市民からの通報に対して、受付から対応までの一連業務をクラウドサービスを利用したシステムによって情報の入力/共有/管理を行う。
蓄積された情報は、集計および分析によって予算化へのフィードバック/修繕計画などの立案/維持管理手法の見直しなどに活用する。
現場を移動する職員の位置情報から、通報や緊急時の現場対応を迅速に行う。
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2022」の応募事例から作成しており、本記事の内容は全て「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
背景・目的
近年、道路施設の老朽化が進むとともに市民ニーズも多様化・複雑化しており、令和3年度では5,500件を超える道路に関する通報(苦情・要望)が寄せられ、その対応に追われる日々が続いています。
また、通報の受付から対応までの経過記録や現場の状況写真などの関係資料は、全て紙媒体で処理・保管され、有効な活用がされていない状況です。
今後、通報件数の増加が見込まれる中、限られた人員・予算の中で道路の安全・安心を確保し、道路サービスレベルの維持・向上を図るためには、ICT技術の積極的な活用により維持管理の高度化・効率化を図る必要性があります。
こうした中、大分市では、日常業務で蓄積される通報記録を単なる情報の電子化にとどめず、その情報を活用した戦略的な維持管理が実施できるよう、通報から対応に至る一連の情報をクラウドで一元管理する「道路維持管理システム」を試行導入しました。
取り組み事例
「クラウドサービスを利用したシステムによる道路維持管理業務の効率化」
取り組み期間
令和2年度 ~
取り組みの内容
[道路の維持管理状況]
大分市が管理する道路の総延長は約2,480kmであり、道路施設や交通安全施設の老朽化が広範囲に進行し、令和3年度では不具合に関する通報が5,500件を超え、通報内容も多種多様になってきました。
[従来の通報対応の流れ]
市民からの通報に対し、担当者が受け付けを行い、通報内容などをメモ紙で聞き取りします。
その後、ゼンリン地図の写しに聞き取りした内容を記録します。
通報記録をもとに現場調査、立ち会いなどを行います。
帰庁後、通報記録に対応内容を記録し、現場写真の印刷、土地情報など関係資料をまとめます。
班長の確認後、事務員がその内容を記録簿一覧に入力し、ゼンリン地図の冊子に通報場所の位置を記します。
担当者が作成した記録や資料は、年度ごとに10年分を保管しています。
[システム導入による業務改善]
従来の紙ベースによる事務処理をデジタル化し、現場などの出先でも利用可能なインターネットを経由したクラウドサービスを利用して情報を一元管理します。改善効果については、あらかじめ四つの項目を設定して効果を検証しました。
(1) 事務処理の効率化(省力化)
(2) 現場対応の迅速化
(3) 記録文書の電子化
(4) データの有効利用
取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
システム操作や通報内容の入力などを簡素化・省力化し、職員の操作へのストレスを軽減させました。
システムに入力される通報者の個人情報の保護と情報セキュリティを確保するため、IDおよびパスワードによるログインとアクセス制限の設定による2段階認証を採用しました。
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
通報の受付から対応に至る作業の進捗が地図上に表示されたピン(通報場所)の色で可視化できます。
現場職員の携帯する端末(タブレット)の位置情報がシステムに反映され、職員の現在地がリアルタイムで確認できます。
効果・費用
通報情報がシステムで処理、保管されるため、記録確認の時短化や報告書の自動作成で時間外勤務が49%削減され、ペーパーレス化で年間約11,000枚のコピー用紙が節約されました。
システムで情報がリアルタイムに共有できるため、過去の通報記録が現場からも確認でき、迅速かつ効率的な現場対応が可能になりました。
現場職員の現在地が地図上で確認でき、緊急現場へのスムーズな移動により、迅速な対応が可能になりました。
地図上で進捗状況が可視化できることで、通報者からの問い合わせもスムーズな対応が可能になりました。
システムに蓄積されたデータを分析し、予算化へのフィードバック/修繕計画などの立案/維持管理手法の見直しなどへの活用が期待できます。
今後の予定・構想
クラウドサービスを利用した「道路維持管理システム」の試行導入により、システムの有効性が実証されました。今後は、道路の維持管理業務の枠を超えた庁内向けへと利用を拡大し、庁内統合型業務支援システムとして進化させ、全ての情報をクラウド上で一元管理し、運用コストの削減を図ります。
他団体へのアドバイス
道路の維持管理業務以外の庁内業務にも利用可能な便利な機能を有しており、全国の自治体においても導入可能な取り組みです。