外部人材を登用してきた明石市。令和6年度には新たにファシリテーター専門職を採用した。外部人材によるタウンミーティングの運営や研修を通じ、職員と市民の対話力向上を図っている。
※下記はジチタイワークスVol.42(2026年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

明石市
総務局 職員室
室長 河野 芳成(こうの よしなり)さん

明石市
政策局 市長とつながる課
係長 谷内 博史(やち ひろふみ)さん

明石市
政策局 市長とつながる課
永田 恵理子(ながた えりこ)さん
対話によるまちづくりを進めるために合意形成を支える体制を整備した。
令和5年5月に現市長が就任して以降、“対話と共創”をまちづくりの柱に据え、毎月タウンミーティングを実施してきた同市。運営するのは、令和5年に新設された「市民とつながる課」だ。多様な声を聞きながらまちづくりを進める役割を担う。
対話の中で、合意形成をスムーズに進めるためには、意見を引き出し、整理しながら議論を深める力が欠かせない。「行政と市民の間には情報量の差があります。その差を埋めながら、対等なパートナーとして意見交換や議論を展開する力が必要です。その力を育むためには、指導できる人材が必要だと考えました」と、採用を担当した河野さん。
そこで同市は令和5年8月から外部人材の公募を開始。最長5年の任期付きで募集すると、42人の応募があったという。「公募について、当市の広報紙やホームページで発信。その情報がファシリテーターのコミュニティで話題になり、多くの応募につながったと聞いています。採用で重視したのは、円滑なコミュニケーションが取れること、そしてファシリテーション能力と指導力の高さです」。一次面接では人物像や組織との相性を確認。二次面接では、タウンミーティングを想定したプログラム案の作成とプレゼンテーションで、専門性を評価した。内容については外部の学識経験者や市の外郭団体から、ファシリテーションの知見をもつ人材も同席し、評価できるよう工夫したという。
現場での実践的な学びを重ねて、対話力のある職員と市民を育成する。
選考を経て、ファシリテーター専門職として入庁したのが谷内さんと永田さんだ。入庁後は、タウンミーティングの企画や運営を担っている。「アイスブレイクを挟んだり、場の約束事を共有したりすることで、参加者が安心して発言できる場づくりを心がけています。また、服装もカジュアルにするなど、市民に近い立場で対話できるよう工夫しています」と永田さん。タウンミーティングでは、参加者をグループに分け、付箋や模造紙に意見を書きながら話し合いを進める。谷内さんは「言葉だけのやりとりでは、声の大きな人の意見が前に出やすい。書いて見える化することで、誰の意見も置き去りにしないようにしています」と話す。さらに、市民に向けてファシリテーター養成講座を実施し、これまでに63人が修了したという。「修了後も“続けて練習したい”という声が多くありました。今では市民と一緒に練習会を実施しています」と永田さん。
また、職員の人材育成の一環として、ファシリテーション能力を養う研修を行っている。昨年度は全係長級職員向けに5回、入庁3年目の職員向けに1回実施。今後は新規採用職員や課長級職員にも対象を広げる予定だ。座学だけでなく、模擬タウンミーティングで意見を引き出し、合意形成をサポートするような演習も行っている。「ファシリテーションは座学だけで身に付くものではありません。現場で経験を積みながら、職員が自ら考えて動くことが大切です」と谷内さん。係長級職員や入庁3年目の職員は、市民との対話の場で進行役を担えるレベルを目指しているという。課長級職員は事業計画の策定などの重要な場面で、市民との合意形成を図りながら、プロジェクトを管理できる力を養ってもらう考えだ。


身に付けた対話力を活用し、まちづくりを次の段階へ。
これまで、様々な主体と対話を重ね、まちづくりを進めてきた同市。その取り組みを市内外に発信し、さらに盛り上げるため、令和7年10月から11月にかけて「あかし対話と共創ウィーク」を開催。市民や職員、他自治体の首長などが参加し、パネルディスカッションやワークショップを通じて、対話によるまちづくりの機運を高めた。また、研修を受けた職員や、講座に参加した市民も運営側として活躍したという。
同市でファシリテーター専門職が活躍できるカギは、環境整備にあるという。まず、庁内を統括する政策局内の課に配置することで、市長との協議や政策に関わる会議に直接参加できる体制を整えた。「採用した2人のうち1人は、係長として任用しています。一定の裁量をもつ役職に就くことで、マネジメントにも踏み込みながら、専門性を発揮できる環境です」と河野さん。「外部からの“お手伝い”ではなく、意思決定に関与するからこそ力を発揮できる。これまで外部人材を受け入れてきた知見が活かされた体制です」。
外部人材による対話力育成を進めてきた同市は、産官学民が連携して、地域課題に取り組む仕組みも構築した。今後さらにまちづくりを次のステップへ進めていく方針だ。「今後は複雑化、多様化する地域課題の解決に向けてみんなで取り組んでいく、新たなフェーズを築いていきたいと思います」。













