ジチタイワークス

福島県本宮市

名前でつながり地域を応援!全国「まゆみちゃん」交流プロジェクトとは?【行革甲子園2024】

全国の市区町村の創意工夫あふれる取り組みを表彰する、愛媛県主催の「行革甲子園」。7回目の開催となった令和6年の「行革甲子園2024」には、35都道府県の78市区町村から97事例もの応募があったという。

今回はその中から、福島県本宮市の「名前でつながり地域を応援!『全国まゆみちゃん交流プロジェクト』」を紹介する。

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2024」の応募事例から作成しており、内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

取り組み概要

本宮市では、令和2年度より、市のイメージキャラクター「まゆみちゃん」の名前の特性を活かし、全国で「まゆみ」の名前を含む方のアイデンティティに関与し、関係人口、ファンの創出・拡大事業を開始した。

これは、全国への情報発信・拡散力の強化や、話題性、新たな魅力創出による知名度の向上を図るとともに、地域内・地域外の住民交流や、新たな事業の創出、既存事業への付加価値創造などを行い、地域の担い手確保や郷土愛醸成を図り、地域活性化を推進するプロジェクト。

全国の「まゆみ」さんと、市民・市内事業者などがそれぞれ実現したいことを、相互協力体制(助け合い)により実現するためのマッチングを行っている。


■登録条件
 ・氏名の読みに「まゆみ」を含む方 例)まゆみ たけし、さとう まゆみ、さくま ゆみこ など
 ・同じ名前の人とつながりたい方、イメージキャラクター「まゆみちゃん」をとても他人とは思えない方、本宮市のことをどこか放っておけない方、全国のまゆみちゃんが集まると聞いてワクワクした方、とりあえず気になる方 など

■会員登録者数(令和6年6月1日現在)
 ・2,012人 ※全国47都道府県、海外5か国の「まゆみ」さん

■本宮市イメージキャラクター「まゆみちゃん」について
 ・強くしなやかな、市の木「まゆみ」の実がモチーフのキャラクター
 ・福島のへそのまち 本宮を表す、おへそが特徴的

背景

自治体知名度や休日滞在人口の低さなどの課題解決のため、新たなブランドイメージ確立による市の知名度向上を図るとともに、地域外住民と地域の関わりによる賑わい創出につなげていくことが事業構築に至る背景である。

令和元年に実施した事業の関係者に「まゆみ」さんがおり、ご当地キャラクターには興味がなかったそうだが、同市イメージキャラクターが自分と同じ名前ということを知って、思わずグッズを購入したエピソードを聞いたという。名前がもつ力にヒントを得て、『全国から「まゆみ」さんを集めたら面白いのではないか』という些細な会話が、プロジェクト発足のきっかけとなっている。

目的

人口減少社会において、地域内住民だけで事業やコミュニティ、文化を維持・継承することが困難になっている。会員やその家族に伝統行事、イベントなどの様々な取り組みに参加してもらうことにより、コミュニティや文化を維持していくことに加え、事業創出、既存事業への付加価値の創造を通して、新たな魅力を創出していくことを目的としている。

また、会員登録者が全国、海外に波及している状況を鑑み、広く市の魅力を発信、拡散していく情報発信・拡散機能としても活用している。

取り組みの具体的内容

1年目:募集・キックオフ(令和3年度)【オンライン】
・SNSを活用した募集(市内協力事業者のSNSアカウントから募集開始のカウントダウンを実施)
・募集のため、「まゆみちゃん」が国道4号線を5km歩いて募集
・YouTubeでキックオフイベントをライブ配信(ライブ視聴者1,031人、アーカイブ2,700回以上再生)

2年目:関係構築・事例創出(令和3年度)【オンライン】
・オンライン会議システムを使用した交流、関係構築
・本宮市にまつわる食材を使用したレシピコンテスト、アフターコロナを見据えたツアールート作成プロジェクト、「本宮かるた」で市の歴史を学び、会員投稿によりオリジナルかるたを作成するプロジェクト、地元テレビ局主催のCMコンテストへの作品出品等、会員との協働による成果達成型のプロジェクトを実施 → 会員に市を知っていただき、市の情報を広げていくことがメイン
・2月のキャラクター誕生日に合わせ、バースデーパーティー&成果報告会を開催
(以降、毎年開催しており、海外在住の会員もオンライン参加している)

3年目:会員・市民の相互協力体制の構築(令和4年度)【リアル&オンライン】
・地元農業法人とコラボし、市産早場米の変異種でお盆前に食べられる超早場米に会員応募・投票により愛称をつけ、田植え~稲刈り~販売・試食を行うとともに、そのほかの市産農産物のPR・販促につなげるプロジェクト(岩手、京都、東京などから会員とその家族延べ36人が参加)や、市伝統行事の担い手として女性だけで担ぐ真結女御輿(まゆみみこし)に会員が参加(岩手、東京などから会員とその家族計4人が参加)するなど、感染症対策を講じながら、対面の場を確保し、関係を強化するフェーズに移行した。
・SNSやYouTube、オンラインサロン、公式LINEなどの場を活用し、取り組みの各段階において現地に来られない全国・海外の会員に情報を共有することで、プロジェクトを通した本市との関係維持強化を図った。

4年目:関係の維持・強化(令和5年度)【リアル&オンライン】
・今後来市予定の会員や、市に来られない会員に向け、「行ってみる。行った気になる」をコンセプトに市内散歩動画を公開。菓子店や飲食店をメインに紹介し、全国に販路を拡大するためプロジェクト内に特設オンラインショップを開設し販売した(販売額:97,926円)
・超早場米プロジェクトでは、田植え・稲刈り・試食会に岩手、東京などから会員とその家族延べ31人が参加したほか、パッケージデザインを会員と決定する取り組みを行った。
・そのほか、真結女御輿(まゆみこし)(岩手、東京、岐阜などから会員とその家族延べ15人が参加)など、前年度に実施した取り組みを継続することで、新たな参加者、担い手の確保を図った。

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

関係人口創出に関する取り組みは、地域課題や地域の魅力などの「関わりしろ」を顕在化し、関わりしろに対する共感を軸に、関係人口の創出・拡大を図って行くことが一般的であるが、本プロジェクトにおいては、「同じ名前」というアイデンティティへの共感を軸として、同市側から関与を求めていくことで、市と会員の縦のつながりだけでなく、会員相互の横のつながりを強化し、地域課題解決や地域活性化につなげるためのマンパワーを確保している。

企画から募集、事業実施の各段階において、住民や企業、学生からなるサポートメンバーと協働することで、様々な視点からのアイデアを得ており、また、SNSなどを活用したプロモーションの波及効果を得ることができている。

取り組みの効果・費用

・会員登録者数 2,012人
・プロジェクト公式LINE登録者数 1,455人
・SNSフォロワー数 延べ770人(Instagram、X)
・市内事業者・飲食店の新規顧客、リピーターを獲得(現地訪問およびオンラインショップ)
※オンラインショップを運営していない事業者については、プロジェクトで特設オンラインショップを設置して予約販売を行った(令和5年度販売額:97,926円)

事業費(単位:千円)
(令和6年6月1日現在)

取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

プロジェクト設計時は、地域において魅力や課題などの発掘活動を行うことで、関係人口の創出・拡大を図っていくこととしていたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、移動自粛が要請される中で、オンラインを中心とした事業実施にシフトすることとなった。
→オンラインツールのみで関係を強化することは困難であったが、徐々に会員側もツールに慣れていき、新たにSNSアカウントを作成して、会員同士のつながりを構築するなど、能動的な動きが見られた。
→移動自粛が解除されてからは、オンラインで構築した市と会員の縦の関係だけでなく、会員が自ら構築した横のつながりも相まって、現地での活動を活発化することができている。

プロジェクト開始5年目を迎え、県外から何度も来市いただく会員、オンライン事業に毎回参加いただく会員など、アクティブな会員が増加していき、会員同士の横のつながりも強化されていく一方で、全体の会員数は増加していくものの、取組への新規参加者が確保できない状況が課題となっている。
→これまで行ってきたプロジェクトの情報をアーカイブとして残しながら、取り組みの状況を見える化しつつ、新たな取り組みを創設し、プロジェクトを活性化させていく。

今後の予定・構想

各取組への参加者拡大に向けて
これまでの取り組みの中で、成功したものの流れを継続・発展させていくことで、あえてマンネリをつくり、流れを確認できる状態をつくったうえで、新規参加者を確保していく。
住民や企業、学生からなるサポートメンバーと協働で原状と課題を分析し、新たな取り組みを行っていくことで、アクティブな会員にとって飽きのこない、持続的な取組を創出していく。
これまでは、来市いただくことを基本に事業を実施しつつ、全国・海外に波及した会員に向けたオンライン配信を並行してきたが、新たなアクティブ会員を創出するため、会員登録者の割合が多い首都圏において出張イベントを行い、今後の取組への参画に向けた会員の掘り起こし、関係の構築・拡大を図っていく。

プロジェクトの横展開
本宮市イメージキャラクター「まゆみちゃん」は、友好都市の埼玉県上尾市イメージキャラクター「アッピー」と結婚しており、両市友好キャラクターとして2人の間には「あゆみ」という子どもがいる。
「まゆみちゃん」同様に、人の名前との親和性がある「あゆみ」を軸に、本プロジェクトの成功事例を横展開し、「全国あゆみちゃん交流プロジェクト」として親子プロジェクトが実現できれば、会員規模が拡大され、より大きな効果を期待できるため、現在の取組事例を蓄積しながら、検討していく。

他団体へのアドバイス

名前というアイデンティティへの関与は、想定を超えて反応が多く、当市の場合、キャラクター名を通して、自治体を知っていただく機会の創出につながった。

会員の方からは、登録時に「応援したい」、「全国のまゆみさんとつながりたい」などといった前向きなコメントをいただいており、取り組みを重ねる中で、市で設定した事業以外でも、プライベートで来訪いただいたり、つながりをもった会員同士で独自にチームを結成して福島県外で開催される大会に出場し、市のPRを行っていただいたりと、私たちの手を離れ、名前という絆から自発的な動きも見られる。

当市のようにキャラクター名だけでなく、自治体名など、個人の名前に関与できる取組は全国でも実施可能であると考えられ、名前以外でも個人がもつルーツなど心を動かすファンコミュニティの形成は、会員登録に係るハードルが下がり、また登録後も会員同士の強固な関係形成につながりやすいように感じる。

全国的に人口減少に歯止めがかからない中、地域外住民の関わりは、地域の賑わい維持に必要不可欠。他団体の皆さんも、既存資源を活用しながら、新たな魅力を創造するための一助となることを願っている。

 

【全国まゆみちゃん交流プロジェクトホームページ】
https://www.city.motomiya.lg.jp/site/mayumi-project/
【本宮市公式YouTubeチャンネル「全国まゆみちゃん交流プロジェクト」再生リスト】
https://youtube.com/playlist?list=PL_tpJx01MVbqBgIVJjAmcicWtTQtSek-q&si=caeV71zQERSduoAv

【行革甲子園】全国の自治体の創意工夫あふれる取り組みを紹介! 記事一覧

このページをシェアする
  1. TOP
  2. 名前でつながり地域を応援!全国「まゆみちゃん」交流プロジェクトとは?【行革甲子園2024】