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平時の通信を快適にしつつ、非常時の通信断絶に備える“BCP回線”とは。

防災・危機管理
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平時の通信を快適にしつつ、非常時の通信断絶に備える“BCP回線”とは。

頻発する自然災害に加え、近年は道路陥没による光ケーブルの断線など、平時でも通信がストップしてしまうリスクが潜んでいる。ひとたび通信が途絶えれば、住民サービスの大部分が停止してしまうため、もはや“通信インフラの確保”は、防災部門だけの課題ではないといえる。

本記事では、“もしも”の時だけに備える仕組みから脱却し、既存の光回線などと組み合わせた“いつもの備え”で通信を強固に維持する方法を紹介。これからの自治体に求められる実効性の高い通信対策のヒントを探る。

※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。

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interviewee



a2network
事業開発室
小出 佐登子(こいで さとこ)さん

いざという時に立ち上がらない? 既存のBCP回線が抱える死角。

平成29年版の「情報通信白書」によると、熊本地震では土砂崩れや商用電源の停電による停波が発生し、一部の通信に支障が出て、完全復旧には約12日を要している。また、令和6年版の同白書では、能登半島地震においても同様の原因により、通信の主要キャリアが応急復旧を完了させるまでに15~17日を要したとされている。

こうした場面で危惧されるのは、通信の空白が災害対応に及ぼす影響だ。事実、発災後は被災状況の把握から住民への情報発信、職員同士の情報共有、国や他自治体との連絡など、あらゆるシーンで通信は被災地の“命綱”となる。この命綱を断絶させないよう、各自治体はそれぞれの対策をとっている。代表的なものがMCA無線や衛星回線などの導入だが、それでも課題は残ると小出さんは指摘する。

「MCA無線は災害時の特定職員間の連絡には強いのですが、通常業務には向いていないため平時は倉庫で待機となり、防災訓練の時くらいしか出番がありません。また、衛星回線は物理的な断絶を起こさないという強みがある反面、遮蔽物があると通信が不安定になるという特性があります。それぞれにメリット・デメリットがあるのです」。

これらの弱点をできるだけなくし、かつ平時から運用しておくことで、いざという時にはスムーズに災害対応業務に移行できる仕組みを備えておくことが理想的だといえる。こうした点に着目し、同社が開発したのが「スカイベリーpro®」だ。

キャリアの壁を越える! 自動で切り替わる「BCP回線」の仕組み。

スカイベリーpro®は、フェーズフリーで使えるネットワークの冗長化ソリューション。本体には3大通信キャリアの回線に加え、光回線、衛星回線を含む計5回線を活用できる

「例えば自治体が光回線を使用している場合は、それを置き換えるのではなく、他回線を組み合わせていくイメージで追加が可能です。平時の使用においてはメインに設定されている回線を使用し、ほかの回線は優先順位を付けたサブ回線として扱われます」。

仮に光回線をメインに設定している状況で災害が発生し、使用中の光回線が障害などで使えなくなった場合は、ルーターがそれを検知。接続可能なキャリア回線を探し、自動的に切り替えるので、非常時に職員が慌てて通信を設定し直す手間がかからないという。「3大通信キャリアの回線を使えるにもかかわらず、料金は通常契約時の1社分程度に抑えられるという点も、自治体での導入において喜ばれるポイントになっています」。

同ソリューションは、類似の通信サービスと比較しても、非常時に堅牢な独自の強みをもっているのだという。「例えば一般的なモバイルWi-Fiに使われる“クラウドSIM”の場合は、SIMの接続先であるサーバーがダウンすると全回線が使えなくなるリスクがありますが、スカイベリーpro®の場合は独立した3枚の物理SIMを搭載する方法をとっているため、こうした障害の連鎖を起こすことがありません。また、海外メーカーが提供する“複数SIM対応機器”のように回線を個別に契約する手間も不要です」。

ちなみに、同ソリューションは国内メーカーが製造しているものであり、新幹線Wi-Fiに採用しているものと基本的に機器の中身は同じ。近年問題視されている通信セキュリティの面でも安心だ。

既存資産をムダにしない、自治体の状況に合わせて選べる柔軟さ。

こうした新たなサービスを導入する際、自治体には既存の設備や予算に合わせたムダのない方法が求められる。それに対し同ソリューションは、機器と通信回線をワンストップで導入できるセット契約に加え、光回線など既存の契約回線を活かしながら、災害や事故への備えとして他回線を追加するといった運用にも対応している。

さらに、既存の通信環境を前提とした導入が可能であり、現在契約しているキャリアのSIMカードをそのまま活用し端末のみを追加することで、非常時に備えた“自動切り替え機能”を付加することもできる。

このように、一気に冗長化を図る方法だけでなく、既存環境を活かした段階的な導入も選択できるため、自治体は状況に応じた方法を選びやすいだろう。「通信は目に見えないため対策が後まわしにされがちですが、回線が断絶するリスクは身近に潜んでいます。例えば、台風の影響で特定のキャリアがダウンするといった事例は、近年もたびたび発生しています。そのような場面で、自治体がBCPに沿って業務を継続するためにも、複数キャリアによる回線冗長化は重要だと考えています」

イベントで、医療で、オフィスで! BCP回線の活用事例。

安心の機能を備えつつ、自治体で導入しやすい契約形態をとっている同ソリューション。すでに官民問わず多くの団体で導入されており、その活用シーンは災害対策にとどまらず、平時の業務やイベント対応まで多岐にわたる。特定の回線に依存しないスカイベリーpro®が、どのような場面で通信の安定供給に貢献しているのか、いくつかの活用ケースを見てみよう。

“いつもの備え”が災害時に活きる!これからの自治体に求められる通信の未来。

このように、多彩なシーンで活用されているスカイベリーpro®。その前身ソリューションである「スカイベリーWiFi」も、災害の現場で活躍している。

例えば、令和4年には台風15号で甚大な被害を受けた静岡県に通信環境を提供し、緊急初動調査、現地支援団体のサポートなどに貢献。また、令和6年の能登半島地震でも通信環境の提供を行い、途絶えることのない通信が、ボランティア同士の連絡やシフト作成、スタッフ募集のSNS投稿などに活用された。

活躍の場は国内にとどまらない。令和4年には「NPO法人ジャパン・プラットフォーム」と協力し、ウクライナ人道支援におけるボランティア活動へ通信環境を提供した。これらは全て無償での活動であり、同社もこうした環境で実際に機器を稼働させることによって、サービスのさらなるブラッシュアップに努めているのだという。

平時、非常時を問わず、様々な現場で使われ、有用性を高めてきた同サービス。そうした経験を踏まえ、小出さんは「単独で全てをカバーできる通信システムはありません」と強調する。「だからこそ、いかに通信を冗長化しておくかが、最も有効な対策になり得るのです。加えて、非常時のみの活用を前提に考えていたため、いざという時に使えなかったという事例が多いのも事実。通信においても、普段づかいと非常時の境界をなくす考え方が重要だと考えています」。

特定の回線に依存しない平時の通信環境改善ツールとして導入したものが、結果的に強固で実効性のある“BCP回線”として機能する、というのが同社の目指す通信の理想形だという。国内のあらゆる地域が大災害のリスクにさらされている現在、こうした企業、そしてソリューションの存在は自治体にとって非常に心強い存在になるのではないだろうか。

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