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【相談室】年上の部下や、やる気のない部下に対してどう接していいか分かりません。

気づけば中堅と呼ばれる立場になり、業務範囲も仕事量も増え、さらには結婚・出産・子育てとライフスタイルも変わったことで、ますます忙しく過ごす日々。仕事と生活とのバランスを考えると、今後のキャリアについて悩みや不安を抱えている方も多いでしょう。

今回は、初めて部下ができたものの、年上の部下や、やる気のない部下に対してどう接していいか分かりませんといったお悩みに、山形市 健康医療部 健康推進課課長の後藤 好邦さんに回答いただいた。

【連載】
case1:出世しても増えるのは仕事と責任ばかりでこの先が不安です。

case2:係長として期待される役割を果たすために何ができるでしょうか。
case3:忙しく時間がない中、課外活動に取り組むべき理由が分かりません。
case4:年上の部下や、やる気のない部下に対してどう接すればいいか分かりません。←今回はココ
case5:どうすれば組織横断的な取り組みや官民連携事業を上手に進められますか?
case6:年上の部下や、やる気のない部下に対してどう接していいか分かりません。

お悩みcase4

今年から係長となって、初めて部下ができました。ただ、部下の中には年上や仕事に対してやる気がないと感じる人もいて、正直どう接していいか分かりません。年上の部下や、やる気のない部下に対する接し方について教えてください。

私が思う部下をもつということは。

私が係長になったのは、入庁してから20年目、42歳のときでした。以前もお話しましたが、このときが公務員人生の中で最も大きな転機だったと感じています。

それくらい部下をもつことはインパクトの大きな出来事でした。あれから10年が経ち、係長、課長補佐を経て、今では課長となり、部下への接し方もだいぶ慣れてきたと感じます。

しかし、それでもなお、まだまだ悩むことが多い状況は続いています。他者に責任をもつということは、それくらい大変なことです。

お悩みのとおり、年上の部下に対しては、どうしても、やりにくさを感じるものです。私は過去に係長を7年間務めましたが、この間で年上の部下をもつことはありませんでした。

しかし、課長になってからは、年上の部下がいることは当たり前になっています。実際に現在も室長や課長補佐、一部の係長は年上という状況です。また、仕事に対して前向きでない職員についても対応が苦慮するところです。

変化を好まず、前例踏襲で仕事を進めようとする部下が存在すると、課内や係内の士気に関わります。これらのやりにくさを感じる部下への接し方について、今回は、私なりの考えや実践方法をお伝えします。

年上の部下に接するときの4つのポイント。

年上の部下に対する接し方ですが、私は4つのポイントを大切にしています。まずは、丁寧な言葉遣いで礼儀を重んじることを徹底しています。

部下とはいえ、年齢が上であることは紛れもない事実です。ため口のような、なれなれしい口の利き方をすれば、課長といえども相手は面白くないでしょう。

そのため、基本的には敬語で話します。長幼の序を重んじ礼節ある対応をとることで、年上の部下が気持ちよく仕事に取り組めるよう配慮します。

次に、自分の意見は遠慮なくはっきりと伝えるようにしています。

年下ではありますが、私が上司であることに違いはありません。最終的に責任をとるのは自分です。たとえ年上だからといって、「このように判断したのは、○○さんが言ったからです」と責任を部下に押し付けるようなことはできません。

だからこそ、遠慮することなく、自身の意見や考えをはっきり伝え、自身の責任のもとで判断するようにしています。なお、これは年上の部下に限ったことではありませんが、意見や考えを伝える際には、その根拠や理屈が相手に納得してもらえるよう十分に留意するようにしています。

その次に、必要に応じて頼ることもしています。例えば、「経験豊富な○○さんにお願いしたい」などと伝えながら、若手職員など部下の指導などをお願いする場合があります。

年下から頼られると何となくうれしいものです。そうした意識を上手に利用しながら、課長になったときの予行演習として課長の役割の一部を担ってもらうようにしています。

そして最後に、上司として尊敬されるような言動を示すよう心がけています。正直、これが一番難しいことであり、具体的なことをお話しにくいことでもあります。

ただ、上司と部下との関係性で大事なことの一つに、部下からの信頼や尊敬を上司が受けていることが挙げられます。特に、年上の部下の場合には、“こいつ年下なのにすごいじゃないか”と思ってもらえるような資質を示すことで信頼度は一気に高まります。

この4つのポイントに留意しながら、年上の部下との信頼関係を構築し、働きやすい環境を整えるようにしています。なお、お気づきかもしれませんが、4つのポイント、特に2つめと4つめのポイントは、いずれも年下の部下にも当てはまることです。

やる気のない部下に対して上司としてできること。

続いて、やる気のない部下に対する接し方についてです。

性善説かもしれませんが、公務員は他職種よりも地域貢献などに関心をもつ傾向が強く、実際にそうした調査結果もあることから、まるっきりやる気のない人材はほぼいないと思っています。

一方で、これまでやってきたことがベストと考え、変化を望まない人材が他職種よりも多いように感じます。こうした傾向がお役所仕事という言葉に代表されるような融通が利かない、前例踏襲といった公務員のイメージにつながっていると感じています。

やる気のない、言い換えれば、変化を好まない部下に対しては、こうした特性を逆手に取った手法を用いて接するようにしています。その具体的な内容について2つご紹介します。

一つが、この取り組みをしなければ余計に仕事が大変になると伝えることです。これは決して脅しやうそをついてやる気にさせるといった発想ではなく、単純に事実を伝えるということです。

10年前に比べて、時代の変化のスピードがより一層早くなっていると感じることはありませんか。恐らくそうした社会だからこそ、そのスピードに乗ろうとしている若手職員や、そのスピードに恐怖心や嫌悪感をもつベテラン職員が、早期退職の道を選んでいるように私は感じています。

絶えず変化していく状況の中では、後手にまわればまわるほど、その後の対応は大変になります。単純に、そのことを伝え、今取り組んだ方が後々大変な状況を回避できることを伝えることで、部下の努力を引き出すということです。

なお、相手の努力を引き出すインセンティブ設計には、“これに取り組むと地域の人が喜びますよ”と声がけするような、前向きにやる気を引き出す方法と、“これに取り組まないととんでもないことになりますよ”と声がけするような、危機感をあおる方法の2つがあります。このうち、後者の心理をついたやり方です。

もう一つが、全てを部下に任せないことです。「どうして彼は前向きに取り組まないのだろう」と愚痴を言っているだけでは、いつまで経っても、その部下が前向きに仕事に取り組むことはありません。

部下が動くように上司が仕掛けることが大事です。具体的には、部下が取り組むべきことの一部を私があえて行うことがあります。

例えば、なかなか初動が起きない仕事に関して自ら資料を作成し、「仕事が大変そうだから、ここまでやっておいたよ。あとはよろしく」と伝え、部下が動き始めないといけない状況をつくることです。

うすうすでも自分がすべきと思っていることを誰かがしてくれると人は罪悪感をもち、その借りを何かで返そうとします。こうした心理を利用したやり方です。

チームの士気向上のため前向きに挑戦し続ける。

ここまで2つの方法をお話してきましたが、必ず成功するとは限りません。全く効果がない場合もあると思います。そのため、皆さんの選択肢の一つとして活用いただけたらと思います。

部下のやる気を引き出すこと、さらに部下の能力を伸ばすこと。こうした部下の意識向上と人材育成に取り組み、チーム力を高め、業績向上を達成することが係長や課長の使命です。

そのために日々、試行錯誤を重ねながらチャレンジし続けることが大切です。これからも鍛錬し、より良い方法を模索しながらお互い前向きに取り組んでいきましょう。

■関連記事|チームを作るためにマネジャーは○○になる?うまくいくスタッフとの関係作り

 

case5へ続く

どうすれば組織横断的な取り組みや
官民連携事業を上手に進められますか?

 

 

後藤 好邦(ごとう よしくに)さん

山形市 健康医療部 健康推進課課長。1994年入庁。納税課、高齢福祉課、体育振興課冬季国体室、企画調整課、都市政策課、行革推進課を経て現職。総合計画の進行管理や次期総合計画の策定、仙台市との連携などを担当。自治体職員が横のつながりをもつ機会を生み出すため、2009年6 月に岩手県北上市の職員らとともに「東北まちづくりオフサイトミーティング」を発足し、会員を900名になるまで拡大させるなど、人・組織・地域・色々なものをつなぎ、東北、そして日本を元気にするための活動を実践している。

著書:

 

 

 

 「自治体職員をどう生きるか 30代からの未来のつくり方」(学陽書房)

 

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