「何でこうなってるの?」「もっとこうならいいのに」毎日仕事をする中で、頭をよぎる疑問や悩み…そんな「モヤモヤ」を、一歩先ゆく公務員の皆さんに解決して頂く企画。
第1回目は「異動」に対する素朴な疑問について、小金井市の堤直規さんに執筆頂いた。
【異動に関するモヤモヤ相談室】
公務員はなぜ約3年で異動しなくてはならないの? ←今回はココ
異動の希望は叶うものでしょうか?
希望外の部署に異動になった…やる気が出ません
【今回のモヤモヤ】
「公務員はなぜ約3年で異動しなくてはならないの?」
公務員には頻繁な異動がつきものですが、それはなぜなのでしょうか。一つの部署に長く留まった方が専門性が磨かれる気がするのですが。
こうした疑問を抱くのは、もっと長く一つの部署にいた方が能力は高まる/発揮されると思うからですね? 私も1部署目と2部署目は3年で異動になったのが残念で、当時はそう思いました。市職員として20年目、管理職となった今でも、どちらがよいのかと迷う部分があります。
頻繁な異動が行われる理由
拙著『公務員の「異動」の教科書』(学陽書房)でも書きましたが、一般的に①不正の防止②職員の能力開発③職場の活性化が、頻繁な異動の理由とされます。一定期間で異動すれば、特定の企業・団体等との癒着等が起きにくくなります。また、いろいろな業務を経験する中で様々な知識・スキルを身につけることができます。そして、メンバーの入れ替わりは職場の刺激にもなるという訳ですね。
しかし一方、不正防止には頻繁な異動だけでなくコンプライアンスを高めることが重要ですし、能力のうち特に専門性は3年半以上の長期的な経験を要するとされ、頻繁な異動が職場のパフォーマンスを下げる問題も指摘されます。どちらの考えも一理ありつつも、多くの自治体では頻繁な異動が必要という考え方に立っているということです。
若いうちは幅を広げて急成長を
私は、1部署目の情報システム担当を3年で、2部署目の国民健康保険税徴収担当も3年で異動になりました。当時の私は「もう1年でよいので残りたかった。もっとやりたいことがあったのに」と残念でした。しかし、今振り返れば、4年目も同じ職場で働くよりも異動して新たな業務を学んだことで自分の幅が広がり、現在につながっていると思います。
若いうちは伸び盛り。そして、仕事について一番勉強するのは、異動当初なのですよね。だから、頻繁な異動を若いときに経験すれば、その分だけ多くの業務を学ぶことにつながります。1部署に4年いるより、2部署目に異動する方がより多くのことを学び、経験し、そして多くの人とつながる機会を得ることができます。
ただ、そのためには、できるだけ早く独り立ちして、その職場の要となり、高度な業務を担うようになることが大事です。そうでなければ多くの異動を重ねても、初歩的な処理をこなすことを繰り返すだけということになります。職場4年目の職員が担うような業務を2年目・3年目で担ってから異動を重ねることができれば、急成長につながります。
「2カ月で覚えろ、3年先を見据えろ」
最初の異動の際に、私がメンターとして尊敬するYさんからいただいた激励の言葉です。
「そんな無茶な」と思う私にYさんはこう仰いました。「課長・係長であれば、4月に異動したら、もう6月には議会がある。2カ月で仕事の概要がわからなければ、答弁もできず、とても仕事にならない。もちろん、仕事のすべてをやってみる時間はない。だからこそ、ポイントをつかむことが大事だ。結局、仕事で大事なのは、ポイントをつかむことなんだよ」。目からウロコが落ちる思いがしました。
Yさんの言葉は続きます。「2カ月で仕事のポイントをつかんだら、3年先を考えるんだ。すると、自分がいる3年間で実現すべきことが見えてくる。公務員の仕事は、今年、予算要求をして、翌年度に執行する。そして、出納整理期間があるから、決算は翌々年の5月末になる。3年先を考えて、初年度から動かないと間に合わないんだよ」。
「2カ月で覚えろ、3年先を見据えろ」。異動の中で成果を出し、成長して、いきいきと働いている人の多くが実践している鉄則です。
異動は新たなステップに向かう扉
情報システム担当を3年間で異動となり、落ち込んでいる私にO課長が掛けてくれた言葉です。そして「扉を開き、頑張ってみなさい」と仰いました。その言葉が、確かに私の扉を開いてくれたと思います。次の職場で税務の面白さに気付いたことが、その後、納税課長として、メンバーとともに滞納整理を進める際の大きな財産となりました。
皆さんには、まだ見ぬ大きな可能性があります。扉を開けて、頑張ってみてください!
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堤 直規(つつみ なおただ)
小金井市行政経営担当課長、キャリアコンサルタント(国家資格)。
1971年生まれ(49歳)。東京学芸大学教育学部卒業、同大学院社会教育専攻修了。2001年小金井市入所。前職はIT関係。情報システム係、国保税徴収担当、企画政策係長、納税課長を経て、2016年から現職。2018年にキャリアコンサルタントとして登録。
著書に『公務員1年目の教科書』(学陽書房 2016年)、『公務員ホンネの仕事術』(時事通信出版局)等4冊。2020年度は月刊『ガバナンス』に「未来志向で考える!自治体職員キャリアデザイン」を連載。趣味は旅行と日本酒・ワイン。特にキャンピングカーでの気まま旅。