取り組み概要
今後の日本のインフラとなるマイナンバーカードの普及促進について、自治体のみで普及促進を図るのではなく、様々な主体と連携し普及促進を図ることで、ゼロ予算でありながら多様な取り組みを実現した結果、マイナンバーカード普及率は7月時点で38%を超え、市区別日本一となっている。
取り組みの方向性は大きく2つあり、1つ目は官民連携によるマイナンバーカードの魅力向上、2つ目は官民連携によるマイナンバーカード申請環境の創出であり、多種多様な連携は、他自治体の追随を許さない。
取り組み期間
平成28年度~(継続中)
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
背景・目的
国は令和4年度中にほとんどの住民がマイナンバーカードを保有することとしており、プレミアム商品券の電子版であるマイナポイントや健康保険証利用等の利活用も示されていることから、自治体はカードの普及促進に注力している。
しかしながら、必要性を感じない、申請が面倒であること等が支障要因となって、普及促進が進まないことから、自治体単体の取り組みでは限界があった。実際にマイナンバーカードの全国平均は令和2年5月時点で16%に留まっている。
取り組みの具体的内容
1、官民連携によるマイナンバーカードの魅力向上
カードの普及促進を図るために重要な要素の一つ目はマイナンバーカードの魅力向上である。都城市ではマイナンバーカードの魅力向上のため、企業等と連携した取組を進めてきた。
具体的にはマイナンバーカードをお持ちの方へ特典を付するものだが、地元信用金庫(事例1)とは定期預金の金利をアップさせる取り組みを実施した。この取り組みは大好評であり、当初2億円の募集だったものが、追加募集され、計6億円の預金となった。
また、マイナンバーカードの普及率は20代、30代が低いとの分析から、ターゲットを若者に絞り、地元銀行(事例2)とは子育て応援ローンの金利を下げる取り組みを実施した。
金融機関は、マイナンバーを伴う身分証明書が、窓口効率化に繋がることから協力をいただいた。
さらに市内5箇所の温泉施設を運営する第三セクター(事例3)とは、リピーターの獲得や市が補助する温泉券利用の際の円滑な本人確認を目的として、通常は1回の利用で1個押されるスタンプカードのスタンプを2個押すサービスを実施している。
加えて、本市ではマイナンバーカード認証により健診情報や予防接種履歴を正確に確認できる電子母子手帳サービスを実施しているが、当該アプリ内で子育てを応援する20社の飲食店(事例4)がお子様ランチ無料等のクーポン発行に協力している。
2、官民連携によるマイナンバーカード申請環境の創出
都城市は全国で初めてタブレット端末を使いマイナンバーカードを申請サポートする「都城方式」と呼ばれる申請サポートを制度開始から実施しており、この取り組みは全国へ横展開されている。タブレット端末は持ち運びができることが特徴であり、市役所以外でも申請サポートが可能である。市役所が庁舎内ではなく、庁舎外に出て行って行政手続きのサポートをすること自体がこれまでの行政になかった攻めの姿勢であり、市民から高い評価を得ている。
一方で、申請サポートの場の確保が喫緊の課題であり、公民館や市の公共施設で行う申請サポートには集客面で限界があったことから、民間をはじめとして様々な組織と連携した申請サポートの場の創出に取り組んでおり、そのほとんどが全国初の試みだ。
まずは、家族連れをターゲットとした商業施設(事例5)での申請サポートでは、イオンやドンキホーテ、auショップ等、9社で行っている。商業施設においては、従業員に加えて来店するお客様がターゲットである。従業員に加え入居者も対象となる介護施設(事例6)は10施設で実施、さらには職員だけではなく、生徒や保護者も対象とした保育園や学校等の教育機関(事例7)での申請サポートを51校で実施する等、従業員のみならず、対象者に広がりが見込まれる場での申請サポートを実施している。
また、従業員のみをターゲットとした申請サポートでは、金融機関はもちろんのこと、病院、運送会社、システム会社、酒造、畜産業者等、様々なジャンルにわたる企業(事例8)全70社で行っている。
さらには、宅建業協会等の協会組織(事例9)の総会等で行う申請サポートも6件実施している。
官民連携も重要なのだが、忘れがちな官官連携にも積極的に取り組んでいる。まず、平成29年から税務署(事例10)が確定申告会場を開設する際に、申請サポートの場を設置する取り組みを行っている。この取り組みはe-Taxを進めるためにマイナンバーカードを普及させたい税務署の思惑と合致しており、本市の事例をもとに国から各自治体に確定申告会場での申請サポートの実施を呼びかける文書が発出された。
また、ハローワークで行われる雇用受給説明会(事例11)において、申請サポートをする取り組みも開始し、説明会の中でマイナンバーカードに係る説明を実施する時間も頂いている。
宮崎県警察(事例12)とは、運転免許センターにおける申請サポートで連携を取っている。運転免許の更新等の際に申請をサポートするものである。
ハローワーク及び宮崎県警察との取り組みは、全国初で総務省のモデル事業となり、各地に展開されている。
これらの官民連携の際に、本市が意識をしているのが、可能な限りWin-Winの関係性を作ることである。例えば、商業施設における申請サポートの場合には、市のゆるキャラを投入して場を盛り上げるであるとか、市の職員がバルーンアートを習得し子ども向けにプレゼントをする等の取り組みを行っている。従業員向けの申請サポートでは、申請のみならず交付の際にも職場にお伺いしてお渡しすることで、窓口に一度も来ることなく受け取れる仕組みを構築している。確定申告会場においては、駐車券の処理を申請サポートコーナーで担うことで、税務署の負担軽減を図るとともに、声掛けのきっかけの場として利用している。
そして、民間キャッシュレス事業者を活用した電子版プレミアム商品券とでもいうべき、マイナポイント制度が9月から開始されることにともない、都城市はキャッシュレス事業者であるPayPay㈱といち早く、包括連携協定を締結した。
包括連携協定に基づく取り組みとして、PayPay㈱(事例13)により、自決済導入商店等に対してマイナポイント制度の説明とマイナンバーカード取得勧奨を積極的に実施していただいており、本市の営業チャネルが一つ増えた状態となっている。また、本市が作成したチラシも併せて配布いただいており、PayPay㈱が持つ圧倒的シェアと知名度を活かしたマイナンバーカード申請勧奨が進んでいることから、市のカード交付率の向上に大きく寄与している。
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
タブレットによる申請補助を全国初の取り組みとして導入していることから、全国で実施されている官民連携によるマイナンバーカード申請サポートについては、そのほとんどが都城市発である。また、官民連携の視点のみならず、一般的にはそれぞれの行政領域があることから、連携が難しいと言われる官官連携にも次々と取り組んでいる。
また、PayPay㈱とは、マイナポイント制度参画事業者が発表されて1週間後に包括連携協定を締結する等、民間と連携する場合には、他自治体では実現が難しいであろうスピード感を持って取り組みを進めている。
さらに、Win-Winの関係を作ることで、一度きりの点での取り組みではなく、継続的な線での取り組みを実現している。
取り組みの効果・費用
本取り組みはゼロ予算ながら大きな効果を生んでおり、都城市のマイナンバーカード普及率は38%である。これは、全国平均16%の倍以上で全国市区別日本一の数値である。
マイナンバーカード普及促進により、コンビニでの証明書交付割合も増えてきており、行政効率化が図られているほか、官民連携による申請場所の提供を時間数に直すと2,000時間程度になるため、当該時間の間、時間当たり1,200円の貸し会議室を借りて実施したと想定した場合には、240万円の効果が生まれたことになる。
また、マイナポイントは国予算であるため、マイナンバーカードを多く持っている自治体に大きくお金が落ちることになる。マイナポイント制度において、7月1日時点の数値をもとに、単純に人口比率で計算した場合、都城市の経済効果額の期待値は最大7億円となりますが、都城市のマイナンバーカード交付率により計算した場合、最大16億円と非常に大きな効果額が生まれることが期待され、地方創生、そして街の活性化に大いに資することになる。
さらに、職員が民間企業の職員と触れ合う機会が生まれたことで、職員が刺激を受け、前向きに仕事に取り組めるようになっており、街のデジタル化のためにスマホ等の高齢者教室を開催する官民連携の地域協議会が設立される等、マイナンバーカードを超えた新しい展開を見せつつある事業もある。
さらに、コロナ対応として特別定額給付金の支給についても、マイナンバーカードの普及率が高かったことから、スムーズかつ迅速な対応をとることができた。オンライン申請分としては、日本最速の給付を実現している。
取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
様々な組織に垣根を超えて協力をいただくため、マイナンバーカードを理解していただき、前向きになっていただくまでが難しい点である。本市では、一般企業向けの営業電話マニュアルを整備して、誰でも同じレベルで説明ができるようにしているほか、提案書を業種別に作成する等、工夫を凝らしている。
また、当該企業と関係が深い部署からファーストコンタクトを取る等きめ細やかなアプローチを行っている。
今後の予定・構想
これまで以上に官民連携を図っていくために、マイナンバーカード業務と関係がなくとも、企業との接触が多い庁内の担当者と連携して、営業強化を図っていくことで、マイナポイントの恩恵を最大限享受したいと考えている。
また、マイナンバーカードのみの連携に留まらず、マイナンバーカードをきっかけとして街に資するプラスアルファの協働での取り組みができるよう、創造的連携を志向して行く。
他団体へのアドバイス
他組織と連携をするに当たっては、「自分の仕事ではないと言わない」との精神で庁内体制を整備することが何よりも重要である。マイナンバーカードの発行や申請サポートを行う部局と、企画部局、そしてマイナンバーカードに関する関係各課が一枚岩となって取り組むことができれば、その熱で様々な部署や民間企業を巻き込んだ取り組みが進んでいくことが可能になる。また、簡単に達成できる目標ではなく、高い目標を持って、チームでベクトルを合わせていく必要がある。
また、カード取得者の属性分析等も様々なアイデアを生み出してくれるものと思う。
取り組みについて記載したホームページ
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/life/1/11/
問い合わせ先
宮崎県 都城市 総合政策課
0986-23-7161