近年、全国各地で豪雨による水害が増える中、自治体では防災の啓発活動により一層力を入れ、研修や講演、訓練などを行っている。福知山市(ふくちやまし)では、豪雨による避難所開設が毎年続いており、数年に一度、大規模な水害が発生しているという。
そんな同市の危機管理室に所属し、入庁1年目にして「車中泊避難体験イベント」を企画・実施した森山さんに話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.30(2024年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
京都府福知山市
市民総務部 危機管理室
森山 佳亮(もりやま けいすけ)さん(入庁2年目)
防災は“人の命に関わる重大な取り組み”と森山さん。今回のイベントは単に開催して終わりではなく、ノウハウを広く共有するため、参加者募集の条件に“動画への出演ができる”と入れ、動画をつくることにもこだわった。
多世代に防災を広めたい。
大分県の高校を卒業後、福知山公立大学に進学しました。1年時に平成30年7月豪雨災害を経験し、見慣れた風景が水没して、水害の恐ろしさを実感。防災に関心をもち、消防防災サークル「京都学生FAST」に入って防災啓発活動を行いました。その経験を活かしたくて、当市の職員を志望したのです。「防災に関わりたくて入庁する人は珍しい」と言われましたが、希望の業務に就くことができ、やりがいを感じています。入庁後、平時は防災関連機関と連携した訓練、小・中学校や企業、自治会などでの講座、防災啓発イベントなどを実施。緊急時には避難情報の発令や避難所の開設・運営にあたっています。
入庁して初めて企画したのが、令和4年11月に開催した1泊2日「車中泊避難体験イベント」でした。防災の啓発といえば講演や訓練などが一般的ですが、堅苦しいイメージをもたれて、参加者は意識の高い高齢者に偏りがち。もっと若い人にも親しんでもらいたいという思いでイベントを企画しました。車中泊を選んだのは、当市で過去の災害において駐車場への車中泊避難が多く見られたからです。また、コロナ禍で分散避難が全国的に注目されていたのも要因でした。
イベントから動画を制作
イベント会場はイオン福知山店の駐車場で、FMラジオ局に機材を借りたり、母校の大学生にボランティアスタッフをお願いしたりして、多くの人がサポートしてくれました。このイベントでは3つのプログラムを実施しています。カセットコンロなどの調理器具を参加者に持参してもらい、夜ご飯に湯せんで簡単なカレーをつくる“炊き出し体験”。夜は親子で楽しめる映画「SING/シング」を壁に投影して上映する“ドライブインシアター”。そして翌朝は備蓄のパンを提供する“非常食の試食”です。
学校にチラシを配り、市内在住の小・中学生を含む家族15組を募ったところ、倍以上の応募で抽選するほどの人気でした。当日はトラブルもなく、皆さんに楽しんでもらえたと思います。その後、イベントの映像をもとに車中泊避難のポイントや参加者の感想などをまとめた動画を制作し、市公式YouTubeで公開しました。
もともと人前で話すことが苦手でしたが、イベントを通して市役所内外の多くの人と関わり、当日は司会も務めたことで、今では防災について実体験はもちろん、アドリブを入れて話せるようになりました。これからも市民の皆さんと顔の見える信頼関係をつくり、一人でも多くの人の防災意識を高めるために活動を続けていきます。
▲車中泊避難体験イベントの様子。家族での参加を事前に募り、子どもたちも楽しめるように内容などを工夫した。
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