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【相談室】政策立案できる企画力を身に着けたいです

「何でこうなってるの?」「もっとこうならいいのに」毎日仕事をする中で、頭をよぎる疑問や悩み…そんな「モヤモヤ」を、一歩先ゆく公務員の皆さんに解決して頂く企画。

第7回は、これからの公務員に必須の「企画力」について、福岡県糸島市の岡祐輔さんに執筆頂いた。

【今回のモヤモヤ】

政策立案できる企画力を身に着けたいです。まず何から始めたらいいでしょうか?

これからの時代の公務員にとって「企画力」が重要であると言われていますが、昔から「アイディア出す」ということが苦手でした。企画力を身につけるために、何から始めたらいいでしょうか?

 

このお悩みはとても多く、公務員の皆さんが最も必要としている能力ではないでしょうか。2016年の日本能率協会の調査でも、以下のような結果になっています。

企画力の必要性の高さは去ることながら、政策立案するために新規提案が出ない、企画力向上の経験機会が欲しいといった企画力にまつわる項目が上位を占めています。

まず、企画力とは何でしょうか。

企画という言葉を分解してみると「計画」を「企てる」となり、行程などの計画部分と画策する戦略部分の2つに分けられます。

この計画と戦略の観点で、好きな人のハートを射抜くことに置き換えて考えると、わかりやすいと思います。皆さんも限られた時間やお金、協力者などの資源を活用して、ゴールまでの行程を考えたり(計画部分)、1つ1つのサプライズを考えたりして(戦略部分)、成功の道筋、つまりストーリーを考えるはずです。企画は「ゴールまでのストーリーを描く」ことが大事です。


 

私は、奇抜なアイデアを思いつくより、地味でも、地道でも、組織や事業にとって効果の高い計画を立てることが大事だと考えています。では、もっと細かく計画と戦略の2つに分けて考えてみましょう。

1 計画を立てる

ゴールまでのストーリーには、スケジュールがあり、有限な予算や人材があります。政策を考える、つまり企画するときの計画部分は、3つのことをおさえます。

・スケジュール

・予算

・体制

正直、この3つさえ入っていれば、最低限、企画書としての体裁は成されます。

スケジュールでは「いつ、何をやるのか」を明確にします。企画が通った後も、スケジュールに沿って進めていくため、最も大事な要素と言っても過言ではありません。自分の資料作成などの事務的なスケジュールだけでなく、市(町村)長協議、議会への説明、審議会などの会議、庁舎内の幹部会議、外部関係機関との協議、上司への説明など細かく立てておく必要があります。

次に予算では「何にいくらかかるのか」、先進地の事例や見積書を取るなどして金額をしっかり見積もっておきましょう。費用と収入がわからなければ、提案を受ける側も判断のしようがありません。その際に、財源には補助金を使うのか、純粋な自治体の持ち出しがいくらか、2年目以降の費用(ランニングコストなど)がいくらかまで積算します。

そして最後に体制です。「誰がやるのか」を明確にしておきます。スケジュールと予算が盛り込まれていて、これが抜け落ちていることがよく見受けられます。覚えがありませんか?自治体の内部だけではなく、政策コンペや研究報告会などでも、誰がどのように進めるのかが入っていないために、とてもよい提案であっても絵に描いた餅で終わってしまうこともあります。

どこの部署で所管するのか、地域や企業と協議会を作るのか、委託事業でやるのかなど実施体制をしっかり盛り込んでおきます。提案が提案だけで終わってしまうのは「どのような体制ならやれるのか」まで企画の中に盛り込まれていないのです。

実現可能性が高いことは、企画力を高める重要な要素です。そのためにこの3つはすべて落としてはいけません。

2 戦略を立てる

次に画策する、企てるといった戦略的な部分を解説します。

最初に紹介した好きな人のハートを射抜くことを例にとっても、ゴールまでの道筋は1つではないことがわかると思います。あなた自身がその戦略(道筋)を選んで、スケジュールが決まり、予算や人材の配分が決まります。

どのような道でゴールにたどり着くのか、その戦略を考えるときに、次に紹介する4つのPがとても助けになります。

・Product(製品、商品、サービス:どのような事業にするのか)

・Price(価格:どのような料金で利用できるか)

・Place(流通、販路:どこで利用できるのか)

・Promotion(宣伝:誰に知ってもらうか)

どんなに良い事業を考えても、利用できない場所にあって、誰にも知ってもらえなければ、企画倒れになってしまうことがご理解いただけると思います。

以下の表は、好きな人に対してハートをどのように射抜くか、4つのPを使って考えた例です。お花を贈ると、自宅の前に届き、さらにカードやLINEなどでメッセージを送ってPRまでできます。

この表を埋めることが自動的に1つの企画になっていませんか?ただ注意点は、この4つのPは相手にとって価値のあるもので、自分の欲しいサービスや自社の予算ではありません。前で解説した「計画」とは異なります。

もう1つは、政策で考えてみます。どの自治体にもある、ふるさと納税を例に表を埋めてみました。

ふるさと納税は、ほとんどの自治体が同じポータルサイトを利用しており、Place(販路)は差がつきません。Promotion(宣伝)も、不特定多数への過度な宣伝は規制がかかっています。そして、多くの自治体では15000~20000円くらいの寄附額が多いのではないでしょうか。すると「商品(Product)が最も大きな鍵を握る」と考えると効果的、効率的な策略を練ることができます。まずはここに選択・集中し、「この寄附額層のリピーターの行動を調べて、返礼品のテーマパークをつくろう」というように企画します。

さらにこの4Pを使って「それぞれの役割で得意としている相手と組めないか」を考えるツールとして使うことができます。

返礼品を増やすだけでなく、「コンシェルジュ機能を入れて、年間複数回に分けてオススメの品を発送しよう」「コンシェルジュで通常寄附額よりお得になるようにしよう」「観光客が訪れる市内土産・飲食店にパンフレットを置いてもらおう」「寄附者にアンバサダーになってもらって、サイトの中で登場してもらおう」というように連携相手を考えることによって、新しいアイデアも浮かびます。

この段階・過程で、効果が高い企画を生み出すために、寄附者データで分析したり、複数人でブレーンストーミングをしたり、サービス対象にヒアリングしたり、現場で観察したり、アンケートをとったり、試作販売してみたり、ここに最も時間をかけ、徹底的にターゲットの役に立つ事業を考えるのです

そして考え抜いた事業を成功させるために、開始後にリピート回数ごとの利用者の属性などを測定できるように指標を設定したり、当初の委託費にその調査費まで含めたりして、改善を繰り返し、ゴールに到達するのです。むしろこちらが大事といえます(PDCA)。

好まれているサービスなのに、利用しにくい、知らないなど、ネックがPlaceとPromotionにある場合は、お金で解決することが比較的容易です。どこに問題があるか見極めるためにも、いつも4つのPを同時に考える必要があります。

今回は若手の職員の皆さんに向けて、企画力を磨くために何から始めるかを解説してきました。

計画と戦略に分け、計画は、3つの「スケジュール」「予算」「体制」をしっかり押さえること。そして、少しレベルがあがりましたが、戦略は4つのPを考えることです。

第1回目の相談で「他自治体の真似の仕方」を解説しましたが、これも企画するときに視察をするのならば、サービス部分(Product)を聞くだけでなく、スケジュールなどの3つの要素に加え、利用場所、使った宣伝媒体、結果としてどのくらい利用者数だったのかなどを聞きに行けば、効果を高め、説得力ある企画を提案し、実現可能性も高まるはずです。

このようにいろいろな場面で、思い出してもらえば、企画が進むと思います。

企画力は簡単には身につかないと思いますが、実践し、何度もチャレンジしていくことできっと力をつけることができるはずです。

記事内画像/岡祐輔さん提供


岡  祐輔(おか ゆうすけ)

糸島市企画部経営戦略課主任主査。MBA(経営修士)。

2003年に福岡県二丈町(現・糸島市)に入庁。民間の経営手法を公共経営に活かすため、仕事の傍ら、九州大学ビジネススクールに飛び込み、MBA取得。2016年に「地方創生☆政策アイデアコンテスト」で地方創生担当大臣賞を受賞。受賞した政策を実施した「糸島マーケティングモデル」は「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー2018」で地方創生賞(コト部門)を受賞。これらの功績により、地方公務員アワード2018を受賞。著書に 『スーパー公務員直伝! 糸島発! 公務員のマーケティング力』 (学陽書房)「地域も自分もガチで変える!逆転人生の糸島ブランド戦略」(実務教育出版)がある。


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