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【セミナーレポート】どう備える?増加する⽔害リスク―求められる河川監視のあり⽅

近年、日本各地で大規模な豪雨災害が頻発しており、今後、中小河川・内水路の水位をより細かく把握し、迅速に対応できる体制構築が求められています。
一方で、水位計の数値だけでは状況判断が難しく、夜間や悪天候時に職員が現地確認を余儀なくされるケースも少なくないのではないでしょうか?
本セミナーでは、実際に水害を経験した久留米市をお招きし、災害時に本当に必要となる河川情報を整理するとともに、簡易型クラウド遠隔監視カメラや水位AIアラート検知機能の活用事例をご紹介します。
概要
■テーマ:どう備える?増加する⽔害リスク―求められる河川監視のあり⽅
■実施日:令和8年2月18日(水)
■参加費:無料
■申込者数:64人
浸水戸数が大幅減少!久留米方式流域治水とは?
第1部に登壇したのは久留米市の田中氏。激甚化する豪雨を「毎年起きるもの」と再定義し、全庁横断で確立した「久留米方式」による、ハード・ソフト・デジタルを統合した流域治水の取り組みについてお話いただきました。

【講師】
田中 欽也 氏
久留米市 都市建設部 河川課 主幹
1999年入庁。農政・下水道・河川・環境を経験したのち、2025年度より河川課にて従事。
内水氾濫の深刻化から地域課題を捉える
まず、久留米市の概要についてです。久留米市は福岡県の南西部に位置し、面積は約229.96平方キロメートル、人口は県内第3位の約30万人の中核市です。市内には九州最大の一級河川である筑後川が東西に流れており、耳納連山の豊かな自然にも恵まれた地域です。かつては「水に強いまち」と言われ、長期間雨が降らなくても断水の心配がない地域でしたが、約7年前から状況が大きく変わりました。以前は筑後川の氾濫による洪水が主な課題でしたが、近年は筑後川の水位上昇に伴う内水氾濫、つまり市街地での浸水被害が大きな課題となっています。
続いて、近年の降雨状況についてです。平成30年以降のデータを見ると、令和4年度を除いてほぼ毎年、観測史上最大を更新するような降雨が記録されています。また、この7年間で特別警報が4回発令されており、異常気象の影響が顕著に表れています。例えば、令和3年7月には72時間で718ミリ、総雨量896ミリという記録的な雨量となりました。最大1日雨量や最大1時間雨量の推移を見ても、年々増加傾向にあることが分かります。実際に久留米市では、この7年間で6回の大規模な浸水被害が発生しています。


平成30年7月の大雨では、市東部の市街地で広範囲に浸水が発生しました。この地域はインターチェンジを中心に開発が進んできたエリアですが、このように近年は市内各地で内水氾濫による被害が発生しています。令和3年8月の大雨では総雨量896ミリを記録し、これは昭和28年の筑後川氾濫時の約1.6倍に相当します。また令和5年7月の大雨では、1時間雨量91.5ミリ、24時間雨量402.5ミリと、1日で月間平均雨量に匹敵する雨が降りました。
こうした度重なる浸水被害は、市民生活や経済活動に大きな影響を与えており、その克服が市の最重要課題となっています。

組織横断の体制づくりから対策を進める
この課題に対応するため、現市長の就任直後である令和4年2月に「流域治水推進プロジェクト」を設置しました。これまで河川部局や防災部局が中心となっていた対策を、総合政策部や農政部なども含めた組織横断的な体制に拡大し、浸水対策・減災対策を推進しています。
このプロジェクトの目的は、関係部局間の情報共有と連携体制の構築により、組織横断で施策を推進することです。主な役割は3つあり、1つ目が浸水・減災対策の新たな施策の検討、2つ目が施策の推進と進捗管理および連携、3つ目が施策の見える化です。体制としては、副市長が総括、防災対策担当部長がリーダー、河川課長がサブリーダーを務め、関係部局の次長を中心に構成されています。
さらに具体的な検討を進めるために、4つのワーキンググループを設置しています。1つ目は貯留施設の検討で、公共施設を活用した雨水の流出抑制や貯留施設の整備、農業施設の活用などを検討しています。2つ目は協働による浸水・減災対策で、企業や行政、市民と連携したボランティア活動や、田んぼダム、貯留タンク設置への補助制度の拡充などを検討しています。3つ目は見える化で、広報や記者会見などを通じた周知方法の検討です。4つ目は特定都市河川の検討で、浸水被害の著しい河川に対する新たな対策として、特定都市河川の指定について検討しています。これらの内容はプロジェクト会議で報告され、市長も参加する中で迅速な意思決定が行われています。


「逃げる・流す・貯める・復旧支援」を一体で捉える
次に、久留米方式流域治水の全体像についてです。この取り組みは「逃げる」「流す」「貯める」「復旧・支援」、そしてそれらを横断する「協働」という五つの柱で構成されています。ハード対策とソフト対策の両面から水害対策を進めている点が特徴です。
「逃げる」の取り組みでは、防災情報アプリやエリアメール、LINE、ホームページ、テレビなど多様な手段で避難情報を発信しています。また、年間100回以上の出前講座や研修を通じて防災意識の向上にも取り組んでいます。避難所の環境整備として、食料や水の備蓄、プライバシー確保のための設備(パーテーションテント等)を整備しているほか、ペット同伴避難が可能な避難所をいち早く設置しました。さらに、地域が自主的に運営できる避難所制度も開始しています。
「流す」の取り組みでは、国・県・市が連携して総合内水対策計画を策定し、排水機場の能力向上や河川整備、排水路の新設などを進めています。
「貯める」の取り組みでは、筑後川本川や支川への流出抑制のための貯留施設を整備しています。久留米大学の協力により、平常時はグラウンドとして使い、豪雨時には貯留施設となる設備も整備しました。さらに、公園や学校での貯留施設整備や、田んぼダム、ため池の低水管理など、農業施設の治水資源化も進めています。
「復旧・支援」では、被災者が迅速に支援を受けられるよう、デジタルを活用した支援システムを令和6年から導入し、罹災証明書の発行や支援状況の一元管理を実現しています。また、平時から社会福祉協議会や支援団体との連携強化、災害協定の見直し、自治体間の相互支援体制の構築も進めています。


地域との協働と見える化から流域治水を広げる
こうした取り組みにより、治水予算は大きく拡大しました。令和3年度には約16億円だったものが、令和4年度から7年度までの4年間で約170億円を確保しています。また、貯留機能は約4.4倍の142万㎥、排水機能も約1.2倍に向上する見込みです。
さらに特徴的なのが「みんなで流域治水」の取り組みです。市民、企業、行政が協働し、排水路の清掃や土のうづくりなどを行うもので、令和4年度は約200人規模でしたが、令和7年度には約1700人規模まで拡大しました。この活動を通じて、「自分たちのまちは自分たちで守る」という意識が広がっています。

また、整備した施設には監視カメラや水位計を設置し、夜間や休日でも自動運転と遠隔監視が可能な体制を整えています。一部の地区ではAIカメラの活用も進めており、局地的豪雨の状況把握や施設の効果の見える化につなげています。
このように久留米方式流域治水は、単なる技術的対策ではなく、ハード整備、ソフト対策、そして地域の協働を一体的に進める取り組みです。特に重要なのは、市民一人ひとりに流域治水を自分ごととして捉えてもらうことであり、市長自ら地域と対話を重ねています。今後も久留米市としては、関係者と連携しながら、流域全体で水害に強いまちづくりを着実に進めていきたいと考えています。
遠隔監視で進める水害対策~業務効率化・住民の安全確保へ~
第二部に登場したのは古野電気株式会社の内形氏。水害リスクの常態化を前提に、現地確認に依存した監視から脱却し、「揃える・変える・促す」を軸とした遠隔監視による業務効率化と住民の避難行動促進を実現する水害対策についてお話いただきました。

【講師】
内形 勇太朗 氏
古野電気株式会社 システム機器事業部 事業企画部 事業企画課
2018年4月に入社。2023年9月よりシステム機器事業部 事業企画課にて新規事業の事業推進を担当。
まず弊社の会社概要からご紹介いたします。弊社は世界で初めて魚群探知機の実用化に成功した会社で、船に取り付ける電子機器を扱う舶用電子機器の総合メーカーです。海の世界では非常に認知度が高く、「世界のフルノ」と呼ばれることもあります。本社は兵庫県西宮市にあり、グローバルに製品を展開しています。
現地確認に依存した監視から情報取得のあり方を見直す考え方
まず近年の豪雨被害についてです。線状降水帯やゲリラ豪雨の発生が増えており、水災害は今後も頻発・激甚化していくと考えられています。これは避けられない前提として、自治体として何らかの対策が必要になります。
河川に絞って見ても、水害被害額は非常に大きく、近年の河川氾濫では多数の河川で氾濫が発生し、人的被害も出ています。また、過去10年間で水害・土砂災害が1回以上発生した市町村は1700にのぼり、発生していない方が珍しい状況です。つまり、水災害はどこでも起こり得るものであり、「うちは大丈夫」という状況ではないと考えています。

その対策として水位計を設置されている自治体も多いと思いますが、水位の数値だけでは判断が難しいという声をよく伺います。例えば、実際に増水しているのか、流木が詰まっているのか、土砂が堆積しているのかは、現場を見ないと分かりません。そのため夜間や悪天候でも職員が現地確認に行く必要があり、負担と危険が伴います。こうした背景から、映像による確認の必要性が高まっています。
また、現場に行かなければならない、見たい場所を見られない、人的リソースが不足している、モニターに張り付いて監視しなければならない、といった課題もあり、これらを総合すると、少人数で効率的に監視できる体制の構築が求められています。

張り付き監視からアラート型監視へ移行する進め方
現状は「見る監視」、つまり現地確認やモニター監視が中心ですが、これからは「知らせる監視」へ移行していくことが重要です。水位は自動で監視し、危険水位に達したらアラートが出る仕組みにすることで、職員は他の業務に時間を使えるようになります。また水位ごとにアラートを設定することで、行動判断につなげることが可能になります。

これを実現するために、弊社では2つのソリューションをご提案しています。1つが「見る監視」としての簡易型クラウド遠隔監視カメラ、もう1つが「知らせる監視」としての水位AIアラートです。これにより少人数でも効率的な監視体制が構築できます。

まずカメラについてです。こちらはソーラーとバッテリーの一体型で電源不要、無日照でも7日以上稼働可能です。通信線も不要で、即日設置・運用開始が可能です。低電力・高感度・簡単設置が特徴で、工事費も抑えられるためトータルコストの削減につながります。実際に自治体職員の方々で設置されるケースもあります。
夜間撮影についても、わずかな明かりがあれば河川の状況を十分確認できる性能があります。撮影した画像はLTE回線でクラウドにアップロードされ、専用サイトの他、自治体ホームページなどとも連携可能です。国土交通省の「川の防災情報」との連携実績もあります。
活用事例としては河川監視のほか、ため池、道路、アンダーパス、水門など幅広く利用されています。いずれも電源がない場所や現地確認が困難な場所での活用が中心です。
カメラによって現場に行かずに状況把握が可能となり、職員の安全確保につながります。


情報共有を通じて住民の避難行動につなげる
次に水位AIアラートです。カメラ画像を解析し、任意で設定したラインを超えるとメールで通知されます。これによりモニター監視が不要となり、「知らせる監視」が実現します。

アラートラインは自由に設定でき、複数段階での警戒レベル設定も可能です。通知時には画像も添付されるため、すぐに状況を把握できます。これにより張り付き業務の削減と業務効率化が実現できます。
さらに、突発的な豪雨への対応、設置困難な場所での監視、災害後の分析などにも活用できます。
現場に行かずに情報を揃え、張り付き監視をアラート監視に変え、住民に共有して避難行動を促すことで、職員と住民双方の安全確保と業務効率化が実現できます。
最後に無償トライアルのご案内です。カメラは2週間無償で貸し出し可能で、水位AIも導入後に試すことができます。設定も弊社で対応しますので、ぜひご検討いただければと思います。
お問い合わせ
ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
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