ジチタイワークス

愛媛県西予市

小規模多機能自治を推進する!市民と行政が協働する地域づくりとは。【行革甲子園2024】

全国の市区町村の創意工夫あふれる取り組みを表彰する、愛媛県主催の「行革甲子園」。7回目の開催となった令和6年の「行革甲子園2024」には、35都道府県の78市区町村から97事例もの応募があったという。

今回はその中から、愛媛県西予市の「市民と行政の協働による地域づくりの推進事例」を紹介する。

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2024」の応募事例から作成しており、内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

取り組み概要

1. RMO(地域運営組織)の設立
西予市は、平成23年度に市内の旧小学校区域(27区域)で地域づくり組織(地域運営組織)を設置し、小規模多機能自治の推進を開始。
※RMO:Region Management Organizationの略。

2. 地域づくり交付金事業
同年には、地域づくり活動の活性化を図り、事業の円滑な運営を促進するため、地域づくり組織が実施した事業に対して地域づくり交付金の交付も開始。また、平成28年度から地域が主体的かつ自発的に取り組む地域づくり活動のさらなる活性化を目指し、地域づくり交付金事業に手上げ型交付金事業を創設し、地域ならではのソフト事業を展開するためのスタートアップを支援した。

3. 公民館から地域づくりセンターへの移行
令和元年度に地域づくり活動センター市民検討委員会を発足し、公民館の在り方等を見直し、センター化に向けた協議・検討を開始した。

令和4年度にこれまで若手職員を配置していた全公民館へ、経験豊富な係長級以上のセンター主事を先行配置し、センター化への地域との調整など準備を行った。令和5年度にセンターの運用を開始し、地域と行政が協働で取り組む新たなサービスの創出を図っている。

背景・目的

● 急激な人口減少や高齢化により過疎化が進展し、周辺地域では担い手不足による集落活動の衰退や暮らしの利便性に関する不安が増大していた。
● 広域な面積を有し、多様な特性のある西予市では地域課題も複雑であり、市内での一律的な行政サービスでは対応に限界が生じている。
● 人口減少社会に備え、自主自立の住民自治を目指し、平成23年度からスタートした地域づくり交付金事業により旧小学校区単位に地域運営組織を設立し、課題解決型の住民自治である小規模多機能自治を推進してきた。
● 地域づくり活動が活発化し、拠点施設として利用される地区公民館の在り方や役割に変化が求められる時代となってきていた。

上記の背景から、公民館の在り方を見直し、市民の多様なニーズに沿ったまちづくりや地域の主体的な地域づくり活動を一層進めていくことで、市民と行政の協働の場となる「地域づくり活動センター」の実現に向けた取り組みを行ってきた。

取り組みの具体的内容

RMO(地域運営組織)-Region Management Organization-の設立

1. RMO(地域運営組織)の設立
「自分たちの地域を、自分たちの手で」を基本理念に、西予市版の地方分権制度を市内へ導入し、地域づくり組織を人材面と財政面において支援を行うことで、市民と行政の協働によるまちづくりを推進している。
 

2. 地域おこし協力隊の活用
平成22年度から導入していた地域おこし協力隊について、平成28年度からより地域と密接につながり、様々なミッションに柔軟に対応できるよう個人事業主型(委託型)の協力隊の募集を開始した。「RMO(以下、地域づくり組織という)」が個人事業主型の支援団体となることで、協力隊と地域との関連性を深め、協力隊の自立まで地域が責任をもって支援する体制としている。

現在は、協力隊応募前に地域に足を運び、その地域が求めるミッションの一部を体験するなど、地域と協力隊のミスマッチを事前に防ぐことを目的に「お試し地域おこし協力隊制度」を導入している。
 

地域づくり交付金事業

1. 基礎型交付金事業
平成23年度から地域づくり組織へ交付金の交付を開始。交付金額の算定方法は、均等割・人口割・面積割とし、交付金の用途は、地域づくり計画に基づく、地域住民合意の公益事業であれば制限をしない運用とした。なお、算定方法については、現在までに3回見直しを行っている。

2. 手上げ型交付金事業
平成28年度から地域づくり交付金事業に手上げ型交付金事業を創設した。事業審査会を設置し、地域づくり組織自らが、その地域らしさや公益性などをプレゼンテーションし、地域づくり分野において専門的知識を有する大学教員やNPO法人代表などの地域づくりアドバイザーが審査し、市長は、審査会の報告をもとに交付対象事業等を決定し、地域づくり組織へ手上げ型交付金を交付している。
 

公民館から地域づくり活動センターへの移行

1. センターの機能
多様な住民ニーズに対応し、行政サービスの拡充を図るため、教育部局(社会教育施設)から市長部局(住民自治の活動拠点)へ移管。公民館が従来行っていた社会教育・生涯学習は、教育委員会と市長部局が連携して推進を行っている。また、人口減少社会に立ち向かうことのできる持続可能な住民自治を目指し、4つの機能をセンターの柱として整備した。


 

2. 組織機構改革
将来の人口減少に備え、センター化に併せて組織再編(支所の4課を2課へ統合)を行った。また、支所の業務を見直し、本庁および地域づくり活動センターへ業務移管を行うことで、支所の職員を本庁に集約し、支所の職員数を3~4割削減した。

3. 地域人財育成セミナーの開催
地域の課題解決に向けて、地域の中で活躍し、地域の要請に応えられる地域リーダーとなり得る人材の育成と小規模多機能自治への取り組みである地域づくり活動センター化を見据えた人材育成を図るため、令和3年度から令和5年度までの3年間、「せいよ地域人財育成セミナー」を開催。

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

RMO(地域運営組織)の設立
組織の対象を子どもたちが歩いて移動できる生活圏であり、普段から顔の分かる範囲である旧小学校区としたことにより、対象人口が約80人から8,000人規模の組織と大小様々になったが、地縁や帰属意識という社会生活全般の範囲や人と人とのつながりを考慮することで、より地域課題に即した活動が可能となった。また、行政職員を地域担当職員に任命して、地域づくり計画書の作成や組織化を支援したため、短期間で地域づくり組織を立ち上げることができた。

1. 地域おこし協力隊制度の活用
同市では、「雇用型」と「個人事業主型」の2タイプの雇用形態に取り組んでいる。中でも、市内の地域づくり組織等が協力隊の支援団体となり、地域課題解決のために設定したミッションに取り組みながら、定住に向けた活動もフレキシブルに行える「個人事業主型」を多く取り入れたことで、卒業後の定住につながっている。

2. 地域版ふるさと納税制度の創設
地域づくり組織において、将来に渡って安定的に活動を続けていくため、営利事業による自主財源の確保が求められているが、全域でそのような活動は困難であることから、地域出身者など地縁者へふるさと納税を呼びかけ、寄附先に地域づくり組織を指定できる仕組みを設け、その寄附金の一部を基礎型交付金として地域に上乗せ配分する制度を令和6年度から実施することとした。


地域づくり交付金事業
暮らしやすく個性豊かで活力に満ちた地域づくりを推進するため、地域づくり組織に交付金を交付。また、均等割・人口割・面積割を考慮した基礎型に加え、地域住民の主体的かつ自発的な地域づくり活動を推進するため手上げ型交付金制度を創設。
 

公民館から地域づくり活動センターへの移行
1. センターの4つの柱の整備

人口減少社会に立ち向かうことのできる持続可能な住民自治を目指し、以下の4つの機能をセンターの柱として整備した。
・課題解決型の住民自治である「地域づくりの場」
・安心安全な地域福祉への取組を支援する「支えあい・つなぎの場」
・既存機能の生涯学習を推進する「人づくり学びの場」
・本庁や支所へ行かなくても行政手続きや相談ができる「行政窓口の場」

2. センター職員及び地域任用職員の配置
全国的に、行政改革として公民館を指定管理者制度により民間委託し、行政職員や業務の一部を撤退する流れの中で、同市では敢えて市直営のセンターとして既存の公民館の職員数を維持するとともに、センター業務を円滑に推進するため、センター主事は係長級以上の中核職員を配置し、地域への支援強化を図った。

また、地域づくり活動をより活性化させるため、地域づくり組織の事務局などを担う地域任用職員を配置。地域任用職員は、地域づくり組織が自ら雇用し、財源については、平成23年度から地域づくり組織へ交付している基礎型交付金に1組織年間300万円(一部600万円)を加算し交付。地域任用職員の業務内容は、地域が求める人材により様々で、行政上の身分は有さず、雇用形態、雇用人数、勤務条件、福利厚生などは地域の裁量により定めている。地域づくり組織の事務職員として地域任用職員を配置することにより、センターと地域づくり組織が「連携・協力」する関係となっている。

3. センター化の準備は市民と協働
センター化準備期間に、「今後の地域づくり活動」「センターの設置箇所」「地域任用職員」「既存事業などの在り方」「センター長」などを地域で検討することをお願いし、自治体主導ではなく市民(地域)主体での準備を行った。

4. センターにおける業務拡充
本庁や支所に行かなければできなかった行政手続きやサービスをセンターで受けられるよう、業務の見直しを図ることでセンターの行政相談窓口機能を拡充(80を超える業務を拡充)した。また、本庁・支所・各センターにタブレットを配備し、センターで対応できない業務や相談については、住民はテレビ通話で本庁や支所の担当職員と直接話すことができるようにしている。

5. 地域づくりアドバイザー派遣事業
地域づくり活動の活性化を図ることを目的として、地域づくり組織に対し、組織の円滑な運営、地域づくり計画の策定および事業実施、情報提供や指導助言など地域づくりに困った際に、アドバイザーを派遣し、地域のお手伝いを行う、「せいよ地域づくりアドバイザー派遣事業」に取り組んだ。

取り組みの効果・費用

RMO(地域運営組織)の設立
令和5年度までの地域おこし協力隊の実績は、雇用型・個人事業主型合わせて61名で県内1位の数字となっている。また、個人事業主型導入後の協力隊の活動期間終了後の定住率は72%となっており、全国平均の65%に比べ高い数値を維持している。

地域づくり交付金事業
平成28年度の手上げ型交付金事業創設以来、108事業の採択、総額は249,815千円を交付。一部の地域づくり組織では未活用となっているが、ほとんどの地域づくり組織で手上げ型交付金を活用して事業に取り組んでおり、地域主体の地域づくりの活性化に寄与している。
※活用例:地方への移住希望者や就農希望のある学生を対象に、柑橘農業実習をメインとしたインターンシップの取組や地域産品を活用したメニュー開発などを実施。

基礎型交付金を地域づくり組織に交付することで、地域に応じた課題の解決や次世代の育成につながっている。
※活用例:平成30年7月豪雨災害の復興シンボルである乙亥会館での竹あかり展示や地域猫の保護活動、小学生が夢を語り地域がその夢を叶えるしろかわっこ夢大賞、地元高校生が地域のために活動できる支援などを実施

公民館から地域づくり活動センターへの移行
・地域づくりアドバイザー派遣事業の事業開始から令和5年度までの活用実績は延べ81件。派遣事業を活用することで、地域づくり組織が取り組む新規事業の立案が増加するとともに地域の活性化につながっている。
・令和3年度から令和5年度までに開催した地域人財育成セミナーの受講者は延べ121名。そのうち23名の受講者が地域任用職員として地域で活躍中。
・センター化に併せて行った組織機構改革により、支所の職員数を136人から90人へ削減した。
・各センターで提供する行政サービスを拡充し、市民が本庁や支所へ行かなくても、身近な相談や困りごとが解決できるサービスを提供。(市民アンケートにより効果を検証中)

取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

RMO(地域運営組織)の設立
地域づくり組織の計画・立ち上げを短期間(約3カ月)で行政が主導して行ったため、地域担当職員には、地域との調整など相当な業務負担があった。地域にとっても最初は手探り状態であり、走りながら考える状況がスタート時点ではあった。

地域づくり交付金事業
手上げ型交付金制度を創設したが、人口規模の小さい地域づくり組織からは現状の生活で手一杯の中、新たな取り組みに対する不安の声があり、制度の活用に至っていない組織がある。

公民館から地域づくり活動センターへの移行
公民館を地域活動の拠点施設として活用することにより、地域住民の主体性を生かした小規模多機能自治活動による自主自立の地域社会づくりを図るため、拠点施設の在り方や方向性の提案を行う諮問機関として市民検討委員会(34名で構成)を設置し、移行に関する検討を行った。同委員会では、生涯学習の衰退や地域任用職員の人材確保、地域へ移行することの必要性など様々な問題点を丁寧に解決するため、分科会を含め、計27回(約1年半)会を開催した。

地域によって地域づくりに関する温度差が大きかったものの、センター化の一斉スタートを行うことができた。地域任用職員の雇用について、人口規模の小さい地域など、一部地域では人材確保に苦労した。

今後の予定・構想

RMO(地域運営組織)の設立
地域住民が市外の地縁者へ「地域版ふるさと納税」制度について積極的にPRすることで、地域づくりの財源確保(寄附の獲得)に努めていく。将来的には、地域づくり組織が、「地域課題の解決」だけでなく、「地域が稼ぐ方法」を模索し、地域のさらなる活性化を目指す取り組みを推進する。

地域づくり交付金事業
平成30年度から⑶年ごとに地域づくり交付金事業を評価、見直しを行ってるが、引き続き「変化」に順応できる制度へ創り上げていくため、行政と地域づくり組織、地域づくりアドバイザーとの三者で制度設計に努めていく。

公民館から地域づくり活動センターへの移行
令和7年度に予定している地域づくり活動センター推進計画の見直しに向け、地域づくり活動センター推進計画審議会においてセンター運営等について審議を行う予定としている。

市内にある27の地域づくり組織に対して、地域づくり活動への人的(各地域づくり組織へ市職員である地域担当職員を2~5名配置、地域づくりアドバイザー派遣制度の活用、地域任用職員の雇用支援など)及び財政的(人口割や面積割等による基礎型交付金の交付、手上げ型交付金の交付、地域版ふるさと納税制度の創設)支援を行う。

将来的に、地域づくり組織が地域づくり活動センターの運営を望まれる場合、指定管理へ移行する予定としている。

他団体へのアドバイス

・地域づくりにRMO(地域運営組織)は必要不可欠です。積極的にRMO(地域運営組織)の設立を支援しましょう!
・RMO(地域運営組織)が安定的に運営していくために、人的・財政的支援を行いましょう! 
・RMO(地域運営組織)に対し、情報提供を行うなど伴走支援を心がけましょう!

 

【愛媛県西予市ふるさと納税特設サイト 活用事業のご紹介】
https://furusato-seiyo.jp/usage/case.php

【行革甲子園】全国の自治体の創意工夫あふれる取り組みを紹介! 記事一覧

このページをシェアする
  1. TOP
  2. 小規模多機能自治を推進する!市民と行政が協働する地域づくりとは。【行革甲子園2024】