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家の近くで無理なく集まり、交流が広がる場をつくる。

住民主体の地域拠点づくりによる多世代交流の創出
少子高齢化により、全国的に地域活動の担い手不足が課題となる中、生駒市では、住民に身近な集会所や公園を活用した拠点づくりを推進。世代や立場を超えて関われる交流を後押ししているという。
※下記はジチタイワークスVol.43(2026年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

生駒市
地域活力創生部
地域コミュニティ推進課
課長 藤川 幸史(ふじかわ よしふみ)さん

生駒市
地域活力創生部
地域コミュニティ推進課
主事 沖本 和夏(おきもと のどか)さん
若い世代が地域に関わりにくくつながりの希薄化が課題に。
同市では従来、介護予防を目的とした体操教室など、高齢者を中心とするコミュニティ活動が活発に行われてきた。一方で、ほかの世代が参加するような活動は少なかったという。「当市は隣接する大阪府などへのアクセスのよさから、ベッドタウンとして発展してきました。平日は仕事などで市外に出ている住民も多く、若い世代が地域に関わる機会が少なかったのです」と沖本さん。
また、こうした地域活動を支える自治会の運営にも課題があった。市内には128の自治会があり、約2,000世帯を有する大規模な組織も存在する。運営に携わる役員の負担は大きく、つながりが希薄なこともあり若い世代には参加を敬遠する傾向も見られる。「加入率は年々低下し、担い手不足が課題となっていました」と藤川さんは話す。
こうした背景を踏まえ、“顔の見える関係づくり”などを目的に取り組みを検討。令和元年に環境省の補助金を活用して「資源回収・コミュニティステーション」を市内2カ所に設置するモデル事業を実施した。自治会館や集会所に資源回収スペースのほか、飲み物が振る舞われる休憩スペースをつくり、ごみ出しを通じて住民が集まる拠点づくりを目指した。「家から歩いて行ける場所に拠点をつくったことで、幅広い世代の交流が自然と生まれました」。この成果をもとに令和2年からは、多世代交流を目指す複合型コミュニティ「まちのえき」として、市内全域への事業展開を図っていった。

▲多世代交流などを目的とした複合型コミュニティ「まちのえき」。公園や集会所を活用し、工作教室や農業体験、野菜の移動販売など、拠点ごとに様々な取り組みが行われている。
異なる世代向けの催しを通じて交流が生まれる場をつくる。
まちのえきは、自治会館や公園などを活用し、住民が主体となって様々な取り組みを複合的に実施する地域の交流拠点だ。趣旨に賛同し、実施を希望する自治会には、市が補助金の交付などを含む伴走支援を行っている。沖本さんは「多世代交流につながるように、高齢者向けの体操と子ども向けの読み聞かせなど、普段は別々に行われる催しを、同じ場所で、同じ時間帯に実施する仕組みにしています」と説明する。異なる世代を対象としたイベントを組み合わせることで、これまで接点の少なかった住民が同じ場に集い、交流のきっかけが生まれているという。取り組みは、令和7年10月時点で16拠点に広がっている。ある地域では、使われなくなった農地を活用し、子どもが参加できる季節の農業体験などを開催している。また別の地域では、自治会館に本棚を設置し、住民から本の寄贈を募って図書室を開設するなど、各地で工夫を凝らしているそうだ。
取り組み内容の検討にあたっては、市と自治会が連携し、住民アンケートを実施している。配布と回収は自治会が担い、市は集計・分析を担当する。「アンケートでは、清掃活動や夏祭りなど、地域活動として想定される項目について、必要性と満足度を尋ねています。そうすることで、“住民にとって必要性は高いものの、十分に満足できていない活動”を地域課題として洗い出せます。それを自治会に共有して、まちのえきで優先的に取り組んでもらっています」。

住民が主役となる仕組みで誰もが関われる拠点をつくる。
藤川さんは「先日訪問した拠点では、子どもと保護者、高齢者が集まり、クリスマス会を一緒に楽しんでいました。取り組みを通じて、多世代交流が着実に進んでいると実感しました」と語る。また、自身の特技を活かして地域と関わりをもつ住民の存在が、少しずつ見えてきたという。例えば、住民が持ち寄った不用品を、もともと修理を趣味としていた住民たちが手を加え、再び使えるようにしている拠点があるそうだ。特別な役割を担っているわけではなく、無理のない形で地域と関わる住民が増えているのだという。「地域活動の担い手不足が課題に挙がりますが、“担い手がいない”のではなく、“見えていなかった”だけかもしれないと考えるようになりました」と沖本さん。
同市では今後、より多くの拠点でまちのえきの開設を目指していくという。日常的に顔を合わせる活動は、防災や防犯といった非常時の助け合いの基盤となり得るだろう。藤川さんは「自治会は、住む場所が同じというだけでつながる地縁組織です。だからこそ、自治体が主導するのではなく、住民が主役となって地域を盛り上げる仕組みづくりが大切だと考えています。そのためにも、幅広い層の住民が関われる拠点づくりを今後も進めていきたいですね」と力を込める。












