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平時と有事をつなぐ配信の仕組みで、地域と連動する情報発信へ。

株式会社コアをはじめとする4社は、官民のデータ利活用を促進し、新たなサービス創出の後押しを目的に、東京都デジタルサービス局が運営する「東京データプラットフォーム(以下、TDPF)」の取組の一つである「ケーススタディ事業」に採択され、都内3地域で「フェーズフリーの地域密着型情報配信プロジェクト」の実証実験を行った。本実証では、ケーブルテレビ(CATV)事業者と連携し、テレビやデジタルサイネージなどの地域メディアを通じて、住民に身近な情報を発信する仕組みの有効性を検証した。
平時には正しい地域情報を届け、有事にはSNS上の偽・誤情報に惑わされないための工夫が凝らされた同プロジェクト。自治体での横断的な連携や、実証実験から得られた手応えなどについて、実証に参加した狛江市の声とともに紹介する。
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。
[PR]株式会社コア
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左:株式会社コア
グロースエンジン事業本部
執行役員 本部長 金城 広(かねしろ ひろし)さん
右:株式会社ラムダシステムズ
企画開発部 福島 唯人(ふくしま ただひと)さん
デジタルデバイドへの対応と、「伝えたはず」の焦り、職員リソースの限界。
住民への情報発信は、自治体における大切な業務の一つだが、そこでしばしば課題とされるのが、高齢者を中心とする“デジタルデバイド”への情報伝達だ。金城さんは「住民への発信という視点では、テレビやラジオを“オールドメディア”だと切り離すのはリスクの高い考え方です」と指摘する。
「JX通信社の調査によると、災害時の情報源について、70代以上の層では85.5%が『テレビ』だと回答しており、インターネットの58.9%を大きく上まわっています。スマホアプリやWEBツールを活用しても、こうした層には十分に届ききっていないというのが現実なのです」。
同時に、自治体の情報発信においては「本当に伝わったのか」という部分が見えづらいという課題が残っているとも分析する。「ある自治体でのヒアリングでは、どんなに頑張って情報を発信しても、その先の意識・行動変容までは分からないので不安が残る、という声を聞きました。このような心理は非常に理解できます」。
こうした状況に加え、新たな懸念もある。近年問題となっている、SNSに氾濫する偽・誤情報の拡散だ。災害や事件が起きると、SNS上には偽・誤情報があふれる。熊本地震では「ライオンが逃げ出した」というデマが発信され、能登半島地震が発生した際には、救助を求める投稿の約1割が偽情報だったと分析されている。令和7年のクマ被害にまつわるフェイク情報も記憶に新しい。
「このような偽・誤情報を取り除き、正確なものだけを迅速に発信することが重要です。しかし、自治体がそれをやるには負担が重すぎますし、現在のリソースで解決するのは非現実的だといわざるを得ません」。
こうした課題に対し、SNS分析やTVメタデータの利活用支援、放送関連事業など、民間の技術やノウハウを組み合わせた解決策が検討され、モデル事業として形づくられた。この取組が、令和7年度にTDPFケーススタディ事業として採択された「フェーズフリーの地域密着型情報配信プロジェクト(以下、地域情報PF)」だ。
地域情報PFの仕組みと、導入の壁を越えるアプローチ。
プロジェクトの中心的存在となったのは、省庁や各自治体との連携事業で多数の実績をもち、全国の自治体向け防災オフサイトミーティングなどを通じて公共分野のデータ利活用を支援してきた「コア」。農林水産分野の「ため池防災支援システム」や各自治体防犯分野の高度・効率化など、現場の課題に寄り添ってきた同社の呼びかけで各分野の専門企業が集まり、地域情報PFの全体を形づくっている。
「特徴の一つが、フェーズフリーな情報配信を目指している点です。平時は、テレビで紹介された地域のグルメ情報やイベント情報をデジタルサイネージやケーブルテレビなどで自動配信。デジタルデバイドに“普段から情報を受け取る”習慣づくりを促します。また、災害や事件が発生した際には、SNS上から信頼できるリスク情報をピックアップし、それらを優先して割り込み配信させるという仕組みです」。
こうした情報を、放送波に文字情報として載せることで高齢者にも伝わりやすくし、平時と有事を切り替えながら自動で配信する仕組みを構築しているという。

このような新しいシステムを導入する際、自治体では様々な懸念点が浮上する。それに対し、同プラットフォームは以下のような解決策を提示している。
懸念1:SNS情報には、偽・誤報のリスクがあるのでは?
→AI+有人チェック体制で情報の信頼性を担保
同システムの有事情報収集には、「JX通信社」がサービス展開している「FASTALERT(ファストアラート)」が活用されている。FASTALERTは、WEB上のビッグデータから災害・事故などのリスク情報をリアルタイムに検知し、配信するサービス。AIが情報をスコアリングし、さらに専門チームによる24時間体制の全件ダブルチェックを行う、というフローが徹底されている。これにより、自治体職員がファクトチェックをする必要がなくなり、公的情報と同等の信頼性が担保される。
懸念2:新しいシステムを入れると職員負担が増えるのでは?
→様々な情報を集約、マルチユースによる職員の“手間ゼロ”運用
自治体ホームページ、Lアラート、民間データなどから、システムが情報を自動収集。収集されたデータは、ケーブルテレビやデジタルサイネージなど複数のメディアへ一斉配信(マルチユース)される。サイネージでは、専門の映像表示技術によりテレビ放送品質のテロップへ自動変換。高齢者や外国人にも一目で伝わる表示が可能だ。現場職員が新たに入力や操作を行う必要はなく、必要な情報が見やすい形で各媒体へ自動連携される仕組みとなっている。

3地域での検証結果と実証自治体のリアルな声。
令和7年、狛江市、調布市、世田谷区の3地域において、地域情報PFを使った実証実験が行われた。これら3エリアにデジタルサイネージを各2台設置したほか、ケーブルテレビも活用し、地域住民に向けて情報を発信した。
「実証実験においては、487件のアンケートを回収しました。その中から、コアターゲットである“50歳以上・主にアナログ媒体から情報を得る層”147名の回答を抽出し、分析した結果、非常にポジティブな結果が得られました」。
例えば、「配信された情報によって、何かしらの行動変容は生まれたか」という設問に対して、「行動した」「行動する内容を決めた」という回答の合計は34%。具体的には、「避難所位置の確認」「非常食・水の補充」「ハザードマップの閲覧」といった防災活動に結びついていることが分かった。
「ケーブルテレビやサイネージによる情報配信の有用性については、88%が『役に立つ』と回答しています。同時に70%の人が『新規性のある情報だと感じた』と答えており、特に災害情報や防災・防犯対策において高い反応が得られました。既存の広報手段ではリーチできていなかった層への訴求力が大きいことが読み取れます」。

では、自治体側の感想はどうだったのか。この実証実験に参加した狛江市の職員に、従来の課題と今回の実証実験で得られた手応えを聞いた。
地域に合わせた柔軟な展開と、EBPM基盤への進化。
このように、地域が抱える潜在的な課題に対し、フェーズフリーでの解決を目指す地域情報PF。仕組みの本質はあくまでも配信エンジンであるため、様々な地域の特性に合わせてカスタマイズが可能だ。
「例えば、ケーブルテレビがない地域なら、コミュニティFMと連携しプラットフォームが生成したテキストデータをアナウンサーの読み上げ原稿として活用する、といったことも考えられます。あるいは、都市部に設置された商業用サイネージに情報を流し込むといった利用方法もあるでしょう。このように、地域の資産に合わせた柔軟な運用が可能です」。
今後、地域情報PFは、データとして蓄積された配信情報を検索・分析に用い、自治体が保有するデータやTDPFのような官民様々なデータと掛け合わせることで、自治体がEBPM※に活かせる基盤として機能することを目指していく。すでにいくつかの地域ではケーブルテレビ局などとの連携が進められており、全国の自治体への提案・展開が始まる予定だという。今後の地域情報PFの動きに注目していきたい。
※EBPM=Evidence-Based Policy Making(証拠にもとづく政策立案)
お問い合わせ
サービス提供元株式会社コア
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