ジチタイワークス

東京都品川区

官民連携による図書館と医療・介護の複合施設の建設・運営

取組概要

◆区有地を定期借地権設定契約(50年)により民間事業者へ貸付、隣接区有地との合理的な設計が可能となる連担設計制度を活用し、区立図書館と病院・老健等の複合施設を建設(平成30年6月開設)
 〇建物概要:地上8階建て/地下1階  延11581.36㎡(うち図書館 1528.75㎡)
 〇所在地:東京都品川区北品川5-2-1
 〇事業概要: 
  ・区立図書館
  ・老健(介護老人保健施設) 100床
  ・通所リハビリテーション 定員30名
  ・訪問看護ステーション・訪問リハビリ
  ・病院(リハビリテーション病床等)130床、外来等
建物外観
◆全国的にも珍しい図書館と病院・老健施設の合築であり、地域に身近な図書館として運営していくとともに、病院から在宅までシームレスなサービスを提供する、本区における地域包括ケアシステム推進に向けた中心施設としての役割を担っている。

取組期間

◆平成25年度~30年度(計画~建物竣工まで)
◆平成30年度~現在(運営中)
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

【背景】
◆本件敷地に隣接する区立小学校の改築にあたり、新校舎の配置計画により生じた用地と、当該地区の再開発組合から寄付された用地を合わせることで一定規模の整形地となったため、土地のポテンシャルを最大限に生かした有効活用を検討していた。
◆計画構想当時、区内に老健施設が1か所しかなく、介護リハビリ拠点の充実を図る必要があった。
◆別敷地にあり老朽化した図書館の施設更新と、本件地区において東京都地区計画で規定されている「文化教育機能の充実」を図る必要があった。

【目的】
◆上記をふまえ、敷地を最大限に活用し必要な機能(図書館、老健)等を備えた施設を建設することで、行政需要に対応する。
◆併せて民間活力の導入を図るとともに、財政負担の抑制、土地活用による新規財源の確保を図る。

取組の具体的内容

【計画から建物建竣工まで】
◆隣接する小学校敷地を一体とみなした容積率等の適用を受ける、「連担設計制度」(建築基準法第86条第2項)を活用した。
◆50年間の「定期借地権設定契約」(借地借家法第22条)活用により長期的新規財源の確保を図った。
◆民間事業者選定にあたり、本敷地における施設の整備・運営にかかるプロポーザルを実施し、提案必須事業(老健、通所リハ、訪問看護等)と合わせ、民間活力活用の観点から自由提案事業の提案も可能とした。
◆施設建設は、民間事業者が設計・整備を行い区施設(図書館)にかかる費用を負担金として支払う形とし、老健整備等にかかる財政負担の軽減を図った。

【開設後の運営】
①    病院・老健施設の取り組み
◆「品川リハビリテーションパーク」として、医療ケアと介護サービスを一体的にとらえ、病院から在宅までのシームレスなサービスを提供している。
◆また医療・介護の研修・実習の場として養成学校等へ協力し、介護福祉士やヘルパー養成にも寄与している。
◆さらに災害時における拠点施設としての機能(救急患者受入、福祉避難所)も備える。②    図書館の取り組み
◆闘病記を中心に健康について考える書籍を収集した“健康コーナー”、日々発展するビジネス街大崎を支える“企業情報コーナー”を常設。また、病院施設利用者への図書館資料の提供などを行い、子どもから高齢の方まで生活の各場面に寄り添った「ライフサポート図書館」をコンセプトに運営を行っている。
③図書館と病院・老健の連携による取組み
◆図書館と病院・老健施設の共催による「健康」をテーマとした住民向け講演会の実施や、福祉に関する様々な体験や情報収集ができる催しを行うなど、サービス提供だけでなく住民に身近な施設として特色をいかした教養の場としての取り組みを行っている。
施設で開かれた講演会やイベントの様子

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

◆連担設計制度の活用により、敷地・容積を最大限に有効活用した施設建設を行った。
◆定期借地権設定契約により50年間の長期的な新規財源を確保した。
◆事業者選定プロポーザルで、老健等の必須施設だけでなく病院、通所、訪問事業などを組み合わせたシームレスなサービスを提供する独創的な提案を採用し、地域包括ケアシステムの中核を担う施設を整備した。
◆施設整備にかかる区との役割分担について、設計・建設までを一貫して事業者が行い、民間事業者の創意工夫を取り入れつつ、随時区と協議・承諾を経る形としたことで区の意向を担保できる形とし、区の経費負担・事務負担を最小化した。

取組の効果・費用

◆連担設計制度により追加で4,700㎡(約70%増)の床面積を確保でき、土地確保が難しい都心部において効果的な事業設計を行うことができ、多様な機能を持った施設となった。
◆定期借地権により新たに年間数千万円の新規財源を確保した。
◆施設建設にあたり、民間事業者による整備としたことで、数十億円規模の財政負担の軽減を図りつつ必要な行政需要に対応することができた。(参考: 100人規模の特養建設費(平成29年度) 約45億円)
◆不足していたリハビリ拠点としての機能だけでなく、急性期から在宅までの包括的な支援拠点であり地域包括ケア推進の中心として相乗効果のある福祉サービスを提供している。
◆病院・老健と図書館という特徴的な複合施設としての特性を生かし、健康・医療等に関する情報提供の充実やセミナー・イベントの実施による住民サービスの向上。

取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

◆50年の長期間、事業を運営する事業者の選定
◆区と事業者で締結する基本協定書や契約書の作成・内容調整・精査
◆事業計画にかかる議会・地域住民等への説明・調整

今後の予定・構想

◆病院・老健施設としては病院から引き続き本区の地域包括ケアシステム推進に向けた中心施設とし多様なサービス提供を行っていく。
◆図書館としては、当該地域の特色でもある高層マンション等により増加する住民にとって身近な図書館であるとともに、集積するIT企業をはじめ在勤者にとっても必要不可欠な情報拠点として充実を図る。
◆今後図書館が主催する認知症カフェについても実施を検討しており、病院との連携によるプログラムの検討や、本の紹介などを行う予定。

他団体へのアドバイス

◆複数のプロジェクトが同時並行的に動く中で、メリットを最大限に発揮した事業計画を進めるためには、企画部門が機動的に様々な所管・事業者・関係団体との密な連携・調整を行うことが重要。
◆複合する施設種別は、ジャンルが違っても双方が実施する事業についてWin-Winの関係で連携・協力することで事業の広がりや可能性が出てくる。

取組について記載したホームページ

https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/shinagawaphotonews/shinagawaphotonews-2018/20180519150054.html

https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/shinagawaphotonews/shinagawaphotonews-2018/20180601143359.html

https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/shinagawaphotonews/shinagawaphotonews-2018/20180626105535.html

https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/shinagawaphotonews/shinagawaphotonews-2019/20190324115952.html

問い合わせ先

東京都 品川区 企画調整課
03-5742-6607
 

【行革甲子園】全国の自治体の創意工夫あふれる取り組みを紹介! 記事一覧

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