ジチタイワークス

大阪府四條畷市

【東 修平さん】市民のために価値ある仕事を! 全国最年少市長が先導する働き方改革

外務省、野村総合研究所インドでの勤務を経て、平成29(2017)年に現役最年少の市長として当選した、大阪府四條畷市の東修平市長。同年1月の就任後に早速取りかかったのは、市役所内の「働き方改革」でした。

国家公務員を経験していたこともあり、「行政の職員がどのような働き方をしているのかはわかっていた」と東市長。市民サービスを向上するには、まず、職員の働き方を変えて時間を生み出さないといけない。そう決意します。

※下記はジチタイワークス Vol.5(2019年4月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

職員の働き方が住民満足に直結する

市役所職員の使命は「市民サービスの向上」。市民がより安心して暮らしやすいまちにするため、頭を使い、対話をしながら解決していかなければなりません。となると、「何か新しいサービスを取り入れなければ」と考えがちです。しかし、それは無理な話だと東市長は話します。「仕事は増える一方なのに、職員の人数は変わらない。市民のために考え、動く時間が減ってきているんです。私たちの働き方が住民の生活に直結する」(東市長)。

まず取りかかったのは、定例・通例を見直すことでした。「たとえば会議時間を1時間から30分に減らす方法を考えるのではなく、『そもそもこの会議は必要か?』と考えてみる」と東市長は語ります。業務を見直すと、毎年のことだから、と“通例”で取り組んでいる政策がたくさんありました。目的・効果を検証し、「こういう会議を何回した」「予算をこれだけ使った」ではなく、「新規創業が何件増えた」「健康寿命が何歳延びた」といった成果を指標とすることで、不要なものは取りやめたのです。「撤退を判断できるのはわれわれ。市民のためと決意して終わらせるのも仕事です」(東市長)。

有識者のセミナーで役所内から意識を変える

「働き方改革」とは、ただ残業時間を減らせばいいというものではありません。仕事を持ち帰って“見た目残業”が減っても、実質何も変わっていないこともあります。そこで東市長は専門家による「マインドセット」を取り入れました。専門家のセミナーに、管理職/主幹と公務に支障のない範囲で全職員に参加してもらったのです。「セミナーの成果は、残業時間が○時間減る、ではなく、あくまでマインドが変わること」(東市長)。

はじめは「働き方改革は自分に関係がない」と考える管理職もいました。しかし、セミナーを通して働き方を見直し、業務の可視化や「集中タイム」などの新しい制度をつ
くったところ、残業時間が4割減った課が出たといいます。「○割減を達成しよう」と目標を掲げたわけではなく、気づけば達成されていた。これが重要なのだと東市長は話します。今、目指しているのは「多様性を受け入れる職場づくり」。さまざまな働き方ができる市役所への改革もスタートしています。

すべては市民のために

ちなみに、この働き方改革には約1700万円もの予算をとっています。一般会計予算が約200億円の市の規模では異例のこと。それでも、「いずれ市民のためになる」と信念を貫き通しました。「28歳で着任して、足下が固まっていないうちから新しい政策を打ち出すのは間違っています。大事なのは、やめること。『本当に市民の皆さんのためになるのか』と、徹底的に担当課と話し合いました」と東市長。対話やコミュニケーションを重視したのは「職員に自ら動いてほしい」と考えてのことです。「私が首長でいる間は働き方改革が最重要事項です。究極の成果は『このまちが好きだ』と言ってくれる方が一人でも増えること。四條畷市で暮らすとこんなにいい、と住民の皆さんが言ってくれている。それが私たちの働き方改革なんです。市民のために価値のない仕事はつくりません」(東市長)。

「四条畷市的働き方改革」を実現するために

①抜本的な人事改革

就任前に元職員や市役所関係者などから徹底的に庁内の情報を収集。就任後に職員とやり取りをして、トップダウンで内示を出した。新しく就任した人事課長は30代。熱い思いと馬力を買った人事異動だった。また、部長級の重要なポストにいる幹部も多く異動した。

②「そもそも」を考える

会議の時間や資料の枚数を減らすことは小手先の改善。ただの業務改善ではなく「働き方改革」のために、仕事上のタスクは「そもそも必要か」という視点で撤退も念頭に見直した。小さく始めるのではなく、入念に下準備をしたうえで大きく、矢継ぎ早に進めた。

③政策は目的を検証する

たとえば「○○キャンペーン」と銘打ってティッシュを何個配るのか、ではなく、キャンペーンの結果、どういう効果があったのかが重要。政策は目的・効果を検証し、しなくてもいいことをそぎ落とせば格段に効率がアップする。

④マインドセットが最重要

改革は「マインドセット→制度」の順番で。制度から先に変えると「なぜこれをしなくてはならないのか」「改革に時間がとられる」と批判的な意見が出てしまう。まずは自身の考え方をリセットすること。数値目標は決めず、あくまでゴールは「マインドセット」。

⑤研修を継続

リーダー研修を受けた職員から、働き方改革の普及担当職員を置いた。職員が今度は講師として周囲に伝えていく取り組みだ。庁内だけでなく、全国各地の自治体で講演する講師も現れた。子ども政策課はモデル課として、視察にきた自治体に説明をしている。

⑥対話

働き方改革を進めるうえで、大切にしたのはコミュニケーションだ。指示があって仕事をこなすスタイルが多いが、頭ごなしに言っても人は動かない。「なぜ必要なのか」「何がゴールなのか」腹落ちするまで話し、共有し、自らの意志で変わることを大切にした。

おわりに

有識者セミナーを受講した職員は、全国各地で「働き方改革」の研修講師を務めています。マインドセットにより、働き方改革を職員自らが進めることができるようになりました。

今、約20名の職員で「働き方改革プロジェクトチーム」を立ち上げ、庁内の制度を見直しています。また、研修で得た知識を横展開するための動きも始まりました。このチームには任期付職員も参加しているんです。組織には多様性が必要ですから。

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