茨城県南部に位置する取手市に、“議会愛”をモットーに活躍する職員がいる。取手市議会で数々の改革を進め、地方自治体ではなかなか進まない議会のオンライン化も実現。他自治体からも頼りにされる岩﨑さんに、改革の軌跡や思いを聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.18(2022年3月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
茨城県 取手市 議会事務局 次長
岩﨑 弘宜 さん( 入庁30年目)
岩﨑さんは、公務員生活30年のうち26年、議会事務局の職員として働いてきた。取手市議会は、議員と事務局職員が“チーム議会”として数々の改革を推進し、「議会改革度調査2020」の改革度ランキングで全国トップに。「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」や「マニフェスト大賞」など数々の受賞歴があり、他自治体の議会改革アドバイザーや講師なども務める。
議会は、住民のためのもの。
私が高卒で藤代町(現・取手市)の職員を志望したのは、単身赴任の父に代わって家族を支えつつ、地元に貢献したかったから。「誰にも負けない」と意気込んで試験に臨み、入庁後に新規採用代表で宣誓書を読み上げたときは「私を選んでよかったと思われるよう、全力で頑張ろう」と身が引き締まりました。
配属先は議会事務局で、最初は飛び交う用語の意味すら分からない。活発な議会で、サポートする事務局には的確かつスピーディな判断や助言が求められました。朝早く出勤して職場の本を読み、懸命に学ぶ日々でしたね。
議会は、住民に選ばれた議員が、住民のために活動する場です。住民にもっと関心を持ってもらおうと、事務局で試行錯誤し、平成16年に議会メルマガ「ひびき」をスタート。質疑の内容をその日のうちに配信し、欠席・離席した議員の名前も遠慮なく載せることで離席が減り、徐々に開かれた議会になったと思います。
冷めない“議会愛”を貫く。
平成17年に取手市と合併。議員相手でも物おじせず向き合い、意見してきました。次第に議員の皆さんが目線を合わせてくださり、議員&事務局職員でワンチームの議会が形成されています。全国的に珍しいと思いますが、事務局が委員会で発言する場もあるんです。改革案をメニュー化し、議員の皆さんと対話し磨いて、実現してきました。
平成30年、女性議員が出産直後でも議場に行かなければならない現状の改善を求めて、ICT活用についての議論を開始。そんな中で訪れたのがコロナ禍です。議会のオンライン化を急ピッチで進め、令和2年4月にZoomを活用したオンライン会議の初開催にこぎつけました。操作に慣れない議員には、事務局職員が徹底サポート。コロナ禍でも議会を止めることなく安全に運営でき、議員からの評判も上々です。
取手市オンライン議会の様子。
ただし、まだ道のりは半ば。委員会はオンラインで開催できるものの、地方自治法により、本会議はオンライン開催が認められていません。その法改正を目指し、他自治体の議会の皆さんにも協力をいただきながら、取り組みを進めています。
自ら議会を愛することは、住民を愛することにつながりますから、私の“議会愛”は冷めません。皆さんにもきっと“住民のために”という原点があるはず。その愛の種火を、遠赤外線ヒーターのような優しいぬくもりで、ともに働く仲間と温め続けてください。