
公務員として働き始めたものの、毎日何を着ていけばいいのかわからず、服装に自信がない……。そんな思いを抱えている人も多いのではないだろうか。かつては「公務員=スーツ」のイメージが強かったが、働きやすさや環境への配慮から「クールビズ」も広がり、柔軟な服装を認める自治体が増えている。一方、服装の自由度が高まったことで、かえって悩みが深くなったという声もあるようだ。この記事では、公務員の服装に関する規定から近年の実態、クールビズに関わる先進的な自治体の取り組みまで、まとめて紹介。日々の服選びの参考にしてほしい。
【目次】
• 公務員の服装に決まりはあるの?
• 公務員の服装の実態は?
• 求められるのは清潔感と信頼感
• クールビズとは?
• ウォームビズとは?
• 「デコ活」とは?
• TPOに応じた服装で信頼と持続可能性を両立させよう
※掲載情報は公開日時点のものです。
公務員の服装に決まりはあるの?
公務員の中には消防士や警察官など決められた制服の着用が必須の職種もある。それ以外の公務員に服装の決まりはあるのだろうか。まずは法令や自治体の服務規定から確認しよう。
明文化された法令規定は存在しない
国家公務員法・地方公務員法のいずれにおいても、服装を定める直接的な条文は存在しない。警察官など職務の特性上、制服を着用する必要がある場合は職場の規定に従おう。
服務規定で「節度ある服装」求める自治体も
服務規定を設け、職員に対して「節度ある服装」や「清潔感」など配慮のある装いを求める自治体も多い。クールビズやウォームビズなど気温に応じた働きやすい服装を認める一方、式典や議会への出席時はネクタイやジャケットを着用するなど、詳細は個人の裁量に任されている。
公務員の服装の実態は?
公務員の服装については個人の職種や裁量、職場の文化などにより様々なパターンがある。どのような服装が主流となっているか部署や職種ごとに見ていこう。
部署・職種によって違いも
住民対応窓口のように対外的な業務が多い部署では、スーツやジャケットといったフォーマルな印象を与える服装が主流だ。
内勤や本庁企画部門などデスクワークが中心の部署ではオフィスカジュアルが徐々に浸透しており、スーツほどフォーマルではないものの、動きやすくビジネスシーンにふさわしい服装が人気となっている。
その一方、技術系職種では自治体から作業服や制服が支給される場合も多く、天候に応じて雨具や帽子、防寒着などを貸与する自治体もある。
求められるのは清潔感と信頼感
職種や部署による違いはあるものの、公務員に求められる服装のテイストは清潔感と信頼感という点は共通している。
最初はフォーマル寄りが無難
初出勤や来庁者への対応など、初対面の人と会う場面ではフォーマル寄りの服装が無難といえる。スーツやジャケットなど、かっちりした服装で信頼感を相手の目に見える形で表そう。
身だしなみは「見えない公務」の一部
公務員の身だしなみは「見えない公務」の一部でもあることを心に留めておきたい。服装を含めたその人の印象は、「しっかりしている」「信頼できる」と判断される要素のひとつ。住民との信頼関係にも直結するため、身だしなみを整えて印象管理に取り組もう。
自治体・部署の文化に適応する柔軟性をもつ
公務員の職種は幅広く、個人の裁量も認められているため、公務員の服装にはこれといった「正解」がないことも事実。職場の雰囲気に合わせながら、徐々に働きやすい服装にしていこう。自治体や部署の文化に適応する柔軟性をもつことが大切だ。
関連記事はコチラ
▶ 【連載】元公務員・イメージコンサルタントが語る~服の力のハナシ~
クールビズとは?
地球温暖化対策の一環としてあらゆる業種で取り入れられているクールビズについて、この機会におさらいしておこう。
環境省が推進する脱炭素型ライフスタイル
クールビズは冷房に頼らず様々な工夫をして、夏を快適に過ごすライフスタイルのこと。地球温暖化対策の一環として、平成17年度から環境省の呼びかけによってスタートした。室温の適正化と、その室温に適した軽装などを呼びかけており、ノーネクタイ、ノージャケットなど快適で働きやすい服装を促している。これまでクールビズは5月から9月を推奨期間としていたが、コロナ禍による働き方の変化や気候変動の影響による夏日の増加などを踏まえて、令和3年度以降は環境省による全国一律の期間設定が廃止され、通年運用に転換された。
自治体の取り組み事例は
全国の自治体で取り組まれているクールビズの事例を見ていこう。
茨城県水戸市
茨城県水戸市では令和3年11月1日から、ネクタイやジャケットの着用を個人の裁量で自由とするクールビズの取り組みを通年で実施している。公務員として品位を損なわない節度ある服装とすることや、式典出席など社会通念上必要と判断される場においてはネクタイを着用することに留意しながら、自主性を重んじた働きやすい服装での勤務を認める取り組みだ。
※出典:水戸市「ノーネクタイ等の働きやすい服装での勤務を通年実施します」
長野県箕輪町
長野県箕輪町では令和4年5月2日から、ノーネクタイなど軽装での勤務を通年で実施している。公務員として品位を損なわない節度ある服装や、式典などではネクタイを着用することなどはほかの自治体と同様。コロナ禍でのマスク着用による負担軽減や、省エネ・省CO2対策として涼しく働きやすい軽装での勤務を通年で認め、職員の自主性や個性を重んじながら、執務の効率化やストレスの軽減を図る方針だ。
こちらの記事もオススメ!
▶ スポーツユニフォームの着用もOK!クールビズ×地元スポーツの振興。
ウォームビズとは?
ウォームビズは環境省が平成17年の冬から提唱してきた、暖房時の室温を20℃で快適に過ごすライフスタイルのこと。地球温暖化対策をしながら冬を快適に過ごすためのもので、重ね着などの工夫で過度な暖房を控えようという取り組みだ。
冬季における省エネ服装の推進
ウォームビズでは衣食住を工夫することで、暖房を控えながら冬の間を暖かく過ごせるライフスタイルへの転換を目指す取り組み。そのうち「衣」では機能性素材の活用や、首・手首・足首の「3つの首」を温める服装、ひざかけやストールの活用を推奨。保温や発熱機能のある衣類を着用したり、適度な重ね着をしたりすることで、暖房に必要なエネルギー使用量の削減につなげる狙いがある。
岩手県
岩手県では平成17年度以降、ウォームビズに取り組んできた。例年、11月1日から3月31日までがウォームビズの期間で、室温19℃でも職員が快適に業務ができるよう重ね着や厚手のカーディガンなどの着用、温機能のあるインナーウェアや靴下の着用といった服装を推奨。併せてひざかけや座布団の使用も認めている。
※出典:岩手県「11月1日から「ウォームビズ」がスタートしました!」
「デコ活」とは?
デコ活は環境省が令和4年に立ち上げた、脱炭素のための国民運動のこと。二酸化炭素を減らす脱炭素(Decarbonization)と、環境によいエコ(Eco)を含む"デコ"と活動・生活を組み合わせた造語で、ライフスタイルの転換により省エネルギーで豊かな暮らしを実現しながら、2030年温室効果ガス削減目標の達成を目指す。正式名称は「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」で、愛称として「デコ活」が用いられている。
クールビズ・ウォームビズと連動。多様性ある服装を容認
デコ活はクールビズやウォームビズとも連動していて、サステナブル素材の着用や衣服の長期利用に加え、冷暖房を適正に使用するため多様性ある服装の容認が推奨されている。気温に応じて服装を工夫するクールビズやウォームビズは、省エネにつながることから「デコ活アクション」として評価されている。
埼玉県羽生市、静岡県島田市、神奈川県鎌倉市など
デコ活に取り組む「デコ活宣言」を表明しているのは、令和7年6月9日時点で3025の企業や団体。そのうち、国や自治体のデコ活宣言は382件で、埼玉県羽生市、静岡県島田市、神奈川県鎌倉市など全国の自治体が服装やライフスタイルの見直しなどによる脱炭素改革を推進している。
関連記事はコチラ
▶ デコ活とは?実践につなげるデコ活アクションと自治体事例をご紹介!
TPOに応じた服装で信頼と持続可能性を両立させよう
服装の規定が厳格に定められていない自治体が多い中で、職員に求められるのは「信頼感」や「清潔感」が感じられる節度ある服装だ。脱炭素社会を目指す「デコ活」により、地方自治体でも多様性ある服装が容認されつつある。TPOをわきまえた上で、自分にとっても働きやすい身だしなみを心がけたい。