ジチタイワークス

【村井 拓人さん】公務員、フリーになる。

勤続25年、50歳を目前に独立を決断した村井さん。“アーティスト思考”を研究しながら取り組む活動や、その先にある目標について聞いた。

※下記はジチタイワークス公務員特別号(2021年3月末発行)から抜粋し、インタビューの内容やプロフィールは原稿作成時(同年2月中旬)のものです。

TAKT
代表
村井 拓人 さん

むらい たくと:1994年、兵庫県明石市に入庁。企画財政部、財務部で固定資産税等、税関連の業務に約10年、市議会事務局で本会議や委員会の議会運営、議会改革に約5年携わった後、議長および副議長の秘書や議会広報紙の発行、政務活動費の審査を約3年担当。その後、市民生活局では、まちづくりから文化施設の管理運営まで多岐に渡る業務に約6年従事。2019年に退職し、大学院で“アーティスト思考”を研究しながら、幼少期より触れてきた水彩画の制作を再開し、個展を開く。また同年に、アーティスト思考によるセミナー、人材育成およびコンサルティングサービスを行う「TAKT」を立ち上げる。


アーティストの姿に刺激と感銘を受け、やりたいことを仕事に。

Q.25年の在庁期間を振り返り、印象に残っていることは。

市民生活局でまちづくりを担当していたとき、自治会をはじめとする地域の皆さんと直接関わる中で、「偉そう」「上から目線」という衝撃的な指摘を受けました。入庁して約18年経った頃でしたが、いつのまにか人を下に見るような態度を取っていたことに気づかされました。振り返ると、入庁1年目に阪神淡路大震災が起きました。避難所で寝泊まりしながら、日中は被災調査、夜は避難所開設員として働いた経験は衝撃が大きかった。また、右脳派の自分にとって、税務関連の部署に長く在籍し、数字を扱う業務を行うのも、とても大変でした。

しかし、市議会事務局に配属になってからは外に出る機会が増え、楽しいと感じ始めました。議会広報紙の発行が初めての“情報を発信する”活動でもありました。ただ、当時の自分は市役所内で出世することを考え、目くじらを立てながら周囲の評価を気にしていた。“やらないといけない仕事”をしていたんです。なので、冒頭の地域の方の指摘は、自分にとってはありがたく、とても印象に残っている言葉です。

Q.地域住民やアーティスト、外とのつながりがもたらしたものとは。

内発的動機づけ、つまり「やりたい!」という気持ちで仕事をする大切さに気づいたことでしょうか。長い公務員生活で、気づかぬうちに働く理由が“評価に対する恐れ”や“すべき”という外発的動機づけになっていた。この気づきが今の自分につながっています。私が出会った地域の皆さんは、「より良いまちにしたい」「自発的にやりたい」が原動力。地域の人と触れ合う時間が増え、市役所内の常識が外では非常識になることも知り、次第に役所の人と考えが合わなくなりました。業務外の時間を使い、個人で市内の面白い人に会いに行くというまち歩きイベント「ブラムライ」を始めたのがこの頃です。

また、文化振興課で実施した様々なアートプロジェクトや、明石市立文化博物館で開催した「リカちゃん展」「特撮のDNA展(ゴジラ展)」「ナイトミュージアム」「竹久夢二展」「江口寿史展」等を通じて、多くのアーティストやまちづくり関係者にも出会いました。彼らは、誰に指示されたわけでもなく自分自身の“願い”から仕事をする。その姿に感銘を受け、市民活動団体「A KASHI INNOVATION HUB」を立ち上げ、市内に限らず市外からゲストを招いたワークショップを開くなど、個人としての活動を増やしていきました。やりたいことをやっていると、ワクワク元気になれるんです。

行動を起こした事で役所内では浮いた存在になったものの、一歩外に出れば、どこに行っても声をかけてもらえる。でもそれは、やっぱり「明石市役所の村井さん」。だんだん一個人として「村井さん」と呼ばれたい、役所内より世の中で認められたいという思いが強くなり、独立を決断しました。それまで一度も異動希望を出したことはありませんでしたから、退職願いが初めての希望届けになりました。

Q.現在の活動内容と、今後の目標を教えてください。

いざ市役所を辞めても、やりたいことがありすぎて手つかずの状態に。あえて一旦全てを手放し、しばらくは幼少期から学んできた水彩画の制作に没頭しました。自分でハンドリングができる創作活動は、心が健康になり、幸福度が上がる。今も個展を開いたりしています。「ブラムライ」に教授が視察に来られたことがきっかけで、在庁時代から通学している同志社大学大学院では、アーティストの思考法を研究中です。内発的動機づけでワクワクしながら働くというのが“アーティスト思考”の基本。この思考をビジネスに活かす研修を、企業、行政、学校向けに開催しています。

別のプロジェクトでは、縁の下の力持ちである全国の自治体職員にスポットを当て、元気な公務員をスピーカーに招いた講演会を行っています。

公務員が元気だとその地域が元気になるし、ひいては日本が元気になる。現段階ではまだ地域への恩返しができていないので、アートを通じた地域活性化と、元気な公務員を増やすための活動をしていきたいですね。

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