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行政が干渉しすぎない距離感で、地域の自立を支えていく。

地域担当職員制度を起点に住民自治を支える取り組み
地域ごとに担当職員を設け、困り事に寄り添う「地域担当職員制度」。伊賀市では一度の挫折を経て、支所を軸に支援体制を再編した。相談や研修を通して、住民の主体性を引き出す支援に取り組んでいる。
※下記はジチタイワークスVol.43(2026年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

伊賀市
地域連携部 住民自治推進課
主幹 奥沢 浩和(おくざわ ひろかず)さん
かつての制度の形骸化を踏まえ地域支援の体制を再構築した。
地域を分割して担当職員を配置し、住民の相談役を担う地域担当職員制度。地域課題の解決を目指すこの仕組みを、同市では平成23年に導入したが、当時はうまく運用できなかったという。奥沢さんは「地元の消防団など、地域活動に関わる職員は多くいましたが、業務となると関わり方のイメージがつかみにくかったようです」と振り返る。その後も支所に住民自治協議会(以下、自治協)を担当する職員は配置されたが、兼務により注力できる体制ではなかった。
転機は令和4年の担当職員の再配置だ。背景には、合併を経て支所の役割が変化した実情がある。本庁への権限集約で再編を迫られる中、住民からは“支所を残してほしい”との声があったという。そのため、従来の事務執行だけでなく、地域課題をともに解決する“相談支援”へと機能をシフトさせる必要があった。そこで支所長を管理者とし、配下に実務職員を配置する組織改編を実施。地域と向き合う専任体制を構築した。
現在、6支所が39自治協を担当。1支所で1自治協もあれば、22自治協を受けもつ支所もあるそうだ。「当市の自治基本条例により、自治協は“行政と対等の存在”であると定義されています。あくまで主体は地域側であり、行政が干渉しすぎない距離感を意識しています」。職員が地域の活動を取り仕切るのではなく、困ったときの相談役として後ろから支えるのが同市のスタンスだという。


職員は身近な“相談役”として住民の主体性を引き出す。
踏み込みすぎない一方で、何かあったときに相談してもらえる関係を築くことも重要だ。そこで同市では、地域の中で長く活動を続けている人とのつながりを大切にしているのだという。「自治協の会長や役員は数年ごとに交代しますが、事務局の担当者は長年活動を支えているケースもあります。そうした人々と関係を保つことで、役員が代わっても地域との関係を継続しやすくなります」。
さらに、主体的な地域運営を促す方法として、自治協に向けた研修を実施しているという。「行政が答えを示すのではなく、研修という形で考える場を用意することで、住民が自分たちの課題と向き合う機会をつくっています。令和7年度は地域活動の担い手不足をテーマに研修を実施。参加者からは、地域について考えるいい機会になったとの声が寄せられました」。この研修には担当職員も参加し、どのような課題を抱え、どのように向き合っているのか、住民視点の理解に役立てているのだという。
また、地域をサポートする中で生じた困り事などをもち寄り、解決のヒントを探る担当職員向けの会議も定期的に開催している。支所によって受けもつ自治協の数や規模は異なり、課題は様々だ。そのため、経験豊富な支所から助言を得るほか、ノウハウを共有し合う場として機能しているという。「支所によっては担当職員が1人の場合もあります。横のつながりをつくることで、悩みを1人で抱え込まずに済み、よりよい支援につなげられると考えています」。

地域住民と同じ目線に立って考えつづける姿勢を大切に。
自治協と行政が対等な立場で歩む仕組みは、平成16年に自治基本条例を制定して以来、20年以上にわたって続いてきた。10年後、15年後を見据えた住民自治のあり方を検討するため、同市では令和7年7月に「伊賀市住民自治のあり方検討委員会」を設置。これまでの歩みを振り返りながら、自治協の声を聴くなど議論を進めているという。合併から20年が経過する中、委員会では、この仕組みが続いていること自体が成果だという評価も寄せられているそうだ。
一方で、地域側にも少しずつ変化が生まれている。研修をきっかけに、地域行事の見直しに関する議論が交わされはじめているという。「目的が似ている複数の行事を1つにまとめることで、役員の負担を減らそうとする動きも見られます。人口減少と担い手不足が進む中で、このような見直しは大切だと感じています」と、その意義を語る。
地域の状況は日々変化していく。その中で、住民と同じ目線に立ち、考えつづけることで、その地域に合った運営の形が見えてくるのだと奥沢さんは言う。「関わり方に正解はありません。むしろ、地域のことを思い、考えた結果は、全て正解だと言ってもいいのではないでしょうか」。地域の自主性を尊重しながら、ともに考えつづける。その姿勢を軸に、同市はこれからも伴走を続けていく。












