人のためになる仕事を!という思いで公務員になったものの、若手の方は特に、失敗に対する恐怖心を抱いていたり、組織体制や風土にギャップを感じ、不安に思ったりしている方が多いのではないでしょうか。
今回は、今の仕事が自分のやりたいことではないため、モチベーションを高く取り組むことができません……といったお悩みに対し、元 島根県総務部 財政課長の芳賀 健人さんに回答いただいた。
【連載】
case1:ミスや失敗が多く、そのたびに落ち込んでしまいます。どう対処すればいいでしょうか。
case2:今の仕事がやりたいことではなく、モチベーションを高く仕事に取り組むことができません。←今回はココ
case3:上司との協議で思うように説明できません。何から気をつければいいでしょうか。
お悩みcase2
今の仕事がやりたいことではなく、モチベーションを高く仕事に取り組むことができません。
若い頃のスキルは将来へつながる
公務員の仕事は人事異動で配属が決まりますが、特に、行政事務の方は分野も幅広いです。希望どおりに配属される場合もあれば、そうでない場合もあるでしょう。それこそ、社会人1年目の方と話すと、思い描いていた仕事とは異なり、モチベーションが上がらないと悩む声も聞かれます。
ただ、個人的には、若い頃に身につけたスキルは、次の仕事につながったり、思わぬところで役立ったりすることがあるのではないかと思います。
私も昔、人事異動で、あまり関心のなかった部署に配属されたことがあります。しかし、不安な気持ちで異動してみると、思いのほか、その業務は奥深く、おもしろいもので、新たなスキルを学べました。
そして、次に異動した部署では、上司から「前の部署の仕事内容が、今のプロジェクトの参考にあるので詳しく教えてほしい」と言われ、当時の知識を活かして資料にまとめると、「とても参考になった、ありがとう」と声をかけられました。
自分の中で、点だった経験が線につながった実感がもてた瞬間でした。
こうした経験もあり、私自身、モチベーションに悩む職員さんと話す際は、“焦らず、腐らず、まずは目の前の仕事に向き合い、自分ができることを積み重ねてみてはどうか”とお伝えしています。
特に、1年目に身につけたスキルは、これからの仕事の基礎となることも多いので侮れません。これから色々な仕事にチャレンジするための足腰を固める時期と思い、少しでも前向きに取り組んでもらえれば、うれしいです。
自分なりのおもしろさを見出すこと
とはいえ、それでもモチベーションが上がらないことはあると思います。そんなときは、仕事に“自分なりのおもしろさ”を見出してみませんか。
その方法として、1つ目は“仕事内容そのもの”におもしろさを見出すことです。例えば、商工分野の課で、企業訪問など現場を見る機会にワクワクしていれば、きっと仕事内容におもしろさを見いだせている状態でしょう。
2つ目は、“仕事を一緒にする人”におもしろさを見出すことです。“仕事内容にそれほど関心を高くもてないものの、現場の同僚・上司が良い人で、仕事が楽しい”、そんなイメージです。
そのため、どんなに仕事がハードでも、人間関係が良い職場だと頑張れる!という方も多いのではないのでしょうか。私にも、“この人と仕事ができて良かった”と思える人が何人もいます。
3つ目は、“仕事の進め方”におもしろさを見出すことです。“上司の反応を予測しながら説明し、質問にも的確に答え、了解を得ることができた”など、自分がねらったとおりに進んでいくと、おもしろいと感じることもあるでしょう。
ゴールをどこに設定するかを考える
3つ目の視点に関連し、同じ仕事でも“自分の中でゴールをどこに設定するか”で、おもしろさが変わることがあります。
若い頃の業務によくある、データ入力作業を例に考えましょう。
まず、ゴールを“スピードアップ”に設定するなら、時間を計って取り組んでみます。
初回に1時間かかった作業も、次は40分以内で、と集中して取り組むようにゲーム感覚で続けていけば、処理速度の向上につながるでしょう。
次に、ゴールを“できることを増やす”に設定するなら、“もっとラクにする方法はないのか”とショートカットキーやExcel関数を探してみます。その過程を通じて、自分のパソコンスキルの幅が広がっていきます。
さらに、作業をするExcelがマクロや関数を活用して作成されていれば、その構造を読み解くこともあるでしょうか。構造が分かり、自分一人でつくれるようになれば、別の仕事にも応用可能な強い武器になるかと思います。
このように、同じ仕事でも、“何を意識するか、どういった水準を目指すか”によって、そこから得られるものは異なるような気がします。“その仕事の中から何を得るか”という視点も参考にしてみてください。
外の世界を見てみる
最後に、経験が浅くやりたいことが明確にない方は、外に目を向けて、やりたいことを広げてみてはいかがでしょうか。
例えば、書店でふと手にとった本から福祉に関心をもったり、スポーツ観戦に行ってスポーツ振興をしたいと思ったりする方もいるかもしれません。一歩踏み出した外の世界から、自分のやりたいことを広げていくイメージです。
また、今の仕事を出発点にやりたいことが広がる場合もあります。
目の前の仕事にしっかりと取り組み、上司の信頼を得て、“次は違う仕事を任せてみようか”と思ってもらえれば、新たな分野が見られるチャンスです。仕事の幅が広がるにつれ、その中から新たにやりたいことが見つかるかもしれません。
そう考えると、たとえ今の仕事がやりたいことではないとしても、頑張ることは決してムダにはならないように思えますね。
以上、仕事へのモチベーションをテーマに、お話しました。色々な考え方がある分野だと思いますが、少しでも参考になれば幸いです。
芳賀 健人(はが けんと)さん
元 島根県総務部財政課課長。福島県出身。平成25年に総務省に入省。長崎県、大臣官房、自治行政局などで勤務後、平成31年4月から令和5年3月まで島根県に出向。出向中、若手職員向けに仕事の仕方の連載に取り組み、令和5年3月に「知っていると仕事がはかどる 若手公務員が失敗から学んだ一工夫」(ぎょうせい)を出版。高等学校教諭一種免許(公民)取得。
著書:
「知っていると仕事がはかどる 若手公務員が失敗から学んだ一工夫」(ぎょうせい) |
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