香川県三豊市

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【座談会】「α´モデル」移行が自治体業務にもたらす変化とは?三豊市の実践から考える。

情報政策
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【座談会】「α´モデル」移行が自治体業務にもたらす変化とは?三豊市の実践から考える。

自治体DXの進展に伴い、セキュリティと利便性を両立するネットワーク基盤の整備が重要なテーマとなっています。そうした中、三層分離を前提としつつクラウド活用を可能にする「α´モデル」が、現実的な選択肢として注目されています。

本記事では、α´モデルを採用した香川県三豊市の取り組みを軸に、移行を決断した背景や運用面での工夫・導入後の効果を整理。あわせて、ガイドライン改定検討会委員の視点と、ソリューションを提供する事業者の知見も踏まえながら、α´モデル移行が自治体業務にもたらす変化について解説します。

※掲載情報は公開日時点のものです。

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クラウド活用を見据えて「α´モデル」を選ぶ。

― 三豊市は昨年、α´モデルに移行しました。取り組みの背景をお聞かせください。

三豊市:北岡 千宙氏
三豊市:北岡 千宙氏

北岡:以前利用していたグループウェアのサービス終了に伴って、次をどうするか考えたのがきっかけでした。今後の職員の働き方を考えると、クラウドサービスの活用が最有力候補になります。また、当市では業務用スマホを導入していたので、スマホと連携したシステムを目指し、そこから逆算してα´モデルの構築に至った、という流れです。

髙橋:総務省が令和7年10月に行った調査の速報値では、αモデルの自治体が82.6%で圧倒的に多いのですが、すでにα´モデルに移行済の自治体も8.2%という結果です。

興味深いのは、「次期更新時にはどのモデルにするか」という設問に対し、「未定」に次いで多かった回答がα´モデルだったということ。北岡さんのおっしゃる通り、新しい自治体DXに沿った働き方を考えたらそうなるのが自然です。私も自治体にアドバイスを求められたら、まずはα´モデルでクラウドに直接抜けられる仕組みをつくっては、とアドバイスしています。

後藤:お二人の話、非常に参考になります。当社もα´モデルを以前から提案していたのですが、当初は懐疑的な声もありました。しかしガイドライン掲載以降は、α´モデルに関する相談を受ける機会が増えています。特に多いのは、Microsoft365導入や移行に伴う接続方式についての相談や、「どのクラウドサービスが業務効率化に適しているのか」といったものです。コミュニケーションツールの利用経験がないと実感をもちづらいので、具体的な事例などをまじえて説明することが多いです。

三層分離を維持しつつ利便性を高める選択肢。

  ― ほかの選択肢もある中、α´モデルを採用するメリットは?

北岡:検討段階ではβやβ´モデルも俎上に上がりました。そうした中で根幹にあったのが、「地方自治体は何をするところか」という主要業務への考え方です。

基礎自治体で職員が携わっている業務を見渡すと、大半は三層分離で完結しています。その中で住民の個人情報をリスクに近づける必要はないと判断しました。同時に、便利さを追求することだけが働き方改革ではない、とも考えています。例えばβ´モデルに移行する場合は、コラボレーションツールに振り切った構成を検討することになる。しかしその働き方が本当に必要なのかは、現時点ではまだ見えていません。従って、今の働き方を変えないままクラウドのメリットを取り入れるという考えでα´モデルに決め、アライドテレシスの「Allied SecureWAN」を採用した、という流れです。

後藤:三豊市におけるα´モデルの選択は、非常に合理的だと感じます。その中で、個人情報を守ることを最優先に、利便性と運用性とコストのバランスをはかるという視点が、当社サービスと適合したのではと認識しています。

具体的には、ローカルブレイクアウトにおいて、当社はクラウド側でアクセス制御を行っています。オンプレミスだと設備の性能が不足した場合などに、買い直しといった二重投資の懸念がありますが、クラウド側の制御であれば利用プランを変えるだけで済み、スモールスタートも可能。また、特定のクラウドサービスに限定して通信を行うので、安全性も評価していただけたのではと思っています。


合同会社KUコンサルティング:髙橋 邦夫氏
合同会社KUコンサルティング:髙橋 邦夫氏

髙橋:私も北岡さんの話には共感しました。職員数の少ない自治体では、ほとんどの職員が個人情報に接しているため、個人情報保護に重きを置く。一方、規模の大きな自治体になると、縦割り解消という面も含めて業務のコラボレーションを重視する傾向があるため、βやβ´モデルが選択肢に入ってくるということでしょう。

デジ庁の検討会では、将来的にゼロトラストにするという方向性を打ち出しており、いずれはβやβ´モデルを意識する必要が出てきます。しかし今の時点で、中・小規模の自治体において働き方改革を進めるには、まずはα´モデルを検討するのが妥当です。その際に、安心してローカルブレイクアウトできるサービスがあるというのは心強いと思います。

北岡:確かにそうですね。クラウドサービスなので、ファイアウォール側のアップデートや、プロキシポリシーの管理を意識せずに済みます。後藤さんの話にもあった「IPアドレスがよく変わる」という点についても、クラウド上で自動化・最適化されているので、オンプレミスで構築して自分たちで運用するよりもハードルは下がると感じています。

実際、α´モデルに移行した後も、職員からの反応はほぼありません。これはとてもいいことだと思っています。ネットワークは、特別に意識されることなく安定して使えることが一番ですから。

先手を取ったDXで“慣れの力”を育てる。

― ここで改めて、これまで三豊市が進めてきたDXの取り組みを教えてください。

北岡:当市のDXは、いつも先手を取ってきたのが強みだと考えています。平成の大合併を機に三豊市が誕生したタイミングで三層分離や二要素認証を導入し、電子決裁などにも取り組んできました。変化の時は職員が大変な思いもするのですが、次の変化には余裕をもって対応できます。

特に今の時代は新しいテクノロジーが次々に登場しますが、当市にはこれまで積み上げてきた“慣れの力”があり、職員の対応力も上がっていると感じます。

髙橋:三豊市は人口約5.7万人、職員数が約600人で、市役所としては国内のボリュームゾーンにあたります。こうした自治体が長きにわたってDXを進めているのは素晴らしいですね。

私が支援している愛知県常滑市でも、市長のデジタルファースト宣言を機に、取り組みが一気に進んでいます。こうしたトップのけん引力と、それを支える職員のチームワークが、DX成功の要因だと思います。アライドテレシスでもDX支援をしていると思いますが、具体的にはどのような内容でしょうか。

アライドテレシス株式会社:後藤 雅宏氏
アライドテレシス株式会社:後藤 雅宏氏

後藤:当社では全国43の拠点から、直接自治体に出向く形をとっています。その中で、庁内の運用状況、環境を確認することから始め、行政計画書や市政方針なども読み込み、方向性を確認していきます。

例えば、人口1万人未満のある自治体では、システム担当業務の属人化が課題になっていました。そこで現状把握をした後、インターネット分離方式の見直しや、ネットワーク基盤の再構築について提案し、次年度予算の申請に間に合うよう伴走支援をしました。このように、自治体が事業化を判断できるよう、トライアルなども実施しながら、予算確保の段階まで寄り添って支援しています。

自治体ネットワークは「ゼロトラスト」の時代へ。

― ゼロトラストへの流れをふまえ、直近の動きをお聞かせください。

髙橋:デジ庁の検討会の結果、2030年を目途に、ゼロトラストへ舵を切っていくという報告書が出ました。これを受けて令和7年度から実証が始まっています。まだ初年度で大きな成果が出たわけではありませんが、来年度の末頃には2030年に向けたビジョンが見えてくると思われます。総務省もそれを見据えて、令和8年度からはゼロトラストもふまえた検討を始め、翌年のガイドライン改定には載せたいという意向のようなので、着実に動きは進んでいると考えていただければ。

後藤:今後はネットワークの運用管理もクラウドで行う、という流れも出てくるでしょう。これは自治体の大きな課題である人手不足と属人化を解消する意味でも重要です。

クラウドで運用管理を行うメリットは、稼動情報などを収集して、運用者が誰であろうと止まることなく、安全かつ運用負担が少ないといった点です。すでに実現の余地が出てきており、最終的にはAIを活用した予測保守で、安定したネットワーク運用が実現できる時代が来ると思います。当社としても、そうした環境を自治体と一緒につくっていきたいと考えています。

北岡:我々も、近年のセキュリティ事情を踏まえると、三層分離だけでリスクは防ぎきれないということを実感しています。いかに利便性を享受しつつセキュリティを保持していけるのかというところは常に考えていかなければいけません。

当市の目標は、「書かせない、来させない窓口」をはじめとする市民サービスの向上です。その実現に向けて取り組んでいるので、その中にゼロトラストがどう収まるのか、という点は2030年に向けて勉強していかなければと思っています。

変革機会を捉えたDXで住民サービスを向上させる。

― 最後に、全国の自治体職員に向けてメッセージをお願いします。

北岡:どの自治体も財政状況と人手不足、この2点がとにかく厳しい状態です。そうした中で我々が意識しているのは、大きな変化のタイミングを逃さない、ということです。

当市の場合、平成28年に危機管理センターが増築されたことをきっかけに、全館の無線LAN化を実施しました。これによって次のゴールが明確になり、モバイルパソコンの更新やフリーアドレス化が進んで、オフィス改革につながりました。業務用スマホの導入もしかりです。このように、変革のチャンスを逃さないようアンテナを伸ばし、学びながら、思いを形にしていくことが大切だと考えています。

髙橋:その意識はとても重要ですよね。ネットワークにしても、α´モデルにすることが目的化してはいけません。あくまでも手段ですから。

今、多くの自治体がDXに取り組む中で、総務省は自治体DX推進計画をバージョン5に上げました。そこではBPRの取り組みをクローズアップしました。重点事項に取り組む際に、BPRを一緒にやりましょうとメッセージしています。自治体DXの究極の目的は、住民サービスの向上です。そして、実現するにあたっては職員の働き方も変える必要があると計画にも書かれています。モデル自体はα´でもβでもいいが、最終目的を見失わないようにしつつ、その目標に向けてともに進んでいきましょう。

後藤:当社は今後も、自治体の現状をきちんと理解して、職員に寄り添って提案していくという姿勢を重視していきます。自社のネットワーク製品に加え、必要に応じて他社のセキュリティ製品なども柔軟に組み合わせ、職員の業務負担や課題解決に直結する最適な環境づくりに取り組んでいきたいです。安全なクラウド接続や三層分離の見直し、運用負担の軽減など様々な課題がありますが、その一つひとつに対して、自治体と伴走しつつ最適解を考えていきたいと思います。今後も「アライドならしっかり向き合ってくれる」と感じていただける、信頼できるパートナーであり続けることが当社の目指す姿です。


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