岐阜県美濃加茂市

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悩みを語り合える場を設けて、自治会運営に変化の兆しが。

住民生活
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悩みを語り合える場を設けて、自治会運営に変化の兆しが。

支援の仕組みを整えて自治会活動を後押し

自治会の加入率低下による、役員の担い手不足が課題だった美濃加茂市。座談会の開催や事例集の作成など現場に寄り添う支援に取り組んだ結果、自治会内に前向きな動きが広がり、任期後も関わる人があらわれている。

※下記はジチタイワークスVol.43(2026年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

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美濃加茂市
市民協働部 まちづくり課
主任主査 朝日 建太朗(あさひ けんたろう)さん

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美濃加茂市
市民協働部 まちづくり課
主任 小谷 久美子(こたに くみこ)さん


地域のつながりが希薄になり自治会の存在意義が揺らいだ。

会員の高齢化に加え、自治会活動の負担が大きいことから、役員の担い手が減っていた同市。さらに、転入しても自治会に入らない世帯が増え、加入率は下がる一方だったという。その状況に拍車をかけたのがコロナ禍だった。「地域行事や自治会の総会を行えず、地域のつながりが希薄化していました。そうした中で“自治会がなくても生活ができるのではないか”という感覚が広まり、脱会も増えてきたのです」と朝日さんは振り返る。

地域課題が複雑化する昨今、自治体が限られた予算と人材で全てに対応するのは難しい。そこで同市では“地域のことを住民自身が考え、解決していくことが不可欠”との認識を強めていたという。「自治会は自主的な組織ですから、行政が課題に直接アプローチをするのではなく、その“あり方”を変えていくための支援をしようと考えました」。

そこで令和3年から、“住民自治の再生”を掲げて「自治会のあり方検討会」を開始。当初は意欲的な自治会に声をかけて課題を話し合ったという。「検討会での話し合いを通じて、悩みは市内全域に共通すると感じ、対象を全域に広げました。また、ワークショップ型では参加のハードルが高いことが分かったため、ざっくばらんな対話で学び合える場にしようと、座談会へと形を変えたのです」。

▲月に1回開催される自治会の座談会では、自治会長や地域住民が、共通して抱える悩みについて話し合う。
▲月に1回開催される自治会の座談会では、自治会長や地域住民が、共通して抱える悩みについて話し合う。

座談会の場や相談窓口を設けて解決策を探る機会を増やす。

令和5年からは月1回「自治会座談会」を開催。参加者を限定せずに募集し、ごみ問題や未加入者への対応など、自治会長や地域住民が、共通して抱える悩みについて話し合っている。当初から大切にしているのが、中立な立場のファシリテーターに入ってもらうことだ。「自治会長と市職員という構図になると、それぞれの要望を伝えるだけの場になりがちです。困り事の共有や意見交換の場にするため、まちづくり支援を行うNPO法人の担当者に進行役をお願いしています」と小谷さんは話す。職員自身も自治会員として輪の中に入り、一緒に考える姿勢を大切にしているそうだ。

リラックスして話せる場づくりにも心を配っている。「ペットボトルのお茶だと、誰かが開けないと飲みにくいですよね。毎回必ず温かいほうじ茶をコップで出し、緊張がほぐれるようにしています」。自己紹介の際にも“好きな自治会行事は何ですか?”といったポジティブな問いを投げかけ、和やかな雰囲気の中で自然と意見が出てくるよう意識しているそうだ。

こうした取り組みに加え、“行政からの依頼事項が多い”という声を受け、慣例的に求めてきた内容の見直しも進めている。従来は、募金の取りまとめや行政が委嘱する各種委員の選出などを自治会が担うものとしていたが、各自治会の判断に委ねる形へと改めた。さらに、専門家に相談できる自治会活動専用窓口を設置し、予約制で土日も対応。主体的な工夫や実践をまとめた自治会事例集も作成した。「“自治会はなくてもいい”という空気に危機感を覚え、できることから挑戦してきました。その結果、自然と支援メニューが増えていったのです」と朝日さんは笑顔を見せる。

他自治会の姿が見えることで意欲的になる人も出てきた。

地道な取り組みを重ねる中で、前向きな変化が見られるようになってきたという。「かつては、“任期の1年をやり過ごせばいい”といった、諦めに近い空気がありました。でも最近では、ほかの自治会の頑張りを知り、“自分たちも地域をよくできるのでは”と動きはじめる人が出ています」。例えば、自治会長の任期を終えた後もサポート役として地域に関わりつづける人や、市が進める加入促進のPR活動に協力する人もあらわれているそうだ。座談会に参加した自治会長からは、“ほかの自治会の動きを知り、自分の自治会の参考にできた”“気持ちがラクになった”という声も寄せられている。

一方で、加入率は依然として低水準が続いているという。「入らないという選択には、理由があるはずです。その理由を理解して、解消していくことが大切だと考えています。悩みに寄り添いながら、自然と“入りたい”と思える魅力的な環境を整えていきたいです」と小谷さんは語る。

一連の取り組みを通じて2人が感じているのは、自治会の悩みは共通していても解決策は地域ごとに異なり、一律の施策では対応し切れないという現実だ。「行政は答えを示すのではなく、あくまでサポート役として、住民の思いや地域の特性を尊重しながら、自治会が活動しやすい環境を整えていきたいです」。