取組概要
八幡浜市では、令和元年6月より、子育て支援事業「やわたはま銀座バスケット」を行っている。やわたはま銀座バスケット事業とは、地域・企業・行政が連携し、八幡浜銀座商店街を拠点として実施する子育て支援事業の総称である。令和元年度には、以下の①~③の事業を実施した。
①休日子どもクラブ:ニーズが増加する長期休暇中等に開所する学童保育事業(地域ならではのプログラムを提供)
②ひとやすみCafe :子育て中のご家庭を中心に、ほっとひとやすみ出来る子育て支援イベントを企画
③VIVA!GINZA!:商店街のにぎわい創出と子育て支援の多様化を図るため、誰でも参加できるイベントを企画
取組期間
令和元年度6月より開始(継続中)
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
背景・目的
≪やわたはま銀座バスケット事業の背景≫
・平成30年度より、長期休暇中等の小学生の預かりニーズが増加するという課題に対応するため、地域独自の学童保育の必要性について、愛媛県・企業・市町で検討
・令和元年度、愛媛県と市町で、民間企業等が実施する長期休暇中等の学童保育への助成を行うための「休日子どもサポート事業費補助金」を創設→松山市と八幡浜市でモデル事業を実施
・八幡浜市では、「休日子どもサポート事業費補助金」を活用した、民間企業による「休日子どもクラブ」を開設
・休日子どもクラブを商店街の空き店舗を活用して設置することが決定→施設オーナー・地域の協力により、施設を子育て支援拠点として活用→「ひとやすみCafe」による子育て支援企画や、「VIVA!GINZA!」による商店街を活用したイベントを実施→すべての事業をまとめて「やわたはま銀座バスケット」事業として展開
★やわたはま銀座バスケットの名前の由来
→銀座商店街の拠点が、地域・企業・行政のたくさんの人の手で、子どもたちや保護者を受けとめ支えていく「バスケット」の役割を果たすことを願って命名。
≪やわたはま銀座バスケット事業の目的≫
◎子ども、子育て世帯が安心できる居場所を作る。
◎民間企業主導による柔軟な学童保育の運営により、需要が高まる特定の期間(長期休暇中や農繁期)をカバーし、豊かな教育プラグラムを児童へ提供・保護者の就労を支援する。
◎市内の商店街の空き店舗を活用し、地域・子ども・子育て世帯の交流促進により賑わいを創出する。
◎地域、企業、住民が一体となって、働きやすく暮らしやすい地域づくりを促進する。
取組の具体的内容
≪令和元年度やわたはま銀座バスケット事業の取り組み内容について≫
時期:令和元年6月スタート
場所:八幡浜銀座商店街ESPOIRビル(①は施設2階、②③は1階で実施)
①休日子どもクラブ
【実施主体】
民間企業(オレンジベイフーズ㈱/㈱あわしま堂、業務委託:NPO法人ワークライフコラボ)
【事業内容】
小学生の預かりニーズが増加する長期休暇中等に開所する学童保育事業。児童が安全に過ごせるよう支援員が見守りながら、日替わりで八幡浜市ならではの社会教育プログラムを提供し、地域の魅力を学ぶことができる。社会教育プログラム例→「銀ブラ!銀座商店街マップを作ろう」「飲み比べしてみよう!みかんジュースのお勉強」(企業や地域の方の協力)
【行政の取り組み】
・愛媛県、八幡浜市において、新規事業を支援するための補助金制度を創設
→長期休暇中や農繁期に預かりニーズが増加するという地域課題に基づき、長期休暇中等に特化した学童保育の場を提供するための、運営費や施設整備にかかる費用を補助する「休日子どもサポート事業費補助金」要綱を制定した。地域資源を活用した社会教育プログラムの提供など、民間事業者ならではの創意工夫を活かした事業となるよう規定。
・社会教育プログラムへの協力
→市役所や保育施設、魚市場、消防署などの公共施設の見学案内や、防災教室の開催など、子どもたちが楽しく行政について学べる機会を提供している。
・相談窓口
→クラブの運営にあたり、保護者対応や子どもへの接し方等、行政への連携が必要になった際の窓口として対応。
②ひとやすみCafé
【実施主体】
やわたはま銀座バスケット連絡会、八幡浜市地方創生推進PT(共同企画)
【事業内容】
子育て中のご家庭を中心に、ほっとひとやすみ出来る子育て支援イベント(セミナーやワークショップ)を企画。
【行政の取り組み】
オーナーのご厚意により使用している施設1階部分を有効活用するために、やわたはま銀座バスケット連絡会と八幡浜市地方創生推進PTで活用方法を検討。リサイクルブックカフェ「Re本Day(りぼーんでー)」をモデル実施した。
★やわたはま銀座バスケット連絡会とは→やわたはま銀座バスケット事業に賛同する団体によって構成された組織。令和元年度は15社の協賛企業が集まり、拠点の整備や子育て応援セミナー等の企画、情報共有・発信を行った。
★八幡浜市地方創生推進PTとは→市職員が部局横断のチームを結成し、多様化する地域課題の解決を図る事業。
市民参加者4名、銀座バスケット連絡会2名、行政職員5名の計11名の官民連携チームメンバーで、「子育て支援と空き施設の有効活用」をテーマに活動した。
まず、PTでは現状の八幡浜市の地域課題について議論を行った。
→育児中の孤立や子育てに関する不安・心苦しさを抱く保護者が多いことや、八幡浜市の空き家割合が県内11市中2番目に高いという課題を確認。以下の通り、PTの活動におけるひとやすみCafeでの最終的な目的を固めた。
【子育て支援】子育て世帯の居心地の良い拠点を整備する 【空き施設の有効活用】集客により周辺への波及を狙う
↓
目的を達成するために、以下の4つのポイントを踏まえた企画「Re本Day」を考案
★Re本Dayとは?
絵本を中心に不要になった本を集め、必要な方へ譲渡する企画。子育て世帯をメインターゲットに、だれでも気軽に立ち寄れる居場所づくりを目指して、PTで試験的に開催した。
★PTの活動で大切にした4つのポイント
①ターゲット層が望む拠点
・絵本が不要になった方から、絵本が必要な方へ→子育て世帯にとっての魅力
・子どもだけでなく、大人も楽しめる絵本の世界→多世代向けの内容/子育て支援は地域ぐるみで!
・授乳やおむつ替えコーナー、子どもを連れて自由に飲食できるスペース/機能的な居場所
②おしゃれで居心地が良い空間
・おしゃれな室内レイアウトや写真の展示→誰でも足を運びたくなる施設の整備、メンバーの持つ技能を活かす
・開催日の10:00~11:00はお掃除タイム→施設の環境整備+利用者参加型で交流を促す
③持続可能な活動を目指して
・一定期間お預かりした本は、再生紙へリサイクル
・環境センターや廃棄物品、メンバーの家や職場から不要な物を持ち込み→経費削減/リサイクルをコンセプトに
④拠点だけでなく、波及すべきエリアも一緒に考える
・商店街→八日市に合わせて開催、愛大生の協力でイベントでの出張開催
・市民図書館→読み聞かせやイベントの案内チラシを配布
・北浜公園→イベント(Park Marche)と同時開催&双方でチラシを配布
③VIVA!GINZA!
【実施主体】
やわたはま銀座バスケット連絡会、八幡浜銀座商店街
【事業内容】
商店街のにぎわい創出と子育て支援の多様化を図るため、誰でも参加できるイベントを企画
【行政の取り組み】
愛媛県の令和元年度住民提案型商店街支援事業を活用
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
・地域・企業・行政が「子育て支援」という核となる目標の下に連携し、商店街の空き店舗を活用した子育て支援拠点を整備した。
・行政(愛媛県・八幡浜市)において、長期休暇中や農繁期等の特定の期間に学童保育のニーズが高まるという地域課題を踏まえ、民間企業のノウハウを活かすための独自の補助制度(休日子どもサポート事業費補助金)を創設した。
・地方創生推進PT事業を活用し、行政の部局や官民の垣根を超えたチームで、子育て世帯にとって魅力を感じてもらえるような居場所になるためのアイデアを実現することができた。
取組の効果・費用
≪取り組みの効果≫
【利用者数】
令和元年6月に開始し、新型コロナウイルスの影響を受けて各種企画が中止になる3月までの9ヶ月の間に、全ての企画を併せて延べ700人近くの方がやわたはま銀座バスケットに来場した。クラブ利用児童の保護者や、協力してくださった地域・企業の方も含めると、更に多くの方が事業に関わって足を運んでくれている。
【①休日子どもクラブアンケート結果】
休日子どもクラブを利用した家庭を対象に、任意で利用後のアンケートを行った。
休日子どもクラブの満足度を教えてくださいという質問→回答者18名の内、17名が「満足している」と回答。
自由記述の項目には、「子どもがいきいきと楽しそうに通っていた」「日頃体験できないいろいろなプログラムがあり、良い刺激になっている」といった子どもたちにとって良い影響を与える居場所となっていることを示す回答が多かった。また、「家での仕事が進んだ。気分が煮詰まらなかった。」「家族の負担が軽減された」といった、保護者への支援にも繋がっている回答も見られ、休日子どもクラブが子育て支援の役割を果たしていることが分かった。
【②ひとやすみCafe(Re本Day)アンケート結果】
Re本Dayの全ての日程で、来場者に任意のアンケートへの回答を依頼した。
次回もRe本Dayを利用したいと思うか?という質問→お子さん連れの方(34名)は皆さん「利用する」と回答。
自由意見や来場した方の感想では、「親も子もリラックスして過ごせてよかったです!」「ゆっくりくつろげるスペースで心地よい」といった声を聴くことができ、満足してもらえる居場所を提供することが出来ていた。
また、改善点や行政への要望も聞き取ることが出来たため、今後の事業の参考となった。
【③VIVA!GINZA!(映画上映会)アンケート結果】
2/22に開催した映画上映会には、市内外から多世代の方の来場があり、上映後に任意のアンケートへの回答を依頼した。来場者のやわたはま銀座バスケット事業の認知度は半数程度で、映画上映会のイベントをきっかけに拠点へ足を運んでいることが分かった。また、やわたはま銀座バスケット事業や商店街活性化に対する自由意見では、「今回のような機会をたびたび作ってほしいです」「もっといろいろな人に関わってもらいたいですね。せっかくのスペースなので」「楽しい企画を待っています」「年配の人も外に出て生きてください」といった多様な回答が見られ、やわたはま銀座バスケット事業に対する期待が伺えた。
≪費用≫ 赤字=支出 青字=収入
①休日子どもクラブ
総事業費:3,944,775円(税抜、人件費・賃借料・工事費等)
事業収入:294,087円(税抜、利用者負担等)
補助金:3,641,000円(八幡浜市1/2、愛媛県1/2)
実施者負担:9,688円(税抜)
②ひとやすみCafe
総事業費:123,980円 (Re本Day費用:材料費、チラシ作成)
予算:300,000円(地方創生推進PT事業費)
★本来発生しているが、未請求のコスト(PTメンバー負担)
・PTの打ち合わせ/Re本Day準備/当日運営
時間:約144時間 人件費:129,600円 ※1人当たり時給900円と仮定
・室内レイアウト/ロゴデザイン料、写真立て代
※別途、やわたはま銀座バスケット連絡会会費(協賛企業出資金150,000円)によりセミナー謝礼や連絡会の運営費用を処理
③VIVA!GINZA!
総事業費:214,409円(フィルムレンタル費、備品購入・消耗品費等)
事業収入:7,000円(パンフレット売上)
委託料:207,409円(愛媛県10/10)
取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
・前例の無い初めての取り組みだったため、細かなトラブルや疑問が出た際の対応に苦慮した。
→関係者間で報告連絡相談を徹底し、即時解決するようにした。
・企画によって実施主体が異なっており、補助事業が複数含まれているため、事業が細分化され、事務処理や広報の手段が複雑になった。
→次年度以降に向けて実施主体の統一を検討した。
・限られた予算の中での企画実施
→補助金や与えられた予算を無駄遣いしないように、また、持続可能な取り組みを目指して、リサイクルをコンセプトに経費節約のための工夫を行った。
今後の予定・構想
事業を継続し、発展させるために
・実施主体の統一
→やわたはま銀座バスケットをNPO法人化し、複雑化していた事業の実施主体を統一
・事業の自立運営を見据えつつ、行政の支援を継続
→担当課の子育て支援課を窓口として、補助金の交付(毎年度内容を見直し)/運営にかかる協議・助言/活用できる制度の紹介/企画実施時の広報・協力
→将来的には、自立運営を目指して、やわたはま銀座バスケット事業の体制を検討・見直し
・魅力的な企画の継続実施
→令和元年度は体制整備と事業周知に重点を置いた期間だった
→子育て世帯を始め更に多くの方に参加してもらえるように、アンケートや現場の意見を踏まえて事業内容を改善し、企画を継続して実施
→新型コロナウイルスの影響を踏まえた、オンラインでも楽しめる企画
他団体へのアドバイス
やわたはま銀座バスケット事業は、地域・企業・行政のどれか一つでも欠けていれば成立しない事業である。地域・企業の方々は、地域の将来を真剣に考えられており、豊かなアイデアをたくさん持たれている。また、PTの活動を通して、普段は関わりの無い領域の業務の中に、自分の担当業務の課題を解決するための糸口があるということを再認識することができた。皆さんの豊かなアイデアを実現するために、補助金や制度を活用し、行政が部局を横断して積極的に協働することで、地域の特性に応じた官民連携の事業が実現するのではないかと思う。
取組について記載したホームページ
やわたはま銀座バスケット公式ホームページ https://obfoods.co.jp/publics/index/32/#sp_section45
※必要に応じて、八幡浜市子育て支援課が管理する八幡浜市子育て応援サイト「はまっこ」に記事を掲載
問い合わせ先
愛媛県 八幡浜市 子育て支援課
0894-22-3111