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【相談室】他の自治体の事例を真似するのではダメなの?

「何でこうなってるの?」「もっとこうならいいのに」毎日仕事をする中で、頭をよぎる疑問や悩み…そんな「モヤモヤ」を、一歩先ゆく公務員の皆さんに解決して頂く企画。

第2回目は、自治体職員であれば誰しもが経験するテーマについてです。

【今回のモヤモヤ】

「他の自治体の事例を真似するのではダメなの?」

他自治体の先進的な取り組みを真似しようとしていたら、周りから「よそのマネをしたところで、うちの自治体でもうまくいくの?」と言われ、悩んでいます。


市の方針で「うちの町でも、○○の取組を検討しなさい」と上司から指示が出たり、課題解決の参考にするときに「先進的で上手くいってそうだな」と目新しさ以外に判断基準がなかったり、はたまた「自分のまちに合うかどうかわからない」という周りのアドバイスを受けてモヤモヤしたり。他の自治体の事例を真似する機会は意外と多く、誰もが経験することです。

うまく行きそうなことは、どんどん真似して、うまく行きそうにないなら真似する必要はない、ということは皆さんが理解しているはずで、結局は「真似のしかた」に悩んでいる公務員の人たちが多いのではないでしょうか。

多くのアドバイスを受けても「具体的にどう考えれば、自分の町の参考になるかわかるの?」という質問に対して、なかなか答えがありません。

そこで、私が考えている方法の1つを紹介します。

「真似る」前にチェックすべき3つの視点

まず「真似る」ということは「似ている」ことが条件です。ものまね芸人も、もともと顔、声、芸風など似ている条件が何もないのに、真似ようとはしないはずです。自分の町と似ている部分をチェックする、又は自分の町をまず分析して似ている町を探す、といったことが考えられると思います。

そのときに、真似する町と同じような資源があるか、真似できる組織体制があるか、周りの環境も似ているかの3つを考えます。

①内部の資源  ②内外の組織体制  ③外部の環境

1つずつ見ていきましょう。資源は、例えば同じように農林水産物があるのか、学校、スポーツ、病院などの施設を持っているのか、特定の産業が発達しているのか、など町によって多くの違いがあります。

例えば糸島市で大きな成功を挙げている生産者の直売所「伊都菜彩(いとさいさい)」には多くの視察が殺到しています。しかし、巨大な直売所の棚を地元産品で埋めるだけの農業者や漁業者がいなければ、他地域の仕入品や観光地で目にするご当地土産ばかりになり、本来の直売所の魅力はできません。後にも述べますが、直売所のお客さまは福岡市からのリピーターが多く、そのような人たちにとっては観光土産のような品は魅力が乏しくなります。多くの売場面積を地元の農水産物で占有する必要があるのです。もともと地元にはない資源なのに、「先進的だから」という理由で真似しても、町の長所や特徴を発揮できません。まずは、真似できる資源を持っているかどうか考えてみてください。

2つ目は政策を実行できる組織、つまり町の体制や連携体制があるかどうかです。

内部に専門人材がいる、予算や職員の事務量が同程度で実現的である、地元や域外の民間企業と連携できる関係がある(又は作ることができる)、などです。

糸島市の直売所の事例でも、糸島市は1農協1漁協で、市とも大変良好な関係を築いており、地域全体で協力できる体制があります。他にも視察が多い岩手県紫波町のオガールプロジェクトも、地元にバレーボールのキャンプなどを誘致できる人材がいる、徳島県神山町の2地域居住も、東京のIT企業へのパイプを持っている人材がいる、といったように、成功する人材や連携体制があって成功しやすくなります。実現可能な実施体制で、事業を行っているところを真似してみてください。

3つ目は、周りの環境です。景観が似ている、気候や歴史が似ている、大都市に隣接している、などです。

極端な例を挙げれば、沖縄離島の海のアクティビティを他の町で真似ても、気候も旅行距離も違うなど、あまり参考にならないことがわかると思います。他にも近隣に大学が立地している、連携できる企業が集積する大都市に近接している、交通機関が発達しているなど、周りの環境が違うかどうかで、持っている資源が同じでも全く活用できなかったり、反対に不足する部分を補ってくれたりします。

1つ目の条件のところで述べましたが、糸島市の直売所で考えると、隣に福岡市があることは大きな成功要因です。このような地理的要因は、自分の町でコントロールできない外的要素なので、真似したいと考えたときに、自分の町の内部資源だけでなく、注意して周りの環境をチェックすることも大事です。

数字を使って表すことで、政策実現力がアップ

これまで3つの視点を紹介しましたが、せっかくなので付け加えると、これらの分析をするときになるべく数字で表すと、より政策実現力がアップします。
さきほどの直売所の例では、農業者の数や生産量のデータを真似したい町のデータや自分の町の近隣と比較してみると、より資源の一致度や強みがわかります。また福岡市から来訪する顧客数を3年目、5年目といったように把握しておけば、同様に自分の町の近隣大都市の人口に同じ増加率を掛ければ、何年でここまで成長させることができるといったように目標や政策の効果も一緒に予測することができます。

真似する目的がより効果のある政策をつくるためなので、ぜひここまで頑張ってみてください。プレゼン力や提案したときの役所内での実現可能性も大きく変わってくるはずです。そして真似するだけでなく、何かと組み合わせてみるといったアレンジも考えてみてください。


岡  祐輔(おか ゆうすけ)
著者写真
糸島市企画部経営戦略課主任主査。MBA(経営修士)。

2003年に福岡県二丈町(現・糸島市)に入庁。民間の経営手法を公共経営に活かすため、仕事の傍ら、九州大学ビジネススクールに飛び込み、MBA取得。2016年に「地方創生☆政策アイデアコンテスト」で地方創生担当大臣賞を受賞。受賞した政策を実施した「糸島マーケティングモデル」は「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー2018」で地方創生賞(コト部門)を受賞。これらの功績により、地方公務員アワード2018を受賞。著書に 『スーパー公務員直伝! 糸島発! 公務員のマーケティング力』 (学陽書房)「地域も自分もガチで変える!逆転人生の糸島ブランド戦略」(実務教育出版)がある。


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