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群馬県前橋市

自治体初!“印刷BPO”の導入で業務効率化と経費削減を叶える。

令和2年1月の自治体クラウド導入と同時に、前橋市・伊勢崎市の2市共同で帳票の標準化を行い、“住民サービス向上”と“職員の業務改善とコスト削減”を実現した「印刷BPO事業」。

ユニバーサルコミュニケーションデザイン化や、オンデマンドプリント化、機械処理を推進した業務品質の担保と迅速化が特徴で、複数業務についてデータ入稿から郵便局出しまでを一括一貫して複数自治体で共同実施する印刷BPOは“自治体初”となる。

今年8月に愛媛県が開催した「行革甲子園2022」で、85事例の中から1次審査を通過し大会当日に本会場で熱いプレゼンテーションも行った、同市の取り組みの詳細を紹介する。

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2022」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

群馬県前橋市は近隣の高崎市と伊勢崎市の3市で、平成27年4月から「情報システム共同利用推進協議会」を組織して業務の全体最適化に取り組み、行政事務の効率化と住民サービスの向上を目指し続けています。

令和2年1月の自治体クラウド導入に合わせて、群馬県前橋市と伊勢崎市の2市で住民向けに大量印刷している通知書等の帳票の標準化を行い、作成及び発送業務を共同事業として実施することで、業務改善とコスト削減効果を倍増させることができました。

 

取り組み事例
「印刷BPO~職員を紙作業から解放する~」

地方公共団体情報システム機構|【前橋市】全体最適化手法のひとつ 自治体クラウドの推進 群馬県前橋市 政策部情報政策課

関連記事|【前橋市も登壇】行革甲子園2022、結果発表!地方自治体の甲子園をレポート

 

取り組み期間

令和2年1月~(継続中)

 

取り組みの内容

令和2年1月の自治体クラウド導入と同時に、群馬県伊勢崎市と帳票の標準化を行い、住民サービス向上、職員の業務改善及びコスト削減を実現した印刷BPO事業を実施しています。ユニバーサルコミュニケーションデザイン化や、オンデマンドプリント化、機械処理を推進した業務品質の確保と迅速化が特徴です。

※複数業務についてデータ入稿から郵便局出しまでを一括一貫して、複数自治体で共同実施する印刷BPOは自治体初

 

【令和の印刷環境に適合した通知書等発送業務の流れ】

①~③までは職員、④は印刷BPO事業者が実施

 

印刷BPO事業実施前

過去の先輩たちの教訓を糧に住民のために良かれと思い頑張っている姿は共感できますが、令和の印刷環境に適合した住民向けに大量印刷している通知書等発送業務の、本来あるべき姿を実現できていませんでした。

住民のためとはいえ、完成した通知書等を職員が開封し手作業で加工したり、開封状態で市役所に納品させ内容の確認をするなど、機械処理による品質管理を台無しにしていた例があったのです。

一旦全数の通知書等を市役所に納品させ、大会議室で職員が差出不要分の引き抜き作業をすることが常態化していました。

 

以前の前橋市の住民向け通知書等発送業務の流れ

1.通知書等の用紙や封筒を専用帳票(ビジネスフォーム)として作成
2.データ(個人情報)を帳票に印字
3.個人情報が付加された帳票を同封物とともに封入封緘
4.差出不要分を引き抜く
5.郵便局に差し出す
6.用紙や封筒の在庫管理と余剰分の産業廃棄物処理

このように数多くの場面で職員が関わり、紙の保管場所と適正管理が必要でした。

そこで自治体クラウドの事業を進めていく一環としてHPで幅広くRFIを募った結果、オンデマンドプリントと、封入封緘機による封筒詰め、郵便局差し出しまで含め、一貫した品質(個人情報)管理のもとで一括して受注できる印刷BPO 事業者が多数存在してることが判明しました。

図1Ⓐ~Ⓓ

これは、1.~6.のうち4.を除くと等価値で、4.についても対象データを送信することでそもそも印刷しないことや、印刷BPO 事業者が引き抜きして市役所に納品することで等価値にできます。そこで、これらの作業への職員の関与や紙の保管場所を不要とする、印刷BPO の取り組みを実施することとしました。

さらにこの印刷BPOにメリットの一例に、短納期化が挙げられます。図1Ⓑ印刷~Ⓒ封入封緘にこれまでは上図のとおり最長2 か月要した処理が、最長9営業日(最短2営業日)に短縮できたため、引き抜き対象を最少(不要)化したことや、選挙の入場券の期日について発送5 営業日前まで決定を保留できることが挙げられます。

また、ユニバーサルコミュニケーションデザインへの取り組みは、伝わるデザインをガイドラインとして用い、住民が必要とする情報を際立たせることと行政文書としての有効性を両立させました。

その結果、生活者による評価で、資産税納税通知書について「家屋と土地の課税計算の仕方を図で表しているのはわかりやすい。納付額につき特別枠(橙色枠)で大きく強調されている。2 ページの上段を使い3 ページの最上段①~⑲の番号内容の説明が見開き対比で見て理解出来るスペース使い、紙面作りは良いアイデア」、と意見をいただきました。

 

【ユニバーサルコミュニケーションデザイン化に取り組んだ資産税納税通知書】

 

取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

テキストデータ(CSVや固定長など)出力による印刷BPOの場合は、取り扱う日本語文字集合の範囲がJIS X 0213に収まらない場合がほとんどのため、外字ファイルを合わせて提供する必要性からベンダーロックインの一因となっています。

さらに、コード化したデータを紙面に表現するための変換プログラムが必要なことから、制度改正時の改修コストや保守性の面でベンダーロックインの遠因となっていました。

そこで、システムベンダーの理解を得てPDFデータ出力へ転換していくために、システム調達時点において印刷BPO事業者への外字ファイルの提供と、印刷BPO事業者が指定するデータ形式でのプリントデータ出力を必須とした仕様で調達を行いました。

従来の様式や業務フロー、事業者を見直す業務担当者の恐怖心を払拭するために、住民が情報を受け取り易くなることの重要性を、イラストを用いて丁寧に説明し理解を得ました。

 

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

2市の業務担当者が共同して、生活者目線で帳票を再デザインすることで、伝わるとコスト削減を両立

業務を2市で最適化した後に、伝わるべき情報と伝えなければならない情報を吟味して、読み取る住民の負担を最小化。スケジュールを共通化し、使用資材も汎用品を使用し、2市が使用する分だけ一括調達することでコスト削減を実現。

 

手作業を排除し、機械処理のログで個人情報取り扱いのトレーサビリティを確保

制御コードの導入による、封入封緘機による完全自動封入の実現。

 

効果・費用

・「伝わるデザイン」により、住民は情報を受け取り易くなり、問い合わせをしなくて済む
旧帳票の2019年と新帳票の2020年で、資産税の当初納通送付後1か月間の電話問い合わせ件数及び対応時間を集計比較した結果、2020年は427件増の1557件、40時間増の127時間増。新型コロナの影響で来庁せず電話問い合わせに移行したことと、読み易くなったことによる一時的な問い合わせの増。

・印刷データをLGWANに登録するだけで、職員の通知書等の差し出し業務は完了

・紙にまつわる作業を全て削減
例えば、用紙と封筒の作成、在庫分の保管や数量管理、余剰分の産業廃棄物処理、差出不要分の引き抜き作業と引き抜き分のシュレッダー処理、郵便局への発送などから職員を開放します。

 

2市の5年間の経費総額について、6億6224万円減(49.74%減)の効果がありました。前橋市では64帳票が対象で、印刷BPOの設計開発等一次経費を含めた5年間の経費総額は3億7406万円で、従来の用紙と封筒作成、データ印字、封入封緘の5年間の経費総額は、6億952万円のため2億3546万円減(38.63%減)です。この他に、前述の職員による紙作業が削減できました。

さらに、個人情報取り扱いのトレーサビリティが確保できたため、住民から納付書が入っていない旨の問い合わせについて、根拠データ(機械処理のログ)に基づいた対応が可能になりました。

 

今後の予定・構想

PDFデータ出力は、紙媒体による住民とのコミュニケーションを電子化するだけでなく、HTMLデータ形式も同時に設計することでスマホやタブレットによる住民との多様なコミュニケーションのプラットフォームに発展させていくことができます。

自治体クラウドの推進と印刷BPOの取り組みに関して、システムベンダー・SIer・コンサルタント等の関与はなく3市の業務担当者で実施した取り組みのため、他自治体への印刷BPOに関する技術仕様やデザインの提供はむろんのこと、業務担当者が印刷BPOを推進していくためのノウハウや職員向け説明資料等の提供についても情報政策課が積極的に行えます。

この取り組みが広がることを願っています。

 

他団体へのアドバイス

20業務のシステム標準化の取り組みと並行して印刷BPOを導入することは、業務改善とコスト削減効果を倍増させるチャンスと捉えませんか!(帳票デザインの著作権は前橋市、伊勢崎市へ譲渡済。)

 

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